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入院患者に寄り添い看護師の業務負担を軽減する!自律型荷物搬送ロボットの取り組み【前編】

入院患者に寄り添った取り組みを行う病院

近年の高齢化の進行により、医療や介護を必要とする人が増加する一方で、医療現場では医師や看護師をはじめとする医療従事者の確保が難しくなっています。「医師の働き方改革」などの推進により、医療従事者が安心して働き続けられる環境づくりが進められる中、限られた勤務時間内に対応すべき業務量が増加し、現場の負担が大きくなるケースもあります。このような背景から、患者に十分な支援を安定して提供できる体制を構築する手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が必要になってきています。
そこで今回は、THK製品を活用した、医療現場における患者の荷物運搬を自動化する技術の構築・導入の取り組みを取材しました。前編として、プロジェクト発足の経緯と導入にあたってのポイントをご紹介します。

女子医大病院での自動化に向けた取り組みの経緯

本プロジェクトは、東京女子医科大学病院(以下、女子医大病院)の講師であり機械工学、デジタル手術支援が専門の研究者である吉光喜太郎氏が主導しました。吉光氏はTHKのリサーチセンター RT研究部 技術顧問を兼務しており、ロボット仕様の策定や病院内での実証試験に向けた調整を担うとともに、同社と病院関係者をつなぐ橋渡し役としてプロジェクトを推進しました。

THKと東京女子医大のロゴ

女子医大病院においても、DXの推進が必要な状況は例外ではありません。吉光氏は、最新のロボット技術を運用することで、患者支援のためのさまざまな場面へと展開できるのではないかと考えました。
吉光氏はまず、2024年の9月から10月の1カ月間にわたり、受付開始時間前の朝7時から女子医大病院の総合外来センターのエントランスに立ち、来院者の調査を実施しました。その結果、車いすに乗った患者や杖を使用している患者が多数おり、多くの患者が移動に苦慮していることがわかりました。こうした患者が広い院内を移動しながら入院手続きを進め、荷物を持って病室へ向かうことは、体調の優れない本人はもちろん、付き添う家族にとっても決して小さな負担ではありません。この調査から、患者の移動支援が重要事項であると結論づけ、この荷物運搬作業を支援するロボットの活用に着目しました。将来的な目標を総合外来センターの入院受付から病室までの全行程の荷物運搬の自動化として、まずは病院と病棟をつなぐ150mの長い渡り廊下での搬送から着手しました。

東京女子医大と病棟をつなぐ長い渡り廊下
外から見た病院と病棟をつなぐ150mの長い渡り廊下

医療現場でロボットを導入する際の5つのポイント

吉光氏は、世川修臨床教授(医療安全・危機管理部部長、小児外科診療部長)や、患者支援の実務に携わっている藤咲珠代看護師長(医療対話推進室)、田中和美看護師長(受診相談)、本間亜希子看護師長(外来看護)らと議論しながら、自動化システム導入への取り組みを進めました。

THK社員と患者支援の実務に携わっている東京女子医大のスタッフ
左からTHK髙田氏、THK荒田氏、田中氏、世川氏、藤咲氏、THK中野氏

世川氏はロボット導入に関して、次の5つのポイントがあると言います。
1つ目は患者と家族のニーズです。患者と家族が医療従事者と協働で医療の質と安全を向上させる「患者・家族参加型医療」の観点から、健康体ではない患者とそれを支える家族の助けとなるような形で、ロボットが働くということが求められています。患者と家族の意見を取り入れつつロボットの活用シーンを拡大し、ゆくゆくは荷物の運搬だけでなく、防犯のための見守りという活用なども考えられます。
2つ目は医療従事者のニーズです。昨今の医師の働き方改革によりほかの医療スタッフの負担が増加しているという観点から、医療従事者の業務の一部をロボットに担わせるというものです。
3つ目は患者と家族の安全性です。今回ロボットを導入する渡り廊下は、多くの患者やその家族が行き交う場所です。そのため、周囲の人とロボットとの接触を防ぎ、安全に運用できることが最も重要です。
4つ目はロボット自体の信頼性です。病院の資産となる高価なロボットが倒れたり、壊れたりすることがないように運用し、長期にわたって患者支援に貢献することで病院全体からの信頼を構築する必要があります。
5つ目は、職員の安全性と業務の円滑性です。渡り廊下は、体調が急変した患者をストレッチャーに載せて胸骨圧迫などの処置を行いながら搬送することがあります。このような危急の際に、医療従事者がロボットに配慮して避けて通るというわけにはいかず、ロボット側が回避する必要があります。また、薬を配るための大きなカートは前が見えない状態で押されているため、職員はロボットに気づかない可能性があります。そのため、ロボット側で安全のための回避動作を行わなければなりません。
また、この自動化のプロジェクトに関わっておらず、ロボットが動いていることを知らない職員も多いため、そうした職員の安全性と業務の円滑性を確保する必要があります。

藤咲氏、田中氏、本間氏は、「患者さんとご家族の安全性確保の点から専用カートの角を取り、ぶつかることのないよう移動の速度を調整するように依頼しました。また、通常のカートでは荷台が高い位置にあり、荷物を高く持ち上げて載せなくてはなりません。そこで、力の弱い方でも簡単に荷物を載せられるよう、荷台を低い位置にするように依頼しました。」と語ります。
「具合が悪い患者さんが荷物を持って長い距離を歩くのは大変で、看護師も手の空いている隙を見て支援をしていますが、移動の支援をロボットが担ってくれたら、医療従事者としても非常に助かります。また、女子医大病院は広々として良い一方で、患者さんや高齢者の方がどこへ行けばよいか分からなくなることも多いため、将来的には院内の案内もロボットが担ってくれるとなお良いですね。」と言います。

THKの自律型荷物搬送ロボット
自律型荷物搬送ロボット
女子医大病院の入院患者の荷物を載せるカート
入院患者の荷物を載せるカート

期待を背負う荷物搬送ロボットの実現に向けて

今回は医療現場の自動化支援について、プロジェクト発足の経緯と導入時のポイントをご紹介しました。取材を通して、実現に向けてさまざまな議論を重ねることで、安全性を確保し、現場の課題に寄り添った開発が重要だと明らかになりました。また、荷物搬送ロボットの支援に対する医療従事者の期待の高さを実感しました。
後編では、これらの課題や要望を踏まえて開発されたTHKのロボットが、実際の病院でテスト走行する様子と、今後の展望についてご紹介します。

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