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物流倉庫の自動化とロボット技術導入を支えるスライドレールとは

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物流業界の「2024年問題」イメージ


ワークライフバランス、物流・建設業界の「2024年問題」、さまざまな業界で叫ばれる人手不足をめぐるニュースなど、われわれが目にしない日はないほどです。昨今、企業では人手不足への対応として、残業やアルバイト、派遣社員を活用しています。しかし、人件費やエネルギー価格の高騰など収益への逆風が吹き荒れています。そのため、各企業では生産性の向上が急務であり、作業の自動化を推し進めることが必要です。このような課題を解決するため、今回は物流の自動化設備など多様な用途に使用されているスライドレールのユーティリティスライドについてご紹介します。

何から取り組めば良い?

自動化と言ってもどこから手を付ければ良いか、お悩みになる方も多いのではないでしょうか。生産性向上や効率化を実現するためには、人を削減し余剰人員を生産性の高い業務に振り分けることが不可欠です。また、人の介在を減らす為に必要な技術の難易度や実現時期、費用も大きく変わってくることから、導入の難易度が低く、より高い効果が見込める機器の導入をお勧めしています。

物流における課題イメージ



物流の自動化は、生産性アップに最適

皆さんも、ECサイトや量販店のネット販売から、商品を購入したことがあると思います。現在では、夕方までに発注すれば翌日に届くことが当たり前になっていますが、人が1つ1つの商品を在庫棚からピッキングすると途方もない労力を必要とします。在庫棚から多数の、商品をピックアップして出荷をする際、自動倉庫を使用すれば台車が荷物を運んでくるため、作業者の負担を大幅に軽減し、省人化を図ることが可能です。

便利な世の中を支えるには、作業者の労力を最大限に生かせる自動化が不可欠です。その自動倉庫の棚からコンテナを出し入れする台車のアーム部に使用されているのが、THKで生産しているユーティリティスライドATG形です。

自動倉庫イメージ



自動倉庫棚のコンテナを出し入れする台車のアーム部イメージ
自動倉庫棚のコンテナを出し入れする台車のアーム部イメージ



ユーティリティスライドとは?

「ユーティリティスライドは、高負荷容量と高耐久性を持つスライドレールの一種です。」

今回開発されたユーティリティスライドATG形は、アウタメンバ(アウタレール)とインナメンバ(インナレール)、ボール、リテーナ(保持器)で構成しています。THKの直動案内コア技術で培われた高炭素鋼や最適な潤滑剤(リチウム系AFB-LFグリース)を採用しています。

高負荷容量・高耐久ユーティリティスライドATG形と内部構造イメージ画像

高負荷容量・高耐久ユーティリティスライドATG形と内部構造イメージ


アウタ/インナメンバが前後に伸縮するテレスコピックタイプのスライドレールで、高負荷容量、耐久性に優れています。2条のボール列が安定したスムーズな動きを実現し、スライドレールならではの取り付けの容易さも備えた製品となっています。

主な特長としては以下の3点が挙げられます。

1. 許容荷重の向上・長寿命化

ATG形は従来のスライドレールとは異なり、アウタメンバ、インナメンバの材料にLMガイドと同じ高炭素鋼を使用し、さらに転動溝の表面に高周波焼入れを施して表面硬度を高め強度をアップしています。これにより従来のスライドレール(板金製)に比べ、10倍以上の高負荷を実現しました。高耐久で許容荷重の向上や長寿命化に貢献します。

2. 取り付けの容易さ

上述のとおり、自動倉庫で使用されるシャトル(台車)では直動機構をアルミフレームのラフな取付面に直接取り付けることが多く、取付誤差の吸収能力が求められます。これに対して、ATG形では取付誤差が生じても転動体(ボール)と溝の接触位置が移動することで、誤差を吸収する2点接触の「サーキュラーアーク溝」を採用しています。優れた調整能力を発揮し、多少の取付面誤差が生じても、取付時の調整が容易となります。専門のエンジニアが立ち会わずに済むため、現場の作業負担が減り作業時間も短縮でき、物流倉庫の生産性向上に寄与できます。

サーキュラーアーク溝2点接触構造とゴシックアーチ溝4点接触構造の誤差吸収のイメージ図

サーキュラーアーク溝(左)による取付誤差吸収。ゴシックアーチ溝(右)では取付誤差吸収能力に乏しい


サーキュラーアーク溝は、取付誤差が生じても、ボールと溝の接触位置が移動することで誤差を吸収します。

3. ストロークエンドでのロック現象の抑制

ATG形の採用するサーキュラーアーク溝は、ゴシックアーチ溝を採用した従来品と違い、転動体がレール転動溝の奥部最底部のみで接触するため転動体の差動すべり量が少なく、転動体のズレも抑制できます。このため、転動体のズレに起因するストロークエンドのロック現象抑制が可能となり、安定した装置の稼働に貢献できます。

サーキュラーアーク溝とゴシックアーチ溝の差動すべり量の比較イメージ

サーキュラーアーク溝とゴシックアーチ溝の差動すべり量の比較

物流倉庫以外の使用例

ユーティリティスライドATG形は、組み合わせることで、様々な製品への展開が可能です。
以下に一例をご紹介します。

  • 鉄道車両用ドア案内部
  • 工作機械用ドア案内部
  • シート座面スライド部
  • バッテリーメンテナンスドア引出し部
  • 鉄道車両ドアステップスライド部
  • ワークストッカーの案内部など

鉄道用車両の使用例イメージ

鉄道車両における使用例



ワークストッカーの使用例イメージ
ワークストッカーの使用例


これらの製品では、取付部の精度が出ていない箇所の使用を想定しております。そのため、加工費用や取付調整時間の短縮により最終的にトータルコストの削減ができる製品になっておりますので、案内レール取付部の精度や加工にお悩みがある場合は、ぜひTHKへお問い合わせください。

「高負荷容量・高耐久ユーティリティスライドATG形」のニュースリリース(THKサイト)
「高負荷容量・高耐久ユーティリティスライドATG形」の製品情報(THKサイト)

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