2023年09月27日
製品
最先端科学分野を支える『高機能非磁性・超高耐食製品』
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非磁性とは、磁気を持たないことを意味します。言い換えれば、磁石に引き寄せられず、磁場を発生させない物質ということです(時には、弱い磁性を持つ物質も非磁性と呼ぶことがあります)。
この特性を持つ工業材料としては、ステンレス鋼やアルミニウム合金などがありますが、近年では先端科学分野における特殊環境ニーズの高まりから、より高機能な非磁性製品が求められています。今回はTHKによる先鋭的な『高機能非磁性・超高耐食製品』についてご紹介いたします。
科学技術の進歩とともに、必然の要求から生まれた非磁性製品
さまざまな分野の最先端技術を見渡すと、多くの場合、通常ではあり得ない特殊な環境を実現し、その環境の中で新しい技術を可能にしています。『高機能非磁性・超高耐食製品』は、そんな特殊環境用途向け製品の一つとなります。
具体的な非磁性の要求事例について少し見てみますと、最近よく耳にする熱核融合炉はまさに未踏の領域の最先端科学技術の一例です。熱核融合炉では、その制御に超電導マグネットという強力な電磁石が用いられていますが、周辺の構造物はその強力な磁力に引っ張られて壊れてしまわないように非磁性であることが求められます。非磁性製品はこのような場所(環境)での使用に最適です。
また別の事例として、半導体の製造工程が挙げられます。最先端半導体の世界では年々微細化が進み、次世代半導体においては回路幅が2nm(ナノメートル=1/1,000,000ミリメートル)とも言われています。このような極小の回路は、マスク描画装置と呼ばれる半導体製造装置で、ガラス板(マスク)の上に電子ビームという光で精密に描かれます。しかし、この電子ビームは僅かな磁気にも影響されて曲がってしまう性質があるため、極小の回路パターンを正確に描くためには電子ビームの直進性を確保することが何よりも重要になります。このため、電子ビームが通過する周辺の全ての部材は、極めて高水準の非磁性(*比透磁率 ≒ 1.001)であることが要求されます。THKの非磁性製品は、このような超精密分野でも真価を発揮しています。
*比透磁率とは:非磁性の能力を表す指標です。
高機能非磁性・超高耐食製品を可能にする「特殊合金THK-NM1」は、元々社内の研究所で新素材として研究されていた非磁性合金でした。ある時、先端半導体製造装置メーカのお客様から、極めて高い非磁性要求の試作受注をいただき、これを使用してみることになりました。その結果、お客様から非常に高い評価をいただき、非磁性製品のソリューションとして市場に認知いただけると確信しました。材料としてまだ不確かな部分はありましたが、前のめりに市場に投入してご活用いただくことが社会に貢献することだと強く感じたため、まずは受注対応品として提供していくことにしました。
高機能非磁性製品を可能にする特殊合金素材
『高機能非磁性・超高耐食製品』は、主要な金属部に前述の【THK-NM1】という「非磁性」かつ「高耐食性」のニッケル系合金を使用しています。その他の補助部品もご要望に沿った材質の選定が可能で、お客様の様々な要求仕様をバランス良く満たしたコンポーネントに仕上げてお届けしています。
さらに【THK-NM1】が優れている点は、硬度が上がる点です。従来の非磁性材料や高耐食材料といえば、硬さが出にくいのが一般的で、熱処理しても40HRC程度でしたが、この【THK-NM1】は、60HRC前後の硬度を得ることができます。これは軸受に最適な硬度:58~64HRCに一致しており、硬度が上がるということは、LMガイドのような転がり案内においては大きな荷重が受けられることを意味します。つまり、硬度の上がらない従来材を使用した場合と比較すると、大幅にコンパクトな装置設計が可能になり、これは単位面積当たりの生産性の向上にも寄与します。
極めて高水準の非磁性と耐食性を両立
『高機能非磁性・超高耐食製品』は、「極めて高水準の非磁性」と「超がつくほどの耐食性」を兼ね備えた特殊環境対応製品になります。半導体製造装置をはじめとした先端科学分野における、電荷粒子を扱う機器、強磁場を発生させる機器や、腐食性の高い薬剤を使用する機器など、従来製品では十分な対応ができなかった特殊環境下でご使用いただけます。
THK-NM1 を主材にした直動製品の特長(非磁性)
- 極めて高水準の非磁性
- 高硬度で優れた耐荷重性能
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軸受に最適な硬度のため、高精度で滑らかな動き
THK-NM1 を主材にした直動製品の特長(耐食性)
- 多くの薬剤に対して極めて高い耐食性
- 表面処理でないため、剥がれの心配なし(たとえ摩耗しても耐食性は維持)
- 腐食によるメンテナンスの負担を大幅に軽減
最先端科学分野から身近な機器に至るまで
これまでの採用実績については、やはり半導体製造装置がメインになります。具体的には、非磁性用途では「電子線描画装置」や「電子線測長器」、高耐食用途では「ウェハー洗浄装置」などが挙げられます。その他にも、「電子顕微鏡」や「磁気共鳴画像装置(MRI)」などの精密分析装置にも適用可能です。更に、頻繁に殺菌・消毒が行われる医療器や食品機械などにもご使用可能で、先端科学分野から比較的身近な機器に至るまで、幅広い分野でのご活用を期待しています。
『高機能非磁性・超高耐食製品』は非常に優れた製品
お客様からは、非磁性や耐食性の能力について、「実際の非磁性能力ってどの程度?」、あるいは、「うちが使用する薬剤でも本当に腐食しない?」というご質問をいただくことがあります。これらのご質問に対しては、製品サンプルや素材のカットサンプルを多数準備しています。そのサンプルをお客様にご提供し、お客様ご自身で評価いただくことで、能力の高さを実感いただけるものと考えています。なお、これまで一度も不合格の判定をいただいたことがないことから、非常に優れた製品だと改めて認識しているところです。
『持続可能社会の構築』にも貢献を
前述のように、これまでの主要な用途は先端科学分野のさまざまな機器であり、今後さらに浸透・拡大していくものと考えられます。そのような特殊環境市場に広く認知いただき、先端科学技術が取り組む共通の課題である『持続可能社会の構築』にも貢献していきたいと考えています。
※カタログのご利用にはTHKオンラインサービスへの会員登録(無料)が必要です。
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