PROJECT
STORY

プロジェクトストーリー
ピッキングロボットハンドシステムの開発
THKの新たな挑戦が始まる。
ロボットハンドの事業化に向けて。

商品の保管や配送をする物流センターは、あらゆる業態に不可欠な施設だ。しかし、人手に頼る作業が多いことから日常的な人材不足に悩まされている。産業用ロボットに多く採用されているボールねじやクロスローラーリングなどの機械要素部品で着実にロボット分野の実績を重ねてきたTHKは、この問題にも正面から取り組み、ピッキングロボットハンドシステム(PRS)の第1弾を開発。今、事業化に向けた動きが本格的に進んでいる。

遠藤 嘉将
Yoshimasa Endo

産業機器統括本部
事業企画統括部
PRSカンパニー 開発課
2008年入社
理工学研究科
機械工学専攻修了

渡邉 聖也
Toshiya Watanabe

産業機器統括本部
事業企画統括部
PRSカンパニー 開発課
2011年入社
理工学研究科
機械システム工学専攻修了

石澤 諒
Ryo Ishizawa

産業機器統括本部
事業企画統括部
PRSカンパニー 営業課
2013年入社
経済学部
商学科卒業

Phase 01

●宇宙から始まったロボットハンドの物語

 宇宙開発において重要な課題のひとつが、船外活動のロボット化だ。宇宙空間で電動ドライバーやテザーフックなどを操ることができるロボットハンドがあれば、クルーの手間やリスクを大幅に軽減できる。
「JAXAの主催する宇宙オープンラボ制度にTHKが応募したことで共同研究が始まり、完成したロボットハンドは2012年に国際宇宙ステーションでの実証実験に適用され、予定していた実験をすべて成功させました」
 こう語るのは現在、PRS開発のリーダーを務める遠藤だ。
「JAXAとの共同研究ではまず、製品化や量産化は考えず、宇宙環境でもきちんと作業ができるロボットハンドを製作することに注力しました。宇宙という極限環境下で大きなトラブルもなく動作できる高度なノウハウを得ることができれば、地上での産業用途から生活シーンまで、あらゆる場面で活躍できる可能性が高まります。ここから、実証実験での経験を活かして豊かな社会づくりに貢献しようという、THKの新たな挑戦が始まりました」

Phase 02

●4本指のロボットハンド

「日常で人が手で掴む物の形状を考え、箱状、円柱状、袋状のアイテムに対応できるロボットハンドにすることにしました。その結果、指の数は4本になったのです」と語るのはシステム担当の渡邉だ。
 なぜ4本なのか?
「指の数が増えればその分、制御システムは複雑になるので最少に抑える必要があります。人間の手を模倣するだけなら5本となりますが、検討の結果、箱状、円柱状、袋状のアイテムを掴む場合、薬指と小指はほぼ同じ動きをしていて別々にする必要がないことが分かったので、4本がベストだと考えたのです」
 この発見はロボットハンドを開発していくうえで重要な指針となった。
「指が4本あれば、『並んだ箱のひとつを傾けて隙間をつくり、掴んで持ち上げる』といった高度なピッキングも行うことができます。従来のピッキングで広く用いられている吸着機や電動グリッパーでは把持できないような商品を把持できるようになります」

Phase 03

●物流センターに目をつけろ!

 THKが目をつけたのが物流業界であった。
 物流業界の重要課題、それは人手不足である。物流の現場では人手に頼る作業が多いが、人が足りないのである。なかでも倉庫から目的の商品をピックアップするピッキング作業は最大のボトルネックだ。
「ロボットハンドのコア技術を活かして物流業界のニーズに応えようというプロジェクトが本格的にスタートしました」こう語るのは遠藤だ。
 ここからピッキングロボットハンドシステム(PRS)の開発が始まった。

 PRSの開発が進むなか、営業体制の構築も検討され、社内公募が行われた。
 早速、応募したのは石澤だ。
「LMガイドやボールねじといった高い技術力を誇る製品に魅力を感じ、THKに入社しました。入社後は豊田支店・金沢支店で営業として働いていましたが、新しい製品を新しいお客様に使ってもらえるよう提案する。そんな営業に醍醐味を感じていました」
 そんなことを考えながら仕事をしていたある日、PRSの営業部門の募集があったのだ。
 石澤は興奮気味に語る。
「自分を活かすことができる!そう思い、すぐに応募しました。面談では、『THKのことを全くご存じのない業界のお客様への営業活動になるため、君の提案力を試されるが、大丈夫か?』と念押しされましたが、今までの経験を活かして新規開拓を行っていきたいことを強く訴えました」
 そんな熱意が伝わり、石澤はPRSの営業部門の一員に選ばれる。

