
お客様から、装置の設計時に「直動案内部品の種類が多すぎて、どの製品を選定すればよいかわからない」というお声を耳にします。直動案内部品は求められる精度や速度、荷重条件などによって適した製品が異なるため、用途に応じた選定が重要です。今回は代表的な直動案内部品の特長を紹介するとともに、事例別に選定時のポイントをわかりやすくご紹介します。
直動案内部品とは

製造装置や工作機械、ロボットなどでは、ワークを位置決めするために「まっすぐ正確に動かす」機構が欠かせません。その動きを案内するのが直動案内部品です。THKは直線運動部の転がり化を実現し、LMガイドを世界で初めて製品化しました。以来、多様なニーズに応えるため製品ラインナップを拡充し、直線運動の製品だけでも10種類以上をラインナップしています。
直動案内部品と一口に言っても、「ガイド(レールを用いるタイプ)」と「軸案内(シャフトを用いるタイプ)」の大きく2つに分類されます。
ガイドでは、「LMガイド(リニアガイド)」「クロスローラーガイド」「スライドレール」などがあり、軸案内では「ボールスプライン」「リニアブッシュ」「LMストローク」など、それぞれに数多くの製品があります。
お客様の条件によって最適な直動案内部品が必ずありますので、今回は実際の事例ごとに各製品の特長や選定のポイントをご紹介します。
CASE1. 引き出し機構
直動システムの代表的な用途の1つが引き出しなどの「開閉部」です。引き出しの多くは重量物を収納した状態で全開まで引き出した際に、オーバーハングの状態になるため、モーメント荷重を受けつつ滑らかに動く必要があります。そのため部品を選定する際には、「耐荷重」と「軽快な直線運動」という2点が重要になります。
このような用途においてTHK製品で候補にあがることが多いのは、「LMガイド」と「スライドレール」です。それでは、それぞれの構造と特長を比較していきます。
LMガイドの構造と特長

LMガイドは可動部であるLMブロックとその動きを支えるLMレール、ボールの大きく3つの要素から構成されています。ボールを無限循環させる機構のため、長いストロークにも対応が可能です。LMガイドの最大の特長は、ボールと転動面がR溝接触するため、許容荷重が大きく長寿命であることが挙げられます。
スライドレールの構造と特長

スライドレールは鋼板を精密成形した低価格な有限ストロークタイプの直動案内部品です。鋼板やステンレス鋼板を材料とし、ロールフォーミングやプレスで成形されます。スライドレールの最大の特長は、薄形コンパクトで取付時のスペースが少ない場所での使用に適している点です。取付けも簡単なため、幅広い用途で使用できます。
開閉用途に適した直動案内部品の選び方
以上の特長を踏まえて、開閉部に適した直動案内部品を考えていきます。LMガイドは工作機械にも使用される直動案内部品で、高い位置決め精度を有しています。そのため、システムキッチンの昇降案内部などの大きな荷重を負荷する必要がある場合や、オーバーハングで大きな荷重が作用する場合、長いストロークが必要な場合はLMガイドの選定をご検討ください。
コピー機や家庭の引き出しのように軽荷重の条件で軽快な直線運動が求められる場合は、取付けが容易でコンパクトなスライドレールの使用を推奨します。


CASE2. 生化学自動分析装置(医療分析装置)
次に、直線運動に加えて回転運動が求められる生化学自動分析装置を例に、選定方法をご紹介します。生化学自動分析装置では、検査物を採取し分析部へ移動させるため、昇降の「直線運動」とアームの「回転運動」を一軸で行う必要があります。
生化学自動分析装置をはじめ、軸案内の直動案内部品としてTHK製品で候補にあがることが多いのは、「リニアブッシュ」と「ボールスプライン」になります。それでは、それぞれの構造と特長を比較していきます。
リニアブッシュの構造と特長

リニアブッシュは、円筒のLMシャフトと組み合わせて使用される製品です。最大の特長は、転動面とボールが点接触するため、最小の摩擦抵抗で直線運動し、軽快な運動が得られることが挙げられます。また、リニアブッシュは安価であるため、幅広く使用されています。その反面、転動面とボールが点接触することにより、大きな荷重を受けながらの運動には不向きなところもあります。
ボールスプラインの構造と特長

