2025年04月30日
製品
航空機の安全を支える!THKの品質保証と実績
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近年、技術の進化とともにさまざまな分野でのイノベーションが加速しています。その中でも特に注目されているのが、ロボティクスやIoT技術の進化です。これらの技術は、スマートファクトリーや自動運転技術、医療機器、再生可能エネルギーなど、多岐にわたる分野での応用が期待されています。一方で、これらの新技術の導入に伴い、製品の品質管理の重要性も増しています。特に航空機市場では、国際的な品質管理システムであるISO 9001をはじめ、より厳しい品質管理基準である航空宇宙防衛品質マネジメントシステムJIS Q 9100が要求されます。THKもまた、このような技術革新と品質管理の重要性を認識し、航空機市場への参入を進めています。今回は、今後の成長が予想される航空機市場の展望とともに、THKの品質管理に関する取り組みや製品開発についてご紹介いたします。
航空機市場の最新動向
最新の航空機市場は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、2020年から2021年にかけて利用者数が急減しました。しかし、経済活動の正常化に伴い、各航空会社の収益は回復し、以前の水準に戻っています。今後は年率3~4%の成長が見込まれており*、2032年までに年平均成長率5~6%で市場が拡大すると予測されています。特に、商業航空機の需要が増加しており、持続可能な航空技術の導入が進行中です。
航空機業界における素材関連の最大の課題は、軽量化と強度・耐久性の両立を図る材料の開発と、製造コストの抑制です。燃費の改善や二酸化炭素排出量の削減が重要視される中、機体の軽量化が求められていますが、それに伴う強度や安全性、耐久性、腐食耐性の確保も不可欠です。また、商業航空機の需要増加が顕著で持続可能な航空技術の導入が進んでいます。さらに、軽量素材や先進的な電子システムの需要が高まっており、航空機の効率性と環境性能の向上が期待されています。これにより、航空機市場では積極的な設備投資が行われる可能性が高く、今後も堅調に成長する見通しです。
*出典:経済産業省 「我が国航空機産業の今後の方向性について」2024年3月27日
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/kokuki_uchu/pdf/2023_001_02_00.pdf
航空機分野における厳格な品質管理
航空機市場向けの製品における品質管理は、安全性と信頼性の確保が極めて重要です。航空機は多くの人命を預かるため、部品やシステムの欠陥が重大な事故につながる可能性があります。そのため、THKでは航空機市場向けの製品に関して以下の項目を厳格に管理しています。
品質マネジメントシステム(QMS)の導入
航空機市場へTHK製品を拡販させるためには、品質要求であるJIS Q 9100(航空宇宙防衛品質マネジメントシステム)の認証が不可欠となります。JIS Q 9100は、ISO 9001をベースに機体メーカーやエンジンメーカーなどが要求する品質項目を追加した品質マネジメントシステムであり、日本では1999年に最初の規格が発行されました。JIS Q 9100の認証を取得することにより、インターネット上に社名が登録され、国際的な認知度の向上と安全基準に適合した製品を示す認証になります。THKのグループ企業であるTHK新潟では、操縦桿用ボールスプラインを対象製品として、2009年にJIS Q 9100の認証を取得し、航空機市場に向けた製品を提供しています。

