TCFD

気候変動への対応:TCFD提言に沿った情報開示

 当社グループは、「気候変動」をマテリアリティ(重要課題)の一つとして掲げ、2023年2月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に対して賛同を表明しました。TCFD提言は、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つのテーマを中核的要素と位置付けています。当社は、TCFD提言に沿って、気候変動の影響について分析しました。

ガバナンス

 気候変動に関わるリスクや機会、対応策等を検討、審議する組織として、代表取締役社長を委員長とする取締役会の諮問機関である「サステナビリティ委員会」を設置しています。
 「サステナビリティ委員会」には、下部組織として、各業務部門の代表をメンバーとする「サステナビリティ推進部会」を設け、TCFD提言に沿って気候変動に関わるリスクと機会に関するシナリオ分析を実施しています。
 「サステナビリティ委員会」は「サステナビリティ推進部会」がまとめた分析結果について協議するとともに、気候変動に関わる対応策を決定し、進捗状況を管理しています。
 取締役会は、「サステナビリティ委員会」で協議、決議された事項について、適宜報告、提案を受け、議論するとともに、各業務部門における気候変動対応の取組み全般を監督しています。

戦略

 気候変動に関わるリスク及び機会を踏まえた戦略とそのレジリエンスについて検討するため、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な影響を踏まえ、当社の産業機器事業及び輸送機器事業(いずれも日本)を中心にシナリオ分析を実施しました。

  • ※1.5℃シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化等の対策が取られるシナリオ IEA-NZE、 IPCC-AR6(第6次評価報告書)-SSP1-1.9 等
  • ※4℃シナリオ:気温上昇の結果、異常気象等の物理的影響が生じるシナリオ IPCC-AR5(第5次評価報告書)-RCP 8.5 等
≪気候変動に関する主なリスク/機会と対策≫

シナリオ

要因

変化

リスク/機会

評価

当社への影響

当社の対策

1.5℃

炭素税の導入

調達コスト増加

リスク

炭素税導入により、原材料への価格転嫁が進み、調達コストが増加

  • 原材料投入量の削減
  • 炭素税の低い原材料への切替

操業コスト増加

リスク

炭素税導入により、国内のScope1・2の排出量に応じて炭素税の支払コストが増加

  • 省エネ生産技術の開発
  • 低炭素、非化石エネルギーへの転換

再エネへの切替

エネルギー調達コスト増加

リスク

再エネへの切替により、エネルギー調達コストが増加

  • 太陽光発電設備の設置による、再エネの内部調達

省エネニーズの高まり

環境対応技術ソリューションの需要増加

機会

エネルギー効率の向上を目的とした自動化及び効率化のための設備設計、製作、改造、製品需要が増加

  • 省エネ化に寄与する当社製品(LMガイド、電動アクチュエータ、ユニット品等)の供給強化

半導体ビジネス機会拡大

機会

省エネ化のコアとなるパワー半導体を中心に、半導体製造装置部品の製造をはじめとした、ビジネス機会が拡大

  • 柔軟かつ迅速に対応する開発、生産、営業の体制整備

故障診断・予兆検知サービスの需要増加

機会

生産性向上に貢献し、エネルギーロスの削減を実現する、IoT技術を駆使した故障診断・予兆検知サービスの需要が増加

  • 生産性向上に貢献するIoTサービスの拡充並びに営業及びソリューションの強化

EV化の進展

EV車関連部品の需要増加

機会

EV化に伴い新たな製品が求められるようになり、当社製品の需要が拡大

  • 柔軟かつ迅速に対応する開発、生産、営業の体制整備
  • 新規ビジネスの企画

環境貢献ビジネスの拡大

ESG投資増加

機会

環境に貢献するビジネスを拡大することで、投資家の関心、評価が高まり、ESG投資が増加

  • 柔軟かつ迅速に対応する開発、生産、営業の体制整備
  • 積極的な情報開示、ステークホルダーとのコミュニケーション強化

4℃

気象災害の激甚化

サプライチェーン寸断

リスク

原材料調達先の被災による、原材料供給の停止

  • 原材料調達先の分散化
  • 代替調達先の確保

気温上昇対応コスト増加

リスク

気温上昇による、工場、物流拠点、オフィス等の空調コスト増加

  • 建屋の断熱性能向上

リスク管理

 全社的なリスク管理については、取締役会の諮問機関である「リスク管理委員会」において包括的、網羅的に把握するとともにリスク管理規程に則りリスクアセスメントを実施し、重要性評価及び対策の優先度を決定しています。
 なかでも気候変動に関わるリスクについては、「サステナビリティ委員会」と下部組織である「サステナビリティ推進部会」において気候変動に特化したシナリオ分析を実施し、識別、評価のうえ対応策を決定しています。
 なお、取締役会は、「リスク管理委員会」並びに「サステナビリティ委員会」で識別されたリスク及び対応策を踏まえ、気候変動が経営に及ぼす影響について取りまとめています。

指標と目標

 当社グループは、2021年8月、地球温暖化の抑制に向けて、以下のとおり温室効果ガス排出量削減の「中期目標」及び「長期目標」を策定しました。

中期目標

2030年CO2排出量 基準年2018年 50%削減
対象範囲:国内THK、国内グループ会社
2018年実績値:106,514 t-CO2
2030年目標値:53,257 t-CO2

長期目標

2050年CO2排出量:実質ゼロ*にする
対象範囲:THKグループ全体

*実質ゼロ: CO2等の温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

 これらの目標を踏まえ、より一層省エネや省力化に貢献できる製品開発を進めるとともに、より環境に配慮した事業活動を継続し、豊かな社会づくり、持続可能な社会の実現に貢献していきます。