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LMガイド「サーキュラーアーク溝」と「DF構造」の特長~機械の滑らかな動きを支える構造とは~

LMガイド

工作機械や半導体製造装置、産業用ロボットなど、高い精度と信頼性が求められる産業機械の内部では、直線運動を正確かつ滑らかに実現するための重要な部品が使われています。それがLMガイド(リニアモーションガイド)です。LMガイドは、「まっすぐ・滑らか・正確」に動かすための直線運動案内部品であり、装置の性能や寿命に大きな影響を与えます。

THKは直線運動部の転がり化を実現し、LMガイドを世界で初めて製品化しました。当社では、さまざまな特長を持つLMガイドをラインナップしていますが、多くの主力モデルにおいて、サーキュラーアーク溝とDF構造の組み合わせが採用されています。今回は、LMガイドにおける溝形状と溝の接触構造の考え方に焦点を当て、この組み合わせが装置設計にもたらすメリットを基礎から分かりやすく解説します。

LMガイドの転動溝とは~溝形状が性能に与える影響~

LMガイドの転動溝

LMガイドは、可動部である「LMブロック」とその動きを支える「LMレール」、「ボール」の大きく三つの要素から構成されています。このボールが転がるところが転動溝です。転動溝の形状は、LMガイドの運動性能や寿命を左右する重要な設計要素となります。

LMガイド構成図
LMガイドの構成

「2点接触」か「4点接触」か~溝形状による特性の違い~

LMガイドのLMブロックとLMレールの間には多数のボールが組み込まれており、これらのボールが転動溝とどのように接触するかによって特性が大きく変わります。

一般的に、LMガイドの溝形状には次の2種類があります。

サーキュラーアーク溝
サーキュラーアーク溝は、単一の円弧形状を基本とした溝形状で、ボールと転動溝が2点で接触する構造です。

ゴシックアーチ溝
ゴシックアーチ溝は、2つの円弧を組み合わせた形状で、ボールと転動溝が4点で接触する構造です。

サーキュラーアーク溝に接触するボールの断面模式図
サーキュラーアーク溝2点接触構造
ゴシックアーチ溝に接触するボールの断面模式図
ゴシックアーチ溝4点接触構造

サーキュラーアーク溝とゴシックアーチ溝の使い分け

LMガイドが上下・左右方向の荷重を受けるためには、全部で8個の接触点が必要とされており、以下の構成が一般的に採用されています。
サーキュラーアーク溝(2点接触):転動溝を4列配置
ゴシックアーチ溝(4点接触):転動溝を2列配置

サーキュラーアーク溝の模式図で、ボールが外向きに配置
4列サーキュラーアーク溝2点接触構造
ゴシックアーチ溝の模式図で、ボールが内向きに配置
2列ゴシックアーチ溝4点接触構造

限られた断面寸法の中で荷重を負荷する能力を確保する必要がある場合には、ミニチュアLMガイドなどでゴシックアーチ溝が採用されるケースが多くあります。

転動溝の形状が意味するもの

差動すべりの発生メカニズム

LMガイドでは、ボールがどのように回転しながら移動するかが運動性能に大きく影響します。ボールは回転しながら転がりますが、その表面速度は位置によって異なります。これは、回転軸芯からの距離が場所ごとに異なるためです。回転軸芯から離れると移動距離(円周長さ)が長くなるため速度は速くなり、回転軸芯に近づくと移動距離が短くなるため速度は遅くなります。
ボールはある特定の速度で動作するため、接触幅をもった接触構造ではボールの動きに無理が生じ、一部ですべりが発生します。これは紙コップを横にして転がすと、底側と飲み口側で円周が異なるため、まっすぐ転がすにはすべりで調整する必要があるのと同じ現象です。

紙コップの飲み口の円周と底の円周大きさが異なる様子
紙コップを転がすとどうなる?