ボールスプラインは、部品構成はリニアブッシュと似ていますが、リニアブッシュと異なり、転動溝が設けられています。ボールスプラインの最大の特長は、LMガイドと同様にボールと転動面がR溝接触することで許容荷重が大きいことです。また、転動溝があることで大きなモーメントを負荷でき、トルク伝達も可能です。
トルク伝達が必要な用途に適した直動案内部品の選び方
以上の特長を踏まえて、生化学自動分析装置に適した直動案内部品を考えていきます。一見、外観が似ている構造の製品ですが、生化学自動分析装置として求められる最重要ポイントは「トルクの伝達」です。そのため、1軸でトルク伝達が可能なボールスプラインを推奨します。本装置ではスプラインナットと外径にサポートベアリングを構成したロータリーボールスプラインを使用しており、アームの回転と直線運動を同時にコンパクトな設計で実現させることができます。また、今回はトルク伝達を最重要ポイントとして選定しましたが、負荷荷重が大きい条件でもボールスプラインが適していることが多くあります。
一方、トルク伝達がなく負荷荷重が小さい条件では、摩擦係数が小さく軽快な動きが可能なリニアブッシュが適しています。
このように、装置に必要な動きに合わせて、最適な部品を選定することが重要となります。

CASE3. 画像検査装置
最後にナノレベルの運動精度が求められる画像検査装置を例に選定方法をご紹介します。画像検査装置はカメラで製品外観を撮影し、表面の傷や汚れ、寸法や形状などを瞬時に判定するシステムです。対象物とレンズとの距離が変わることでピントがずれると画像がぼやけてしまうため、「ナノレベルオーダーの運動精度」が求められます。
画像検査装置で候補となることが多いTHKの直動案内部品は「LMガイド」と「クロスローラーガイド」になります。それでは、それぞれの構造と特長を比較していきます。
LMガイドのウェービングとは
引き出しの開閉部の選定で紹介した通り、LMガイドは高剛性と高い位置決め精度の特長を有しています。しかしLMガイドは無限循環を実現したことで、トレードオフとしてボールの循環によりブロックとボールの相対位置が常に変化します。これにより荷重を負荷しているボール数が変化した際に微小な姿勢変位が起こります。この微小な姿勢変位をウェービングと呼び、転動体の無限循環構造を持つ製品で必ず発生する現象となります。


クロスローラーガイドの構造と特長

クロスローラーガイドの構造と特長を見ていきましょう。クロスローラーガイドは精密ローラーを交互に直交させて組込み、4方向の荷重を負荷できる有限ストロークタイプの製品です。最大の特長は、ローラーがゲージに分離保持されており、転動体の循環がないためウェービングが発生しないことです。これにより、軽快で高精度な直線運動が可能となります。
高精度位置決め用途に適した直動案内部品の選び方
以上の特長を踏まえて、画像検査装置に適した直動案内部品を考えていきます。画像検査装置では精度(ウェービング)が重要になるため、LMガイドを選定する場合はウェービングを抑えるために小径ボールと8条列を採用した超低ウェービングLMガイドを推奨します。超低ウェービングLMガイドは、ボール1個当たりの負荷荷重を小さくすることで、ボール循環の影響による負荷ボール数の変動・荷重のバランスの変化を限りなく小さくし、超低ウェービングを実現しています。静圧案内に匹敵する超低ウェービング化を実現したことで検査装置はもちろん、半導体製造装置や工作機械など、従来は静圧案内が採用されていた箇所への使用も可能になりました。
また、画像検査装置では、循環方式が有限ストロークタイプのクロスローラーガイドも適しています。クロスローラーガイドの構造上、立使用や衝撃が加わる場合にケージずれが生じることがあるため、そのような場合はケージずれ防止機能付きのクロスローラーガイドを選定することを推奨します。



お客様の装置に求められる精度(ウェービング)や使用条件に合わせて、最適な直動案内部品を選定いただければと思います。
用途ごとに最適な直動案内部品は必ずある!
今回は、直動案内部品の特長と選定のポイントについて事例ごとにご紹介しました。一見似ている製品でも、許容荷重や剛性、精度、ストロークなどに違いがあり、適した用途は異なります。製品選定においては、お客様の装置の仕様に適した直動案内部品を選ぶことが重要です。
本記事をぜひ製品を選ぶ際の参考としてご活用いただければ幸いです。また、今回ご紹介しきれなかった製品も多数ありますので、選定に関してお困りごとがありましたらお気軽にお問い合わせください。
スライドレールの詳細はこちら(THKサイト)
ボールスプラインの詳細はこちら(THKサイト)
リニアブッシュの詳細はこちら(THKサイト)
クロスローラーガイドの詳細はこちら(THKサイト)