1. トップ
  2. THKジャーナル
  3. 製品ジャーナル
  4. 「免震技術」~開発裏話から仕組み、応用まで~

「免震技術」~開発裏話から仕組み、応用まで~

  • 採用事例
  • 製品紹介
  • 半導体製造装置
  • その他機械
  • 免震
  • 工作機械
  • 一般産業機械
  • 使用事例
  • 電気電子機器

免震


地面の揺れを建物に伝わりにくくする免震構造ですが、免震が備わったオフィスビルや高層マンションは珍しくなくなり、だんだんと身近なものになりつつあります。今回は、転がり案内を応用したTHKの直動案内の技術がどのような変遷をたどり免震技術となっていったか、そして建物免震や機器免震への応用について、ご紹介いたします。

THK「免震技術」のきっかけと歩み

「快適な生活空間を創造する技術を提供する」この言葉を胸に2001年末、機械要素部品メーカーのTHKがACE事業部(Amenity Creation Engineering)を新設し、直動案内をさまざまな分野、業界に拡大していこうという強い思いから「免震技術」の開発と普及を目指しました。

免震技術の開発は、あるゼネコンとの「摩擦を減らす転がり案内が免震装置に使えるのではないか」という話がきっかけで始まりました。それはACE事業部発足前の出来事でした。開発の目途が立ったころ、1995年 阪神・淡路大震災を経験したことにより、ACE事業部の前身となる専門部隊を編成し本格的に同分野への参入が加速しました。しかし、「直動案内をそのまま使っても本当に免震になるのか?」という課題を抱えていたうえ、建築向けの製品開発のやり方も手探りで行わなければならなかったので、開発は一筋縄ではいきませんでした。

はじめて「免震技術」が採用になったのはビルの免震装置でした。当時は積層ゴムが建物免震の主流でしたが、地震の揺れをより軽減して免震性能をより効果的に発揮する秘策として機械要素部品の直動案内に白羽の矢が立ちました。
積層ゴムによる免震はせいぜい10階程度でした。THKは、「なぜ20階建ての建物を免震できないのか」という大きな課題を自らに課し、免震装置の開発を進めました。THKの免震技術は、十字にクロスさせたLMガイドが地震の揺れに応じて前後左右に動き、地震の揺れを逃がす機構になっています。摩擦を減らす転がり技術をうまく利用すれば、さまざまな免震建物にも応用が利きます。今は戸建て住宅から、機器免震まで幅広い分野で使用されています。

現在日本において、戸建て住宅を除いて4,000棟の免震建物があります。実際に地震災害時に免震効果が検証されたことで、免震建物の普及を押し上げるきっかけにもなりました。兵庫県南部地震(1995年)、東北地方太平洋沖地震(2011年)、熊本地震(2016年)において免震構造による被害の低減が確認されています。免震建物のある病院では、地震直後でも治療が再開できたそうです。建物の安全性に加え、建物の持つ機能性が維持できた点が、自治体や企業におけるBCP対策に免震を検討するケースが増えている要因になっています。 

地震のイメージ



機械部品メーカーの技術が光る、免震性能を最大限に発揮するTHK機器免震とは

心臓部には世界中の産業機械に採用されるLMガイド

免震モジュールの稼働部に使用されるLMガイドは、直線運動を「ころがり化」することで摩擦抵抗を軽減し、滑らかな動きで地震の揺れを受け流します。1972年にTHKが開発して以来、メカトロニクス機器の性能に飛躍的向上をもたらし、今や世界中の産業機械・工作機械にデファクトスタンダードとして採用されています。

LMガイド構造図のイメージ
LMガイド構造図



免震機能をコンパクトに凝縮した「免震モジュールTGS型」のイメージ
免震機能をコンパクトに凝縮した「免震モジュールTGS型」


免震モジュールTGS型は、免震に必要な「支承」「復元」「減衰」の機能をコンパクトなサイズに収めています。

直角に組み合わせたLMガイドのイメージ
直角に組み合わせたLMガイド



建物免震から見る「免震」の構造と特長

建物全体を守る建物免震って何?「免震・制震・耐震」の違いは?

免震・制震・耐震それぞれの揺れ方イメージ

免震・制震・耐震それぞれの揺れ方

地震の揺れを受け流す「免震」

建物と基礎の間に免震装置を設置し、地盤と切り離すことで建物に地震の揺れを直接伝えない構造です。

免震の揺れ方イメージ
免震の揺れ方

地震の揺れを吸収する「制震」

建物内部に錘(オモリ)やダンパーなどの「制震部材」を組み込み、地震の揺れを吸収する構造です。(上階ほど揺れが増幅する高層ビルなどの高い建物には、非常に有効な技術です。)

制震の揺れ方イメージ
制震の揺れ方

地震の揺れに耐える「耐震」

現在の大半の住宅で採用されている耐震工法は、地震に対しては「建築物が倒壊せず、住人が避難できること」を前提に建物の強度で、揺れに耐える構造です。

耐震の揺れ方イメージ
耐震の揺れ方

免震・制震・耐震の比較(震度6レベル)

大地震が発生した際、免震システムの有無によって室内の状況にどれだけの差が生まれるのかを、耐震、制震、免震での比較で表しています。

  免震 制震 耐震
家具転倒の可能性 低い 高い 高い
食器・ガラス類飛散の可能性 低い 高い

高い

家具製品の転倒・破損の可能性 低い 高い 高い
躯体損傷の可能性 極めて低い 低い 高い
建物の揺れ方 地表面の揺れが直接伝わらないため、建物は地面より小さな揺れとなる。 耐震構造に比べ、上階ほど揺れが抑えられるが、地表面よりは小さくならない。 建物のゆれは1F⇒2Fと、上に行くほど大きくなる。
大地震発生時 免震・制震・耐震の室内状況比較



免震技術は建物から機器免震へ

部分的に守る、機器免震装置って何?

免震装置は部分的に設置することも可能。サーバーや美術品、医療機器など、揺れに弱い資産も地震から守ります。

機器免震設置例のイメージ

機器免震設置例



機器を守りたい

免震と耐震固定の比較イメージ
免震と耐震固定の比較


美術品などの社会的財産や、サーバーなどの設備機器を建物の床から切り離すことで、地震災害から守る


機器免震とは、免震装置により建物の床と機器や美術品とを切り離して、伝わる激しい地震動をやわらげるもので、重要文化財や美術品などの社会的財産や貴重な設備機器を地震から守る理想的な対策といえます。建物免震より大幅にコストを抑えられ、短期間で簡単に導入できる地震対策です。

フロアをまるごと免震

大地震が発生した際、免震システムの有無によって室内の状況にどれだけの差が生まれるのかを、免震、耐震固定の比較で表わしています。

免震と耐震固定

免震と耐震固定のそれぞれの揺れ方イメージ
免震と耐震固定のそれぞれの揺れ方




直角に組み合わせたLMガイドで360°全方向への滑らかな動きを実現します。


THKはこれからもLMガイドの技術力を活用し、免震を通じ災害に強い安心安全な社会づくりに貢献していきます。

免震の詳細はこちら(THK免震ウェブサイト)

関連記事