
地球温暖化対策への社会的関心が高まる中、製造業においてもサプライチェーン全体での脱炭素化、工場からのGHG(温室効果ガス)排出量の削減が喫緊の課題となっています。GHG排出量削減を効果的に進めるためには、まずエネルギー使用量の見える化が不可欠です。しかし、多くの製造現場では「工場全体のエネルギー使用量は分かっているが、ライン単位・設備単位では把握できていない」という状況が一般的です。そのため「どこから優先して省エネ施策を進めれば良いか分からない」「施策を実施しても費用対効果が測れない」といった悩みが生じています。
これらの課題を解決するのが、THKが提供するOMNIedgeの「GXソリューション」です。GXとはグリーントランスフォーメーションの略で、温室効果ガスの排出を削減し、経済成長も両立させることを目指す、社会システム全体の変革を指します。このGXソリューションは手間なく導入でき、工場全体からライン・設備単位までエネルギー使用量を見える化できることが特長です。この記事では、製造業の現場で直面するエネルギーに関する課題にフォーカスしたOMNIedge「GXソリューション」についてご紹介します。
製造業におけるエネルギーマネジメントの課題
多くの製造現場では、工場全体の電力消費量は把握できていても、ライン単位や設備単位までの詳細は見えにくいのが実情です。そのため、エネルギーのどこに無駄が潜んでいるのかを特定できず、対策の優先順位付けが難しくなります。また、省エネ施策を実施しても効果や費用対効果を十分に裏付けるデータが得られず、改善の成果を評価しづらいという課題も少なくありません。結果として、取り組みのスピードや投資判断が遅れがちになる傾向があります。さらに、工場の統廃合や変種変量生産にともなう生産ラインの頻繁な変更などにより、エネルギーマネジメントには、部署や立場ごとに異なる悩みが存在します。
現場担当者・生産技術担当者の視点:迅速な電力使用量の把握が必要
現場では、配線工事が大変で電力監視システムの導入が進みにくい状況です。手作業で電力使用量を集計するのは時間と労力がかかり、効率的とは言えません。また、現場の機器ごとや低圧の設備カテゴリごとに詳細な電力使用量を知りたいというニーズがあります。このような現場の課題を解決するためには、簡単に導入できる電力監視システムが求められています。
経営層(GHG排出量算出担当者)の視点:コストと運用の壁
経営層にとっては、ラインの更新や設備変更が頻繁に発生する現場での対応が大きな課題となっています。電力監視システムを導入したいものの、従来のシステムは高額であり、さらに設備側の通信工事も必要となるため、運用が難しいという現状があります。コストを抑えつつ、柔軟に対応できるソリューションが求められています。
保全・製造担当者の視点:契約超過リスクの回避
保全部門では、電力使用量の監視業務が重要な役割を担っています。設備保全とデマンド監視が両立できず、契約電力の超過が懸念される状況です。特に契約電力の上限が逼迫している状況では、効率的な監視体制の整備が急務となっています。

こうした状況は、グリーントランスフォーメーションを推進するうえで乗り越えなければならない課題となっています。そして、この課題を解消するために開発されたのがOMNIedge GXソリューションです。
OMNIedge GXソリューションとは
OMNIedge GXソリューションでは、立ち上げ工数を大幅に削減しながら、工場全体から工程や設備単位でエネルギー使用量(電気・水・ガスなど)の見える化を支援します。また、THK自社工場で取り組み中のカーボンニュートラルへの施策などで得たKnow-howを元に、省エネを阻害するムダを特定し、戦略的なエネルギーマネジメントもサポートします。
OMNIedge GXソリューションの特長
- かんたん設置
数珠つなぎ式の電力センサで狭い盤内でも省配線・省スペースでの設置が可能。専用の通信回線を使って遠隔から手早く電力使用量を集計することが可能です。 - 設備やラインごとの消費電力量を見える化
工場全体の電力消費量に加えて、センサのグルーピング機能で設備やラインごとの電力消費割合を算出。設備の移設や省エネ設備を導入した際も、投資効果や環境性能を正確に測定できるので、有効な対策の立案に貢献します。 - デマンド(最大需要電力)のリアルタイム監視
あらかじめデマンドしきい値を設定。超過しそうな場合にアプリ画面上でお知らせしてデマンド超過を防ぎます。


