2023年07月19日
2026年01月29日
製品
「免震構造」~安心・安全を支える技術の仕組み、応用から開発秘話ま で~

地面の揺れを建物に伝わりにくくする免震構造は、免震が備わったオフィスビルや高層マンションの普及により、私たちの身近な存在になりつつあります。今回は、人々の安心・安全を支える免震構造の基礎知識から、建物免震だけでなく大切な資産を守る「機器免震」への応用、そしてTHKが直動案内技術を応用して実現した開発の裏側まで、分かりやすくご紹介します。
建物免震から見る「免震構造」と特長
建物全体を守る建物免震はどのような構造なのでしょうか。「免震・制震・耐震」の違いは何でしょうか。

地震の揺れを受け流す「免震」
建物と基礎の間に免震装置を設置し、地盤と切り離すことで建物に地震の揺れを直接伝えない構造です。

地震の揺れを吸収する「制震」
物内部に錘(オモリ)やダンパーなどの「制震部材」を組み込み、地震の揺れを吸収する構造です。上階ほど揺れが増幅する高層ビルなどの高
い建物には、非常に有効な技術です。

地震の揺れに耐える「耐震」
現在の大半の住宅で採用されている耐震工法は、地震に対しては「建築物が倒壊せず、住人が避難できること」を前提に建物の強度で、揺れに耐える構造です。

免震・制震・耐震の比較(震度6レベル)
大地震が発生した際、免震システムの有無によって室内の状況にどれだけの差が生まれるのかを、免震・制震・耐震での比較で表したのが以下になります。
大地震発生時 免震・制震・耐震の室内状況比較
| 免震 | 制震 | 耐震 | |
| 家具転倒の可能性 | 低い | 高い | 高い |
| 食器・ガラス飛散の可能性 | 低い | 高い | 高い |
| 躯体損傷の可能性 | 極めて低い | 低い | 高い |
| 建物の揺れ方 | 地表面の揺れが直接伝わらないた め、建物は地面より小さな揺れと なる |
耐震構造に比べ、上階ほど揺れが 抑えられるが、地表面よりは小さ くならない |
建物のゆれは 1F → 2F と、上に行 くほど大きくなる |
免震技術は建物から機器免震へ
部分的に守る、機器免震装置って何?
美術品などの社会的財産や、サーバーなどの設備機器を建物の床から切り離すことで、地震災害から守る装置のこと
機器免震とは、免震装置により建物の床と機器や美術品とを切り離して、地震による激しい揺れをやわらげる技術です。重要文化財、美術品、サーバー、医療機器などの社会的・事業的に重要な資産を守る有効な地震対策として注目されています。また、建物免震と比べて「導入コストを抑えられる」「工期が短い」「既存施設にも導入しやすい」といった特長があります。

免震装置は部分的に設置することも可能です。美術品やサーバー、医療機器など、揺れに弱い資産も地震から守ります。



フロアをまるごと免震
大地震が発生した際、免震システムの有無によって室内の状況にどれだけの差が生まれるのかを、免震・耐震固定での比較で表しています。


安心・安全を支える免震構造の開発秘話
2001年末、THKは「快適な生活空間を創造する技術を提供する」という理念のもと、ACE事業部(Amenity Creation Engineering)を設立しました。直動案内技術の応用分野を拡大する中で、地震対策として免震構造が最適であるという考えに至り、免震技術の開発と普及に取り組み始めました。
免震構造の開発は、あるゼネコンとの「摩擦を減らす転がり案内が免震装置に使えるのではないか」という話がきっかけで始まりました。それはACE事業部発足前の出来事でした。開発の目途が立ったころ、1995年 阪神・淡路大震災を経験したことにより、ACE事業部の前身となる専門部隊を編成し本格的に同分野への参入が加速しました。しかし、「直動案内をそのまま使っても本当に免震になるのか?」という課題を抱えていたうえ、建築向けの製品開発のやり方も手探りで行わなければならなかったので、開発は一筋縄ではいきませんでした。
はじめて免震構造の技術が採用されたのはビルの免震装置でした。当時、建物免震の主流は積層ゴムでしたが、地震の揺れをさらに低減し、免震性能をより高める手法として、機械要素部品である直動案内を応用する発想が注目されました。積層ゴムによる免震はせいぜい10階程度でしたが、THKは、「なぜ20階建ての建物を免震できないのか」という大きな課題を自らに課し、免震装置の開発を進めました。
THKの免震構造は、十字にクロスさせたLMガイドが地震の揺れに応じて前後左右に動き、地震の揺れを逃がす機構になっています。摩擦を減らす転がり技術をうまく利用すれば、さまざまな免震建物にも応用が利きます。今は戸建て住宅から、機器免震まで幅広い分野で使用されています。
現在、日本では戸建て住宅を除いて約4,000棟の免震建物が存在します。 実際に地震災害時に免震効果が検証されたことで、免震建物の普及を押し上げるきっかけにもなりました。兵庫県南部地震(1995年)、東北地方太平洋沖地震(2011年)、熊本地震(2016年)において免震構造による被害の低減が確認されています。免震建物を採用した病院では、地震直後でも治療を再開できた事例も報告されています。建物の安全性だけでなく、機能を維持できる点が、自治体や企業におけるBCP(事業継続計画)対策として免震が注目される理由の一つとなっています。

機械要素部品メーカーの技術が光る、免震性能を最大限に発揮するTHKの免震構造とは
心臓部には世界中の産業機械に採用されるLMガイド
免震モジュールの稼働部に使用されるLMガイドは、直線運動を「ころがり化」することで摩擦抵抗を大幅に低減し、地震の揺れを滑らかに受け流す構造を実現しています。1972年にTHKが開発して以来、メカトロニクス機器の性能に飛躍的向上をもたらし、今や世界中の産業機械・工作機械にデファクトスタンダードとして採用されています。

免震モジュールTGS型は、免震に必要な「支承」「復元」「減衰」の機能をコンパクトなサイズに収めています。


免震構造で未来を守る
THKは、これまで培ってきたLMガイドの技術力を活用し、免震構造を通じて地震災害に強い安心・安全な社会を実現するという使命を果たして
きました。免震構造は災害時における生活の質を向上させるだけではなく、事業継続(BCP)や貴重な資産の保護にも貢献し、より良い未来を
創造するための重要な柱となります。THKは今後も、機械要素部品メーカーとしての技術力を礎に、免震構造を通じて安心して暮らせる持続可能
な社会づくりを支えていきます。
免震の詳細はこちら(THK免震ウェブサイト)
免震のカタログダウンロードはこちら(THKサイト)