2025年05月21日
製品
「摩耗が早い・精度が出ない」その課題を転がり案内のボールスプラインで解決!
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直動案内部品は機械の動作において重要な要素の1つであり、ミクロン単位の精度が必要な場合もあるため、位置決め精度が低下すれば製品の品質や生産効率に⼤きな影響を与えます。したがって、より⾼精度かつその精度を維持する必要があります。今回は精度を低下させる最も⼀般的な要因である摩耗に焦点を当て、低摩耗で⾼精度を維持することが可能なボールスプラインについてご紹介します。
転がり案内のメリットとは
機械部品の直動案内の⽅式には、どのような種類があるかご存じでしょうか。案内⽅式は⼤きく分けると、すべり案内・静圧案内・転がり案内の3種類があります。
すべり案内
可動部と案内⾯との間に潤滑油を供給し、⽂字通り滑らせる案内⽅式です。剛性・減衰性が⾼いという特⻑があり、⼤型の加⼯機で採⽤されています。その⼀⽅で、接触⾯積が⼤きいため摩擦抵抗が⼤きく、⾼速運動や⾼精度位置決めは不向きとされています。
静圧案内
加圧した油や空気を供給することで可動部と案内⾯を完全に⾮接触にする案内です。⾮接触であることで摩擦抵抗が小さく、摩耗に対しても有利な案内⽅式です。しかし、案内⾯には⾮常に⾼い加⼯精度が求められ、きさげ加⼯を⽤いて⼿作業で加⼯⾯を仕上げるため導⼊が難しい場合があります。
転がり案内
可動部と案内⾯との間に転動体(ボールあるいはローラー)を配置し、転動体を介して運動することで摩擦抵抗が⼩さく⾼速運動に適した案内方式です。また、予圧を与えることができるため⻑期間⾼精度を維持し、安定した性能を発揮することが可能です。
それぞれの案内⽅式にメリットはありますが、直動案内部品には転がり案内が適している場合が多いです。
転がり案内で摩耗の進みを小さくする!ボールスプラインとは
転がり案内部品の一例として、装置のスライド機構にはリニアブッシュが採用されています。リニアブッシュは、円筒のLMシャフトと組み合わせて使用される製品です。特長として、LMシャフトとボールが点接触するため、最小の摩擦抵抗で直線運動し、転がり案内の特長でもある軽快な運動が得られることが挙げられます。その反⾯、リニアブッシュはボールがLMシャフトと点で接触するため接触⾯積が⼩さくなります。したがって、荷重を受けながらの運動には不向きで、受ける荷重によっては摩耗の進みが早くなることもあります。
そこで、受ける荷重が⼤きい場合はボールの転がる転動溝があることで接触⾯積が広く、許容荷重が⼤きいことが特⻑であるボールスプラインの出番です。ボールスプラインは荷重を受けながら運動させることが得意な製品です。リニアブッシュと受ける荷重が同じであれば、摩耗の進みを⼩さくすることができ、⻑期の稼働が可能です。

なぜボールスプラインは現場で選ばれるのか?
多くの現場で採用いただいているボールスプラインには、3つのメリットがあります。
精度維持 :転がり機構によりガタつきを防ぎ、高精度を長期間維持
耐久性向上 :低摩擦構造で摩耗を抑え、寿命を延ばす
コスト削減 :交換頻度の低減により、メンテナンスコストを削減
それぞれの特長について、採用事例と合わせてご紹介します。
ボールスプラインなら「ガタつき」ゼロで⾼精度を⻑期間維持!
機械精度を維持する上で重要なのが、「ガタつき(バックラッシュ)」の抑制です。
すべり案内は、動作するうえで外筒とシャフトの間にすきまが必要になります。すきまがあるとガタが生じ、その分だけ精度が低下します。すべり案内ですきまを小さくして精度を向上させると、最悪の場合動かなくなる可能性もあります。
転がり案内はすべり案内に比べ、高精度な直線運動が得られます。特にボールスプラインは、転動溝があり接触面積が広いため、高い予圧荷重をかけることができます。予圧荷重をかけることでガタつきを無くし、より精度を向上させることができます。また、高い精度を長期間維持することが可能です。
採用事例:半導体製造装置
お客様の装置で摺動部にすべり構造を使⽤しており、摩耗が問題になっていました。摩耗によりすきまが⼤きくなり、剛性低下を招く恐れがあったためです。摺動部をボールスプラインに置き換えることで、低摩擦構造による摩耗の低減により、剛性低下の懸念が解消し装置の安定稼働が可能になりました。

耐久性アップで交換頻度を削減しコストダウン!
機械部品の交換頻度が⾼いと、メンテナンスコストの増加やダウンタイムの発⽣が避けられません。その点で、ボールスプラインは許容荷重が⼤きいため、⻑寿命化が可能です。交換頻度が減り、保守コストなどのトータルコストを⼤幅に削減できます。加えて、適切な潤滑管理を⾏うことで、さらなる耐久性向上が期待できます。
また、ボールスプラインは1軸でトルクを受けることができます。そのため、リニアブッシュを採⽤した場合と⽐べると周辺関連部品を⼩さくでき、部品点数も減らせるためコストダウンにも寄与できます。
採用事例:自動包装機
お客様の装置の昇降部にリニアブッシュを採⽤いただいていましたが、モーメント荷重を受ける箇所のため剛性不⾜が課題となっていました。
ボールスプラインに置き換えることで、接触⾯積が広く許容荷重が⼤きい特⻑を活かし、摩擦の低減と剛性向上を実現しました。結果として、機械寿命の延⻑とメンテナンス頻度の削減につながりました。

幅広い業界での高精度と耐久性向上に貢献
今回は、転がり案内のボールスプラインのメリットについてご紹介しました。⾼精度を維持し、耐久性向上が期待できるボールスプラインは、設備の安定稼働とコスト削減に貢献できると考えています。実際に、⼯作機械・産業ロボット・医療機器など、精度と耐久性が求められる様々な現場で採⽤いただいています。
装置に関してお困りごとやお悩みがございましたら、ぜひお気軽にTHKへご相談ください。
関連リンク
すべり案内ところがり案内の解説動画はこちら(YouTube)