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工作機械の多軸化・複合化を支える回転軸受

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工作機械イメージ


工作機械は工業製品の製造に欠かせない存在となっています。そして産業の進化と技術の向上と共に、工作機械も高機能化が図られています。今回の記事では、「工作機械の多軸化・複合化を支える回転軸受」というテーマでお送りします。

工作機械の動向について

工作機械の分野は、近年、多軸化・複合化が進んでいます。当初は直線3軸(X軸/Y軸/Z軸)のみでしたが、ワークの旋回軸と傾斜軸の2軸を加えた5軸加工機、さらには旋削機能を付加した複合加工機が市場に投入され、複数種の工作機械で行われていたプロセスが一台のマシニングセンタに集約されています。

工作機械の中に組付けられているクロスローラーリングイメージ
工作機械の中に組付けられているクロスローラーリング


多軸化・複合化には加工精度や生産性の向上、工場の省スペース化、更には管理コストや人件費の削減にも貢献します。


回転要素部品に求められる性能

マシニングセンタの回転要素部品に要求される性能は剛性と精度が最も重要であり、ワークの加工精度に直接影響を与えます。つまり5軸マシニングセンタのように多軸化された工作機械は回転軸数が増え、回転要素部品の変位や誤差も積算されるので、各回転要素部品の剛性と精度が加工精度に与える影響は更に大きくなります。そのため各回転要素部品には高い剛性と精度が要求されています。加えて旋削機能が付加されたマシニングセンタはワークを搭載した状態で旋回軸を高速回転させるため、旋回軸の回転要素部品は上述に加えて高速性に優れていることが要求されます。本記事では、進化する工作機械の要求に適したTHKクロスローラーリングと複列アンギュラリングである、複列アンギュラローラーリング「RW形」・高速複列アンギュラリング「BWH形」について紹介します。


クロスローラーリングの構造と特長

クロスローラーリングはローラーを転動体に採用しているため剛性が高く、名前の通りローラーを直交配列させた45度の接触構造を持つ回転軸受です。そのため1枚の回転軸受でラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメントの全方向の荷重を負荷できます。またローラー間にはローラーの相互摩擦を防ぐため、スペーサリテーナを配置しています。モーメントを負荷できる回転軸受はアンギュラ玉軸受や円錐ころ軸受などもありますが、これらでモーメントを負荷するためには2枚組み合わせる必要があり、厚さ寸法が大きくなるデメリットがあります。クロスローラーリングはボールを転動体に採用している他の軸受に比べて剛性が高く、1枚の回転軸受で全方向の荷重を負荷できるため、コンパクト性に優れているといった特長があります。これらの特長は、ロボットの旋回軸、関節軸、マシニングセンタの旋回軸・傾斜軸などの回転軸受に適しており、長きに渡り多く採用されています。

クロスローラーリングのイメージ
クロスローラーリング



高剛性・高精度化に貢献 複列アンギュラローラーリング「RW形」の構造と特長

前述の通り、各回転要素部品には高い剛性と精度が要求されていることから、クロスローラーリングと同等のコンパクト性を有し、更に剛性と精度が高い回転軸受の、複列アンギュラローラーリング「RW形」を開発しました。

クロスローラーリングと複列アンギュラローラーリングのイメージ
クロスローラーリングと複列アンギュラローラーリング


複列アンギュラローラーリング「RW形」は、クロスローラーリングでは単列だった転動溝を複列化しており、DB構造を採用しています。また小径ローラーを採用することでローラー数が増え、軌道面とローラー間に発生する接触面積が増加されています。そのため作用荷重に対する軌道面とローラー間の面圧が下がり、変位量が低減されます。更に軌道輪は内輪もしくは外輪のどちらかが軸方向に分割されていたクロスローラーリングに対して、内・外輪共に一体構造を採用しています。この一体構造により剛性が向上し、高負荷荷重下においても変位量の低減につながります。以上の構造により、複列アンギュラローラーリング「RW形」は同寸法のクロスローラーリングと比較し2倍以上の剛性を実現しています。

複列アンギュラローラーリングとクロスローラーリングの剛性比較イメージ
複列アンギュラローラーリングとクロスローラーリングの剛性比較


複列アンギュラローラーリング「RW形」はクロスローラーリングの回転精度に加え、“よろめき精度”を規格化しています。この“よろめき精度”は旋回軸上のワーク加工位置や測定位置を想定した、実際のワーク位置付近での振れ精度のことです。

