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重要文化財や文化遺産を守る!免震の展示ケースとは?

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博物館や美術館に設置されている免震テーブル VIT型のイメージ

誰もが一度は目にしたことのある、博物館や美術館の展示ケースに収められた国宝や重要文化財。しかし、これらの歴史的価値のある国宝や重要文化財が大地震の脅威に対してどのような備えがされているのか、ご存知の方は少ないかもしれません。本記事では、大切な文化財を地震の揺れから守り、転倒や破損を防ぐための「免震」という技術についてご紹介いたします。

近年相次ぐ大地震

令和6年(2024年)1月1日に発生した石川県能登半島地震は記憶に新しく、その他にも2018年北海道胆振(いぶり)東部地震、2016年熊本地震、2011年東日本大震災など、近年震度7以上の大地震が日本各地で発生しており、各方面に甚大な被害をもたらしていることはご承知のとおりです。博物館や美術館に展示されている文化遺産などの展示物をはじめ、展示ケースの被害も報告されており、今後の地震に備えかけがえのない文化遺産を守るための対策が急務となっています。

文化財の地震対策に最適な「免震」

地震対策には、耐震・制震・免震の3工法があります。まず、地震の揺れに耐える「耐震」です。これは、地震に対して「破損しないこと」を前提に揺れに耐える構造です。次に、地震の揺れを軽減する「制震」です。内部に錘(オモリ)などの「制震部材」を組み込み、地震の揺れを吸収する構造です。最後に、地震の揺れを受け流す「免震」です。構造物との間に免震装置を設置し、地震の揺れを直接伝えない構造です。

THKは、この免震の考え方を展示ケースに応用した製品を製造しています。展示ケースの下に免震装置を設置することで、地震の激しい揺れを吸収・軽減し、大切な文化財を守ります。近年、文化財保護の観点から、最も効果的な地震対策として免震への関心が高まっています。

博物館や美術館における展示ケースとは

皆さんも博物館や美術館に展示されているさまざまな展示ケースをご覧になったことがあると思います。展示ケースは、展示物を訪問者に見やすくしたり、展示物を適切に展示したり、効果的に演出したりするだけでなく、展示物を保護・保存する機能も求められます。特に地震の多い日本では、文化財を保護・保存する免震を取り入れた展示ケースが注目を集めています。

展示ケースの免震化は地震の揺れに対して大きな効果を発揮しますが、博物館や美術館などに設置されている展示ケースは、時折りレイアウト変更による移動が伴うため、安易に展示ケースを固定することが難しく、免震装置での対策が困難な場合が多くありました。

大地震の経験を経て完成に至った免震テーブル

これまで博物館や美術館では、地震のたびに対策を講じる議論が何度もなされてきました。そのような中、展示ケースの揺れを低減させることで、展示物やケースの破損を最小限に抑制することができ、さらには展示ケース、展示品の転倒やケースのガラスの破損による人的被害も併せて防ぐことが可能な免震テーブルという着想を得て、THKでは、博物館や美術館でよく目にする行燈(あんどん)型独立展示ケースの既定サイズに合った「免震テーブル VIT型」を開発しました。

「免震テーブル VIT型」は、展示ケースの下に設置するだけで床との固定が不要であり、オプションのキャスターを付加することでレイアウト変更時に展示ケースを免震装置ごと容易に移動することができます。さらに、行燈型独立展示ケースだけでなく小型搭載物の免震化にも活用でき、幅広い用途での地震対策が可能です。これにより今まで免震化を断念していた場合でも導入することができ、かけがえのない財産を地震から守ることができます。

文化財展示ケース用免震テーブルVIT型の拡大図
文化財展示ケース用免震テーブル VIT型

「免震テーブル VIT型」5つの特長

①平面形状の規格化、豊富なラインナップ

多様なサイズの展示ケースに柔軟に対応し、最適な製品を選定いただけます。導入の検討時間を短縮し、スムーズな設置をサポートします。
形状:正方形の平面形状であり、機器免震装置としてさまざまな搭載物にも使用可能です。
ラインナップ:行燈型独立展示ケースを主ターゲットとした免震装置で、平面サイズを4種類用意しています(幅600mmから1200mm)。

②免震性能の標準化

標準的な地震波形を用いた応答解析結果が用意されているため、複雑な計算や評価をしなくても簡単に免震効果をご確認いただけます。これにより、安心して製品をお選びいただけます。
性能確認の手順:搭載物の質量範囲を各段階で設定し、標準3波(50kine)およびJMA神戸波の地震波形を入力して応答解析を実施しています。そのため、性能確認が容易に行えます。