ゴシックアーチ溝のように4点で接触する構造では、組付け誤差やミスアライメントが発生した場合にこの影響が顕著になり、ボールはすべての接触点で同時に理想的な動きを保つことができません。その結果、接触点で転がりではなくすべりが生じます。この現象を差動すべりと呼びます。

サーキュラーアーク溝の接触状態を示す断面模式図
サーキュラーアーク溝の接触状態
ゴシックアーチ溝の接触状態を示す断面模式図
ゴシックアーチ溝の接触状態
サーキュラーアーク溝の差動すべり量が小さい様子
サーキュラーアーク溝の差動すべり量
ゴシックアーチ溝の差動すべり量が大きい様子
ゴシックアーチ溝の差動すべり量

差動すべりが大きくなると、摩擦の増加による発熱、摩耗の進行を招き、結果として運動性能の低下や寿命への影響につながります。

一方、サーキュラーアーク溝を用いた2点接触構造では円周長さの差が生じにくくなるため、ボールがより自然な転がり状態を取ることができます。その結果、差動すべりが抑えられ、LMガイドに求められる以下の重要な特性を実現することができます。

  • 滑らかな動き
  • 発熱の抑制
  • 摩耗の低減

DF構造の自動調整能力~取り付け誤差を吸収する2点接触~

どれほど高精度なLMガイドであっても、実際の装置では取り付け時にわずかな誤差や傾きが生じることがあります。そこで重要となるのが、DF構造(正面組合せ)です。DF構造とは、4列に配置されたボール列のうち向かい合う2列ずつを1組としたときに、各組の荷重の作用線が内側で交差する配置を指します。

アンギュラ玉軸受の正面組合せ断面模式図
正面組合せアンギュラ玉軸受(DF形)
LMガイド DF形4列アンギュラコンタクト接触の断面模式図
DF形4列アンギュラコンタクト接触
取付面誤差に影響されにくい内部構造
LMガイド HSR形の取付誤差によって生じるテーブルの傾きと、ボールの変位量・作用点距離を示した模式図
LMガイドHSR形(サーキュラーアーク溝)
作用点距離lが小さいため大きな許容傾き角がとれる(高い自動調整能力)

一方、DB構造(背面組合わせ)では、向かい合うボール列の荷重の作用線が外側で交差する配置となります。

アンギュラ玉軸受の背面組合せ断面模式図
背面組合せアンギュラ玉軸受(DB形)
DB構造での取付誤差によって生じるテーブルの傾きと、ボールの変位量・作用点距離を示した模式図
作用点距離lが大きいため許容傾き角は小さい

サーキュラーアーク溝と組み合わされるDF構造の最大の特長は、自動調整能力(取付誤差を内部で吸収する性質)にあります。LMレール取付面に多少の誤差や傾き*があっても、ブロック内部のボール配置によりそのずれを吸収しやすく、内部荷重が発生しにくくなります。その結果、転がり抵抗の増加が抑えられ、安定した動作を維持しやすくなり、寿命低下を防ぐ効果が期待できます。

*実際のご使用の際には、カタログ記載の取付面の誤差参考値をご確認ください。

サーキュラーアーク溝とDF構造の組み合わせ

サーキュラーアーク溝とDF構造の組み合わせは、

  • 滑らかな運動性能
  • 長寿命
  • 取り付け誤差吸収

といった装置設計において重要な要素を実現させています。

溝形状の理解を深めて、最適なLMガイドの選定を

今回はLMガイドのサーキュラーアーク溝の特長について解説しましたが、用途や設計条件によっては、コンパクト性を重視してゴシックアーチ溝のミニチュアLMガイドが採用されることも多く、それぞれの用途で実績があります。
一見すると小さな「溝形状」の違いですが、その設計思想が装置性能に大きな影響を与えています。特長を正しく理解することで、用途に適したLMガイドの選定につながります。

THK公式YouTubeチャンネル「THK ものづくりサロン」では、LMガイドのサーキュラーアーク溝をはじめとするさまざまな特長を動画で分かりやすく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

また、LMガイドの選定やご検討にあたりお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

直動案内ヒストリー THKものづくりサロン(YouTube)
LMガイド(THKサイト)

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