2025年07月09日
製品
医療機器に求められる仕様と最適な課題解決方法とは
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私たちの命を守る医療現場。命にかかわるからこそ、医療機器や医療装置には高い安全性や精度が求められます。医療現場は様々な問題点と課題を抱えながらも、人々が安心して暮らしていけるように日々進歩しています。そんな医療現場を支えるために、数多くのTHK製品が医療機器や医療装置に使用されていることをご存じでしょうか。今回は、THKがどのような製品で医療業界に貢献しているのかご紹介します。
Case1.アーム式レントゲン装置
レントゲン撮影はX線を利用して透過量の差を濃淡で表すことで、体内の状態を画像として確認することができます。通常の据え置きのレントゲン撮影は、患者さんやX線を照射する機器を上下左右方向に可動させながら撮影を行います。そのため、レントゲン装置は可動域を考慮して配置する必要があり、省スペース化が求められる医療現場では広いスペースが必要という課題があります。また、撮影箇所によっては患者さんと機械の両方が可動しなければ補うことができず、患者さんが辛い体勢で撮影を行わなければならない場合もあります。
その課題を解決するのがアーム式レントゲン装置です。アルファベットのCの形をしたアームを有しており、X線を照射する機器が360°回転することで患者さんを様々な角度から無駄なく撮影することが可能です。省スペース化を実現しながら患者さんの負担を減らし、透過漏れを防ぐことができますが、高精度な円弧運動が可能な優れた案内機構が必要です。

高精度な円弧運動を実現するRガイド「HCR形」
そこでTHKの独自機構であるHCR形 LMガイドの出番です。HCR形は、4条列の転動面をブロック内のボールが無限循環する構造で、精密研削加工された円弧形状のレール上でブロックが高精度な円弧運動を可能にします。HCR形は工作機械業界だけでなく、様々な業界でも高い実績を誇る4方向等荷重形LMガイドHSR形を基本構造として開発された製品です。
高い安全性と信頼性が求められる医療現場において、これまでの直線ガイドでは対応できなかった医療機器にHCR形が導入され、様々な医療機器の機能の幅を広げるお手伝いをしています。

Case2. 手術支援ロボット
内視鏡下外科手術は、体に小さな穴をあけて内視鏡を挿入することで、開腹せずにモニターを用いて体内の様子を確認しながら行う手術です。通常の開腹手術の場合、切開する範囲が広いことから患者さんへの負担が大きくなります。そのため、術後の痛みや回復・社会復帰までに時間を要することが課題となっています。
その課題に対して手術支援ロボットが活躍しています。手術支援ロボットは医師が遠隔で操作し、人間の手首よりも広い可動域を持つロボットが精密な動きで手術を行います。医師の操作を精密に実現するためには、手振れを軽減する目的として手先はコンパクトで軽量、高剛性、高精度な案内機構が必要となります。

軽量でコンパクト!ミニチュアLMガイドシリーズ
手術支援ロボットのコンパクト化には、ミニチュアLMガイドが最適です。ミニチュアLMガイドを採用いただくことでアーム部分の小型化・軽量化を実現します。また、高剛性で高精度なLMガイドの特長によって、操作性の向上や医師の手振れ防止効果も高まり、手術支援ロボットの信頼性向上にも貢献しています。
THKのミニチュアLMガイドは、SRS形、RSX形、RSR形、AHR形と様々なラインナップを取り揃えており、最小サイズはRSR形のLMレール幅が2mmです。コンパクトながらも各方向の荷重を受けることができ、LMレールの断面高さは低く抑えられているため、省スペース部への取付けが可能です。ミニチュアLMガイドは防錆性能に優れているステンレス鋼を採用しており、様々な環境でご使用いただくことができます。さらに、ボールリテーナ入りの製品であれば、ボール同士の相互摩擦がなく、グリースの保持力も向上するため、長寿命・長期メンテナンスフリー(潤滑における長期メンテナンスフリー)を実現し、装置の静音化にも貢献します。

Case3. MRI装置 (磁気共鳴画像診断装置)
MRI検査は、X線を使用せずに磁石と電磁波を使って体内の状態を断面図として描写することができます。しかしながら、MRI検査装置は常に強力な磁場が発生するため、磁力を帯びている部品は検査の精度に影響を与えます。鉄製品を非常に強い力で吸い寄せるため危険性があり、設計時の課題の一つとなっていました。そのため、磁場に影響を与えない非磁性の製品が求められています。

強磁場環境に対応!低透磁率LMガイド「HSR-M3形」
そのような強磁場環境でも長期間にわたり高精度で安定した直線運動を実現する案内機構として、低透磁率LMガイドHSR-M3形をご提案します。この製品は構成部品に低透磁率材料を使用しており、比透磁率1.02を達成しているため強磁場環境下でも製品性能を発揮します。また、HSR-M3形は、一般的に低透磁率材料として知られているSUS316と比較しても、高い硬度を確保していることから大きな荷重を受けることができます。

あらゆる環境に対応!特殊合金「THK-NM1」
HSR-M3形よりも更に磁性が低く、より高硬度である特殊合金「THK-NM1」もご用意しています。60HRC前後の硬度を有し、軸受に最適な硬度である58~64HRCの範囲内であるため、転がり案内においても大きな荷重を受けることができます。特殊合金「THK-NM1」はLMガイド、ボールねじ、ボールスプライン、クロスローラーリングなど、様々な製品に採用することが可能です。通常仕様では対応できない特殊環境下でお困りごとがありましたら、ご提案させていただきます。
特殊合金「THK-NM1」は高機能非磁性・超高耐食性という特長があります。その「極めて高水準の非磁性」により、先端科学分野における電荷粒子を扱う機器や強磁場を発生させる機器、腐食性の高い薬剤を使用する機器など、従来製品では十分な対応ができなかった特殊環境下でご使用いただけます。

医療業界に貢献するTHK
医療現場を支える様々な医療機器や医療装置と、それらの仕様に最適なTHK製品をご紹介しました。医療現場とは一見遠い存在に思える精密機械部品メーカーであるTHKですが、これからも医療現場が抱える様々な課題解決に貢献できるよう、製品開発に取り組んでまいります。医療機器や医療装置に関してお困りごとがありましたら、お気軽にTHKへお問い合わせください。
また、本記事でご紹介した一部製品を、2025年7月9日(水)~11日(金)に開催される機械要素技術展 [東京]に展示します。(展示会の詳細はこちら)ぜひ実際にご覧いただければ幸いです。
RガイドHCR形に関する詳細はこちら(THKサイト)ボールリテーナ入りLMガイド ミニチュア SRS形に関する詳細はこちら(THKサイト)
低透磁率LMガイド HSR-M3形に関する詳細はこちら(THKサイト)
特殊合金THK-NM1に関する詳細はこちら(ニュースリリース)