③薄型設計

展示ケースの外観デザインを損なうことなく設置可能です。限られた展示スペースを有効活用できます。
設計:⼆軸免震ユニットおよび仕上げ鋼板、トップフレームを含む全⾼を96mmとした薄型設計です。

免震テーブル VIT型の薄型設計イメージ
薄型設計で展示スペースを有効活用

④メンテナンスフリー

ダストシール付きのLMガイドを採用しているため、日常的なメンテナンスの手間がほとんどかかりません。これにより、管理コストの削減に貢献します。
仕様:直動可動部にダストシール付きのLMガイドを使用したメンテナンスフリータイプです。LMガイドはユーティリティスライド UGR形を使用しています。

免震テーブル VIT型に使用されているLMガイドUGR型
メンテナンスフリータイプのLMガイドを使用

⑤豊富なオプション

外周化粧用の巾木や移動・移設を容易にするベースフレームなど、ニーズに合わせたカスタマイズが可能です。これにより、設置場所や運用方法に合わせた最適な免震対策を実現します。
オプション内容:免震装置の外周部化粧用のスライド巾木、搭載物の移動・移設を考慮したベースフレームなどを用意しています。

免震テーブル VIT型と行燈型免震テーブルの採⽤事例

大原美術館様(免震テーブル VIT型をご採用)
岡山県倉敷市にある日本で最初の西洋美術中心の私立美術館として知られています。西洋の名画を多数所蔵していることで有名ですが、日本や東洋の美術品もあり多彩な芸術作品を鑑賞できる場所として多くの人に親しまれています。数々の貴重な美術品の地震対策として「免震テーブル VIT型」をご採用いただきました。

大原美術館様 児島虎次郎記念館に採用された文化財免震テーブル VIT型
大原美術館様 児島虎次郎記念館の免震テーブル採用例

国立工芸館様(行燈型免震テーブルをご採用)
石川県金沢市にあり、日本の伝統工芸や現代工芸作品を展示・保存していることで有名です。金沢市は伝統工芸が盛んな地域であり、その豊かな文化と歴史の中で、訪れる人々に日本の工芸の魅力を伝えています。数々の貴重な工芸品の地震対策として、行燈型免震テーブル*をご採用いただきました。唐澤館長からは、「令和6年(2024年)能登半島地震の際に文化施設で被害が多発した中、当館では免震上の作品が一つも被害が無かったのは免震装置付きの展示ケースのおかげで本当に感謝しています」との御礼の言葉をいただきました。

*免震テーブル VIT型の発売前に、受注製作品として納入させていただいたものになります。

国立工芸館様に採用された行燈型免震テーブル
国立工芸館様の行燈型免震テーブル採用例

ご紹介したのは一例になりますが、免震テーブル VIT型や行燈型免震テーブルは、⽇本にとどまらず世界の博物館や美術館などでも⽂化財を守る手段として採⽤されています。

免震テーブル VIT型の導入方法と使い方

免震テーブル VIT型の導入は非常にシンプルです。まずはTHKにご相談ください。文化財の種類や展示ケースのサイズ、設置場所などを伺い、最適な免震テーブル VIT型をご提案させていただきます。 

導入の流れ

①ご相談・お問い合わせ
まずはお気軽にお問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。専門スタッフが丁寧に対応いたします。 

②ヒアリング・ご提案
お客様の状況を詳しく伺い、最適な免震テーブル VIT型のサイズや仕様をご提案します。展示ケース寸法(幅×奥行)600×600mm、750×750mm、900×900mm、1200×1200mmの4種類から、文化財のサイズに合わせてお選びいただけます。   

③ご注文・納品
ご提案内容に納得いただけましたらご注文いただき、迅速に製品を納品いたします。

④設置
展示ケースの下に設置するだけで完了です。特別な工事は不要です。オプションのキャスターを使用すれば、移動も簡単にできます。

重要な文化財を保護し後世に伝えるために

文化財は、私たちの歴史や文化を物語る貴重な遺産であり、未来へ引き継いでいく責任があります。地震大国である日本において、免震による効果的な地震対策は、貴重な財産を守り、後世に伝えるために不可欠です。また、免震装置が企画展での作品拝借の条件となるケースが増えており、免震対策は文化財の活用という観点でも重要性を増しています。

導入のハードルからこれまで免震対策を諦めていた大切な文化財も、免震テーブル VIT型であれば、地震から守り、確かな形で未来へ引き継ぐことができます。ぜひ、この機会に文化財の新たな地震対策として、THKの免震技術の導入をご検討ください。

「免震テーブル VIT型」に関する詳細はこちら(THK免震ウェブサイト)
「免震テーブル VIT型」のカタログはこちら(PDFファイル)

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