リスクマネジメント
航空宇宙分野の製品開発においては、顧客要求事項への対応を行う場合にリスクを伴うことがあります。そのため、受注、設計・開発、購買、製造、検査などの運用に関するリスクに限定して、そのリスクの発生確率やその影響度、結果の重大性などの管理を明確にしてリスクアセスメントを実施しています。
キー特性管理
製品のばらつきを管理するため、キー特性の管理*や許容値を設け、必要に応じて製品の各製造工程において検査・記録を行い、不適合品を早期に発見・排除します。初回製品検査(FAI)や最終検査を実施して、製品が設計通りに製造されていることを確認します。
*キー特性の管理:製品の形状、機能、性能、耐用年数、製造性などに重大な影響を与える属性や特性を特定し、そのばらつきを管理すること。
形態管理
対象製品の製品形態(製品仕様書、図面、スペック、部品リストなどの物理的・機能的要求事項)の達成状況を文書化し把握するため、製品に対する形態管理の計画、形態の識別、変更管理、形態状況の報告、形態監査を実施しています。
購買管理
購買要求事項に適合した購買製品を購入するため、供給者が必要な供給能力を有している事を確認しています。供給者に対して技術仕様をまとめた要求仕様書を作成して購買製品に関して必要な管理事項を明確に示し、製品品質および管理要求の実施状況の検証を行っています。
特殊工程管理
溶接、熱処理、めっきなど事後の製品検査や試験では工程の結果が十分に検証できず、設備や要員を含む工程能力の事前認定が必要な特殊工程については、その工程を認定された要員が作業を実行し、工程パラメータの連続的な監視と管理をおこなうことで顧客承認をいただき、品質を保証しています。
トレーサビリティの確保
製品の品質と安全性を確保し、問題発⽣時には迅速に対応するため、製品の識別・履歴追跡・記録管理を⾏い、サプライチェーン全体でのトレーサビリティを確保しています。これにより、各製造⼯程での製品追跡が可能となり、品質と安全性を確保しています。
教育・訓練
製品の品質向上のため、計画的な教育・訓練を実施し、従業員が必要なスキルを習得できるよう⽀援しています。これにより、従業員のスキルと品質意識を⾼め、組織全体の品質向上を実現しています。
継続的改善
製品の品質や製造プロセスの品質・安全性を⾼めるため、PDCAサイクルを活⽤しています。製造プロセスの品質⽬標を設定し、達成状況を評価するとともに、現状分析を通じて改善点を特定し、是正・予防処置を実施しています。これにより、組織全体で品質向上を推進しています。
これらの取り組みにより航空機市場向け開発品の安全性と信頼性を⾼め、顧客満⾜度の向上に努めています。
THK製品の採用事例
THKは創造開発型企業として、これまで工作機械や半導体製造装置、一般産業機器市場向けに機械要素部品や複合ユニットモジュール製品を開発してきました。さらなる事業展開として新規市場を開拓するため、物流や輸送機器、医療機器、EV・再生可能エネルギー関連など多様な分野に製品展開を広げ、航空機市場にも進出しました。独自の強みを活かし、最適なソリューションの提案を行っています。
操縦桿用ボールスプライン
低摺動でコンパクトなロータリーボールスプラインを採用することで軽量化や操縦性の向上に貢献しています。

ランディングギア アクチュエータ用ボールねじ
高品質で信頼性の高い、ランディングギア用のコンパクトなボールねじを提供しています。

シート直線案内部にLMガイド、シート旋回部用にアルミ製の旋回ベアリング
シートのスライド部にミニチュアLMガイドが採用されています。また、シート旋回部には樹脂ボールを採用したアルミ製の軽量旋回ベアリングを提供しています。


テーブル案内部用の有限ダブルスライドガイド、位置保持用クランパ
旅客機のビジネスクラス、ファーストクラスのテーブル周辺部には、高強度・高剛性の有限ダブルスライドガイドが採用されています。また、テーブルなどを任意の位置で簡単にロックできるクランパ(ブレーキユニット)も同箇所に搭載されています。

ギャレーコンテナ取出用のスライドユニット
ダブルコンテナを採用したギャレー向けに、アクセスが困難な奥側のコンテナを引き出すことに特化した、アルミ製の軽量かつ信頼性の高いスライダが採用されています。


機体から座席機構にいたるまでTHKのさまざまな要素部品が航空機に採用されています。私たちはこれからも、燃費向上や、CO2排出量削減など、お客様の課題解決のための製品やサービスを開発、提供いたします。
航空機市場への今後の展望
航空機分野は今後、大きな進化が期待されています。eVTOL(電動垂直離着陸機)においては、都市間移動や物流、緊急搬送など多様な用途での実用化が進んでおり、環境に優しく静かな移動手段として注目されています。また、旅客機では、乗客のプライバシーや快適性の向上を目的とした客室装備品の進化も注目され、スマートキャビン技術や個室型ビジネスクラスの拡充が進むと予想されます。さらに、新興国での航空需要の増加に伴い、特にLCC(ローコストキャリア)に向けた新規装備品の需要が高まることが予想されます。THKは、これらの市場動向や需要に対して、最適なソリューションを提案することで、顧客満足度の向上に貢献していきます。
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