球面軸受の選定
球面軸受は、寸法表に記載されている基本動定格荷重(C)と基本静定格荷重(C0)を目安にして使用条件により、つぎのように選定してください。
球面軸受寿命 G
基本動定格荷重(C)は、軸受が荷重を受けて揺動運動する場合の寿命の算出に使用します。基本動定格荷重は、球面滑り部の接触面圧を基本として算出しています。
球面軸受寿命Gとは、球面滑り部の摩耗によってラジアルすきまの増加、軸受温度の上昇などにより、正常な動作が不可能となるまでの総揺動数で表します。
軸受寿命は、軸受の材質、荷重の大きさと方向、潤滑条件、すべり速度などの多くの要素に影響を受けるため、計算値は経験による実用的な値として使用できます。

G | 軸受寿命 (総揺動数または総回転数) |
---|---|
C | 基本動定格荷重 (N) |
P | 等価ラジアル荷重 (N) |
b1 | 荷重方向係数 (表1参照) |
b2 | 潤滑係数 (表1参照) |
b3 | 温度係数 (表1参照) |
b4※ | 寸法係数 (図1参照) |
b5 | 材質係数 (図2参照) |
Da | 球面径(寸法表参照) (mm) |
β | 揺動半角 (度) (回転運動はβ=90°) |
- ※ Da(球面径)が40以下の場合は、"b4=1"としてください。
形 式 | b1 | b2 | b3 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
荷重方向 | 定期給脂 | 温度 ℃ | ||||||
一定 | 交番 | 無 | 有 | ‒30 | +80 | +150 | ||
+80 | +150 | +180 | ||||||
球面 軸受 |
シール なし |
1 | 5 | 0.08 | 1 | 1 | 1 | 0.7 |
シール 付き |
1 | 5 | 0.08 | 1 | 1 | - | - |

等価ラジアル荷重
球面軸受は、ラジアル荷重とスラスト荷重が同時に負荷できる軸受です。負荷する荷重の大きさと方向が一定であれば、等価ラジアル荷重は次式により求められます。

P | 等価ラジアル荷重 (N) |
---|---|
Fr | ラジアル荷重 (N) |
Fa | スラスト荷重 (N) |
Y | スラスト荷重係数 (表2参照) |
Fa/Fr≦ | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 |
---|---|---|---|---|---|
スラスト荷重係数(Y) | 0.8 | 1 | 1.5 | 2.5 | 3 |
静的安全係数 fS
静止荷重やわずかに揺動する使用条件の場合は、基本静定格荷重(C0)を目安にして選定します。基本静定格荷重は軸受が壊れることなく、スムーズな動作を妨げるような永久変形を起こさずに、負荷できる静止荷重をいいます。
一般的には、軸やハウジングの剛性などを考慮し、静的安全係数は3以上を目安としてください。

fS | 静的安全係数 |
---|---|
C0 | 基本静定格荷重 |
P | 等価ラジアル荷重 |
pV値
球面軸受を使用できる許容すべり速度は、荷重や潤滑状態、冷却状態で変化します。荷重を一定方向から負荷しながら連続運動する場合の推奨pV値はつぎの通りです。

断熱運転または荷重方向が変化する場合は、すべり面に生じた熱が放射されやすいので、さらに高いpV値をとることができます。
球面軸受の接触面圧(p)は次式により求められます。

p | 接触面圧 (N/mm2) |
---|---|
P | 等価ラジアル荷重 (N) |
Da | 球面径(寸法表参照) (mm) |
B | 外輪幅(寸法表参照) (mm) |
すべり速度(V)は次式により求められます。

V | すべり速度 (mm/sec) |
---|---|
β | 揺動半角 (度) |
f | 毎分揺動数 (min‒1) |
揺動運動の場合のすべり速度は100mm/sec、回転運動で潤滑状態が良好ならば300mm/secまで使用することができます。