“よろめき精度”の測定方法イメージ
“よろめき精度”の測定方法


振れ精度の測定位置(A)はローラーのピッチ円径(B)と同等の高さとしています。つまり回転軸受の内輪がコマの歳差運動のように斜めに傾きながら回転した場合、回転軸受の高さ位置に対して低い位置での影響は小さいですが、高い位置では拡大され大きな誤差になります。複列アンギュラローラーリング「RW形」はローラー数を増やしたことで、ローラー相互差の影響が緩和されています。そのため回転精度が向上し、“よろめき精度”2μm以下を実現しました。ワーク加工位置を想定した“よろめき精度”の保証は、高精度な回転軸受の証と言えます。5軸マシニングセンタでは旋回軸の回転精度が機械の精度を決めると言われており、旋回軸に使用される回転軸受は加工点での回転精度が重要となります。“よろめき精度”は高精度が謳われているマシニングセンタに最適な規格です。

高速化に貢献

前述の通り工作機械の分野では旋削機能を付加した複合加工機が市場に投入され、需要の高まりを見せています。いくつかのメーカーから、旋削機能を付加した複合加工機や旋削機能付きのNC円テーブルが出展されています。そうした工作機械の高速化の需要が高まる背景から、弊社では高速複列アンギュラリング「BWH形」を開発しました。


高速複列アンギュラリング「BWH形」(ボールタイプ)の構造と特長

高速性

高速複列アンギュラリング「BWH形」は転動体にボールを採用しているので、円筒ローラーを採用しているクロスローラーリングに対して、軌道面とボール間に発生する接触面が大幅に小さくなり、軌道面とボール間で相対的に生じる周長差が小さくなります。この周長差が小さくなることで、スピン滑りが減少し低摩擦となり、高速回転時の温度上昇を抑えることが可能となります。更に一体型保持器の採用により、ボール同士の相互摩擦による発熱も抑制しています。また攪拌抵抗の小さい高速性に優れたグリースを採用することで、グリースの攪拌抵抗による発熱も抑制しています。以上の低摩擦に特化した構造、及び一体型保持器、高速性に優れたグリースの採用により、グリース潤滑でDpw・N値300,000の高速回転で回転軸受の温度上昇15℃以下を実現します。また高速回転時の温度上昇の抑制に効果が高い、オイルエアやオイルミストで使用することもでき、最適な潤滑方法を選択した場合、Dpw・N値800,000の連続回転も十分に可能です。

回転軸受の温度上昇イメージ
回転軸受の温度上昇

剛性

高速複列アンギュラリング「BWH形」は転動溝を複列化し、45度の接触角を持つDB構造を採用しています。そのためモーメント剛性が高く、クロスローラーリングと同様に1枚の回転軸受でラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメントの全方向の荷重を負荷できます。また軌道輪は複列アンギュラローラーリング「RW形」と同様に内・外輪一体構造を採用しているため、剛性が向上し高い予圧を与えることが可能です。回転軸受の予圧はオーバーサイズのボールを組込む事で与えているため、軌道輪の剛性が不十分な場合、ボールの弾性力(内部荷重)に軌道輪の剛性が負け十分な予圧が作用しません。以上の構造、高い予圧を与えることによりクロスローラーリングと同様の剛性を実現しています。

クロスローラーリングと高速アンギュラリングの剛性比較のイメージ
クロスローラーリングと高速アンギュラリングの剛性比較


工作機械メーカーからは加工の効率化や加工精度向上のため、更なる高速化・高精度化の要求があり、今後これらに対応するため製品の性能向上を目指しています。 


幅広い業界での高速化、高剛性化、高精度化に貢献

工作機械の多軸化・複合化の進化にともなう回転軸受の要求とその対応について、弊社回転軸受製品の技術動向を紹介しました。特に高速複列アンギュラリング「BWH形」はクロスローラーリングでカバーしきれなかった、高速回転領域の対応が可能な新たな市場価値を訴求できる新製品です。工作機械だけでなく、幅広い業界で装置の高速化、高剛性化、高精度化へ貢献できる製品です。本記事を通じてクロスローラーリングをはじめとする回転軸受製品をご検討していただくきっかけになれば幸いです。


クロスローラーリングの詳細はこちら(THKサイト)
複列アンギュラリング(複列アンギュラローラーリング「RW形」、高速複列アンギュラリング「BWH形」)の詳細はこちら(THKサイト)
「THKオンラインサービスのご紹介」はこちら(THKサイト)


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