 物流業界といっても非常に範囲は広い。個客候補へ訪問し、数多くの会議を重ねるなか、ターゲットとして絞られてきたのがピースピッキングの現場だった。
「お客様の現場環境やそこで掴むアイテムは、お客様ごとに多種多様です。そのような状況を聞き出すのはもちろんですが、現場に合わせたシステム全体の提案や生産性の検討をしたり、開発中のPRSに足りていない機能をヒアリングしたりしました」
 そして営業部門が集めてきたニーズを聞き、製品の仕様に落とし込んでいくのは開発部門の役目だ。遠藤の課題は尽きなかった。
「ピースピッキングの現場の作業者は、1日に何千回もアイテムを掴んでいました。PRSで同じことを実現するためには、想像以上に高いレベルの耐久性を求められることが分かりました。試作機1号機の耐久試験では、ギアもセンサもすべてダメになってしまいました」
 試作とテストの繰り返しが続き、スケジュールどおりには進まなかった。
「実機のテストばかりでは時間がかかりすぎるため、できるだけシステム上でチェックできるように工夫し、なんとか完成まで漕ぎつけました。いろいろな意味で初めての経験ばかりでしたが、最終的にはかなり満足できる製品になったと思っています」と渡邉は当時を振り返る。

Phase 04

●ロボット展を皮切りにスタートダッシュ

 2019年12月、PRSの第1弾は国際ロボット展でお披露目を行った。
「事前にほとんど情報を公開していなかったので初めて目にする人ばかりだったはずですが、多様な形状のアイテムを器用に掴んで運ぶロボットハンドの精密な動きに釘付けになり、THKのブースの前にはたちまち人だかりができました。こんなことは初めてです」と誇らしげに石澤は語る。
 遠藤も当時の思いを語った。
「決められた場所の決められたアイテムだけを掴めるロボットハンドはこれまでもありましたが、THKのPRSはさまざまな状況に対応できる新しい製品なので、ピッキング作業の省人化を考えている方々にとっては魅力的に映ったはずです。ロボット展における反響は、事業化への大きな自信につながりました」
 渡邉の感慨もひとしおだった。
「最大の特長は、三次元カメラで状況を判断し、掴み方を工夫することによって、ひとつのロボットハンドで多種の商品をピッキングできる点です。このため、デモを見た人たちは『自社の仕分けラインに導入できるかもしれない』とイメージできたはず。画像情報の処理はTHKではあまり前例のない挑戦だっただけに、形にできたのは技術者にとって最高の喜びです」
 2020年、事業化プロジェクトはますます勢いづき、石澤たち営業チームは全国の顧客を次々と訪問し、具体的な商談をまとめようとしている。一方で遠藤や渡邉たち開発チームは、現製品の改良に加えて次世代製品の開発にも熱心に取り組んでいる最中だ。遠藤は言う。
「これが完璧なロボットハンドだとは全く思っていません。お客様からのフィードバックをもらいながら、進化していくための新たなスタートラインだと思っています。次は人間の能力をしのぎ、人間にはできない動きができる、全く違う形状のロボットになるかもしれませんよ」

PRIVATE

遠藤 嘉将のPRIVATE
フットサルで気分転換

入社してしばらくは仕事一筋だったが、仲間に誘われてフットサルを楽しんでいる。社内チームと外部チームで定期的に練習試合をし、そこから得られる人脈や発見も財産。「試合中に超高速で繰り広げられるダイナミクスは、ロボットにはまだまだ実現できないなと感心するばかりです」

渡邉 聖也のPRIVATE
THKのファッションリーダーでありたい

一番の趣味は服を買うこと。個性的なデザインにこだわっており、行きつけのショップに行くと、「渡邉さんが好きそうなものを取っておきました」と言われるほど。

石澤 諒のPRIVATE
自ら操舵する船で釣りに行きたい!

釣り好きが興じて小型船舶免許(2級)を取得。これからは釣船に頼ることなく、レンタルしたボートで自分だけのスポットを巡ることができる。他にも学生時代やっていたラグビーの試合を見に行ったり、冬はスノボと、充実した休日を過ごしている。