事業部紹介

産業機器 お客様に信頼される製品とサービスの提供を 取締役専務執行役員 産業機器統括本部長 寺町 崇史

*役職は2023年発行当時

事業紹介

産業機器事業は高精度な位置決めを実現するLMガイドやボールねじ、ボールスプライン等の直動部品およびクロスローラーリング等の回転部品を主要製品とし、開発、製造、販売をしています。これらの製品は、半導体製造装置、工作機械、産業用ロボット、さらには3Dプリンタ、自動倉庫、手術支援ロボット、鉄道、航空機、太陽光発電装置、風力発電装置等、幅広い分野で用いられています。今後も、高精度化、高耐久化、省エネ化、自動化、省人化のニーズの拡大とともに、用途の広がりが見込まれています。また、アクチュエータやユニット製品等、機械要素部品を複合化したモジュール製品も手掛け、FA分野の設計製造で生産性や品質の向上に欠かせない製品となっています。最近ではインダストリー4.0を筆頭に産業分野でもAI・IoT等のデジタル化の波が押し寄せ、機械ユーザーを主な対象に製造業向けIoTサービス「 OMNI edge 」の提供を開始しました。さらに、人型ロボットや搬送ロボット等、サービス分野におけるお客様の労働力不足の解消を目指したロボットシステムの販売も始めています。

直動・回転要素部品関連事業
直動・回転要素部品関連事業
サービスロボット事業
サービスロボット事業
IoT事業
IoT事業

2022年度を振り返って

2026年を最終年度とする経営目標においては、半導体関連の需要の拡大、自動化・ロボット化の進展、EV等の環境関連の投資の拡大を背景に、創立以来培ってきた機械要素部品技術はもとより、AI・IoT、ロボット技術を駆使し、成長分野の下支えを担う役割をより一層固め、売上収益3,650億円、営業利益920億円の達成を目指しています。
初年度となる2022年度は、半導体・ロボットの需要増加や米国・中国の製造分野の拡大ならびに円安の影響により、売上収益2,821億円(前期比21.6%増)、営業利益511億円(前期比45.7%増)と売上収益は過去最高を更新しました。利益面では、原材料費、光熱費、輸送費、人件費等のコストアップがありましたが、販売価格への転嫁に努めつつ継続的な原価低減活動や生産量の拡大に伴い前期比で営業利益率も改善することができました。2023年度以降は設備投資需要の拡大と減少の波が短期的に繰り返され、経済のデカップリングや労働力不足等、経営環境の不透明さが増していくと想定しています。そこで、需要予測に基づきながら生産地域戦略の機動的な見直しとサプライチェーンの高度化を図るとともに生産工程の自動化、ロボット化、内製化を推し進め、着実な供給量の拡大とコスト競争力の強化を進めていきます。また、社内では研究開発に積極的な投資を行い、新製品の市場投入による付加価値の向上やお客様の生産性および満足度の向上を実現しつつ、社内定型業務の削減につながるデジタル化を推進し、一人当たりの生産性向上を図っていきます。さらに機械メーカーに機械要素部品を販売するビジネスのみならず、機械ユーザー向けの産業用IoTサービス事業やサービスロボット事業を積極的に推し進め、事業ポートフォリオの拡大と収益力の向上を図っていきます。

地球温暖化防止に向けて

近年、地球環境は温室効果ガスや石油由来の人工物等による影響を受け、社会的に問題の深刻さが増しています。当社が開発したLMガイドの“ころがり”化は従来の“すべり”運動に比べて摩擦抵抗を大幅に低減させる技術で、創立以来その技術を磨いてきました。今後もお客様が使用される機械設備の省エネ化につながる研究開発を推進し、製品の性能向上を図っていきます。
生産拠点では製造工程内のエネルギー消費量の削減はもとより、再生可能エネルギーの利活用によるCO2削減に努めます。2022年度は日本の山形工場、山口工場、中国の遼寧工場、常州工場に太陽光発電装置を導入(山形工場、遼寧工場の発電開始は2023年度から)しましたが、2023年度以降も他の生産拠点での新規設置を計画しています。

今後の事業展開

2020年に市場投入した製造業向けIoTサービス「 OMNI edge 」は機械にセンサの後付けが可能で、お客様の製造工程内のあらゆるロスを削減させ、設備総合効率(OEE*1)の最大化を目指しています。既に市場投入した部品予兆検知AIソリューション(直動部品、回転部品)と工具監視AIソリューションは従来定量化できていなかった機械装置の状態を可視化することで故障、刃具交換、不良、手直し等に伴う各種ロスの削減を実現させるとともに、製造工程内の消耗品やエネルギー消費量等の削減にもつながっています。今後も様々なソリューションを提供し、お客様のGX(グリーントランスフォーメーション*2)の一翼を担いたいと思います。
産業機器事業では社員一人ひとりが躍動しながら成長戦略である「グローバル展開」「新規分野への展開」「ビジネススタイルの変革」を深耕し、世界中の機械メーカーと機械ユーザー双方から信頼される製品とサービスの提供を持続的に行う体制を構築することで「ものづくりサービス業」への転換を図っていきます。そして、人と地球環境を大切にしながら、豊かな社会作りに貢献できるよう邁進していきます。

