運動は、直線と回転、またその組み合わせで成り立っており、これらの運動の正確さとスムーズさの追求が機械要素部品の進化の歴史である。回転運動は、100年以上前にベアリングが開発され、ボールを使用した「ころがり」化によって劇的な技術革新を遂げていた。一方直線運動は「ころがり」化が待望されていたにもかかわらず、技術的な難しさから実現せず、金属の平面部分をオイルですべらせる「すべり案内」が主流だった。機械には直線運動の方が多いにもかかわらず、機械づくりに携わっていたどの企業も解答を見出せず手をこまねいていた。そんな中「ベアリングはものづくりにパラダイムシフトをもたらしただけでなく、自動車開発の要となった。直線運動のころがり化は社会的使命だ」THK創業メンバーの熱き志が独創的な発想を生んだ。ブロック内部でボールが永久循環することで、機械の直線運動をころがり化するLMガイドという全く新しい製品が誕生したのだ。
「工作機械にはもともとベアリングが使われてきた。だからLMガイドは間違いなく大ヒットする」そう読んでいた。しかし、ボールアレルギーが大きな壁となって立ちはだかった。LMガイドが開発される以前の1960年代、ボールを使って直線運動をする部品が登場したが、性能が悪く剛性も弱かったため大失敗した。以来「ボールでころがるものはだめだ」という考えが日本の工作機械メーカーの常識となっていた。LMガイドは、レールにRの溝を加工し、ボールが転走面を「点」ではなく「面」で接触する構造としたことで、剛性を飛躍的に向上させ、この課題を十分にクリアしていた。しかし一度刻まれた先入観は容易には覆らなかった。昼夜を問わず説得に奔走したが、日本の工作機械業界には届かなかった。ボールアレルギーに加え、既存技術にプライドを持っている業界だけに、実績の乏しい新しい技術を敬遠したのである。「だめかも知れない」そう思いかけたとき、アメリカからビッグニュースが飛び込んできた。