OMNIedge GXソリューションがもたらす導入効果
OMNIedge GXソリューションは、先述の部署や立場ごとに異なる悩みを解決します。
現場担当者・生産技術担当者への効果
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現場目線で設計された省配線ハードにより導入負担を大幅軽減
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設備カテゴリごとの電力割合を簡単に算出
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複雑だった電力集計作業の負担を削減
経営層(GHG排出量算出担当者)への効果
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専用通信回線によりネットワーク工事不要
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設備更新や増設時の負担も低減し柔軟な運用が可能
保全・製造担当者への効果
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デマンド監視で契約電力超過リスクを回避
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リアルタイムアラートで迅速な対応が可能
THK山口工場の取り組み
THK山口工場(山口県山陽小野田市)では、GXソリューションの導入により、以下の成果を得ています。
手早く電力使用量を集計
従来は現地での手作業により月1回のデータ取得に留まっていましたが、GXソリューションにより工場全体から設備単位までを遠隔で常時モニタリングすることでデータ取得工数を大幅削減することができました。
運転時間の最適化
取得データを分析し、設備の運転時間を見直しすることで待機電力の削減に成功し、電気料金の低減につながりました。
効果的な設備投資
各コンプレッサーの電力使用量とエアー流量を測定および比較することで、劣化したコンプレッサーを特定できます。さらに更新の優先順位を明確化し、重点的な投資計画を立案しています。
これらの成果は、省エネとコスト削減の両立に直結しており、カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速させています。

導入後も安心のサポート体制
GXソリューションは、単なる製品提供にとどまりません。THK山口工場で培ったカーボンニュートラル施策のKnow-howを基に、導入前後も伴走型で支援します。 「導入したが運用できない」といった事態を避け、確実に成果につなげるためのサポート体制が整っています。
①初回お打ち合わせ
課題のヒアリングやサービスのご紹介、導入推進体制の構築を図ります。
②現場下見/正式お見積
THKの営業・技術員にて確認機器の立ち上げに必要な構成や台数を事前調査します。
(目安工期:約半日)※工場稼働日に実施することが可能です。
③施工
電気工事はお客様にてご手配/実施ください。
工事業者様と工事前のすり合わせ、作業イメージの共有はTHKが伴走します。
(目安工期:約1日~数営業日)
④活用支援
貴社設備名称に合わせてTHKが画面を編集します。操作説明/運用フォローを営業より実施します。

OEE(設備総合効率)最大化プラットフォーム OMNIedgeとは
THKは2020年より、製造現場のロス削減を⽬的としたIoTソリューション「OMNIedge」を展開しています。これは OEE(設備総合効率)最⼤化プラットフォーム として、部品や設備、さらには⼈に関わるロスを削減するためのサービス群を提供してきました。
- 直動・回転部品向けの「部品予兆検知AIソリューション」
- ⼯作機械向けの「⼯具監視AIソリューション」
- 保全業務を最適化する「メンテナンス統合管理システム」
- ⼈のスキルをクラウド上で管理する「スキル管理AIソリューション」
そして、OEE最⼤化の次のテーマとして注⽬されているのが⼯場全体のエネルギーマネジメントです。この課題に応える形で、第6弾となるOMNIedge GXソリューションが誕⽣しました。

OMNIedgeサービスとの融合と今後の展開
OMNIedge GXソリューションのエネルギーデータは、既存の予兆検知AIソリューションと連携することで、設備異常とエネルギーロスの関係性を可視化できます。今後は、「生産実績と電力データの連動による異常検知」「生成AIによる高度な省エネ分析」「省エネ診断機能の拡張」など、工場全体の生産性向上に向けた進化を予定しています。内容については次回以降の記事でご紹介したいと考えています。
省エネの第一歩は「見える化」から
製造業におけるGHG削減の第一歩は、エネルギー使用量を正確に見える化することです。OMNIedge GXソリューションは「すぐに始められる」「手間が少ない」「効果を定量化できる」ことを特長とし、脱炭素経営を目指す製造業の力強いパートナーとなります。まずは、お気軽にお問い合わせください。
「OMNIedge」GXソリューションのカタログはこちら(THKサイト)
THK山口工場に「OMNIedge」GXソリューションを展開~Tエネルギーロスを削減してカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速~(ニュースリリース)
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