*1 OEE:Overall Equipment Effectivenessの頭文字を取ったもの。

*2 グリーントランスフォーメーション:地球温暖化や環境破壊、気候変動等を引き起こす温室効果ガスの排出を削減し、環境改善とともに経済社会システムの改革を行う対策。

輸送機器 社会ニーズに合致した新製品開発の強化 取締役専務執行役員 輸送機器統括本部長 槇 信之

事業紹介

輸送機器統括本部は、大きく分けて以下3つの事業を展開しています。

  • L&S(リンケージアンドサスペンション)部品の開発、製造、販売事業
    車の基本性能「走る、曲がる、止まる」を支える主要製品で、サスペンションリンク、ボールジョイント、タイロッドエンド、スタビリンクと呼ばれる部品の独自設計を行っています。グループ企業のTHKリズムとTRA(THK RHYTHM AUTOMOTIVE)が日本、北米、欧州、中国、その他アジアの自動車メーカーやトラックメーカー等の主要顧客や部品メーカー向けに提案・製造・販売を行っています。なお、サスペンションリンク、ボールジョイント、タイロッドエンドの3製品は、重要保安部品に分類されています。当該部品が使用されている機構は、下図を参照ください。
  • AMC(Automotive Mechanical Components)事業
    自動ブレーキ、電動パーキングブレーキ用ボールねじやアクティブサスペンション等の開発、製造、販売事業で、自動運転技術にはなくてはならない要素部品です。
  • 電動アクチュエータ開発事業
    自動運転の普及に対応し、乗り心地や安全性能向上を目指し、自動車に直接組み込まれるモジュールの開発を行っています。
    全ての事業に共通して、市場の要求に応えるため、製品のバリエーションを揃え技術をさらに磨き上げていく所存です。
主要製品ご案内
主要製品ご案内

2022年度を振り返って

2026年を最終年度とする経営目標の達成に向け既存製品の強化や次世代新製品の拡大等により自動車市場の成長率を上回る成長を成し遂げ、売上収益1,350億円、営業利益80億円の達成を目指しています。その初年度となる2022年度は円安の影響を受け売上収益は1,116億円(前期比29.3%増)と期初計画を上回ったものの、半導体等の部品不足に加え、中国の一部地域のロックダウンやウクライナ情勢に伴う部品調達難による自動車減産の影響等により、為替の影響を除いたベースでは計画を下回りました。さらに、自動車の減産や鋼材・エネルギー価格の上昇等の要因により136億円の減損損失を計上した結果、166億円の営業損失となりました。このように自動車業界を取り巻く環境が劇的に変化する中で、収益性改善に向けたさらに踏み込んだ対応が必要と考え、事業の再編を進めています。具体的には2020年度に掲げたリカバリープラン(生産・組織再編)の継続・強化、収益性の低い製品は売上の縮小もいとわない利益重視の運営、そして固定費を産業機器製品の生産に振り向ける等、収益性改善に向けた施策を強化した結果、2022年度10-12月期では減損を除いたベースで黒字転換を実現しました。2023年度は黒字化の定着を図るとともに、2024年度以降は次世代新製品の拡大をはじめとする取り組みにより利益成長を実現していきます。

今後の取り組み - 持続可能な社会の実現に向けて -

現在、自動車に要求されるのは「環境に優しい安全な乗り物」で、その実現に向けた製品の提案と安定供給が当社の役割です。まず環境面ですが、環境規制、燃費規制と並行して、CASE*1への移行が急務となっています。特に電動化の流れをくんだ車両による走行距離の向上の課題に対しては、当社製品の特長である軽量化を持って応えていきます。既に新工法によるアルミ製品の市場投入を開始し、北米では地場メーカーのみならず現地調達化ニーズのある日系メーカーのお客様にもご採用いただいています。次に安全面ですが、当社のコア技術を応用した電動アクチュエータ等、付加価値の高い製品を提供することで、より安全を確保できると考えています。新製品として開発、生産、販売を始めた自動車用ボールねじは、自動ブレーキ、複合ブレーキ用としてCASEの自動運転技術には欠かせない要素部品となり、現在では次世代サスペンション向けにも出荷を開始しました。さらに、真のマーケットインを目指して複合技術を取り入れた次世代新製品の開発を国内外の開発部門で推進するとともに、現在のお客様のニーズにお応えした製品ラインナップの拡充に努めています。
今後はお客様がまだ気づかれていない5年先、10年先のニーズを見据え、創造開発型企業として創立以来蓄積してきた知見や技術を生かし、将来の自動運転や高齢者による運転事故の減少といった社会ニーズに合致した新製品開発を行うことで、持続可能な社会づくりの実現を目指します。

輸送機器事業の再編の進捗
輸送機器事業の再編の進捗

*1 CASE:Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字を取ったもの。