定格荷重と定格寿命

定格荷重

ST形の定格荷重は寸法表中に記載されています。

定格寿命の算出

ST形の定格寿命は次式により求められます。

L10 定格寿命 ( rev.)
(一群の同じLMストロークを同じ条件で個々に運動させたうち、90%がフレーキングをおこすことなく到達できる総回転数)
C 基本動定格荷重 (N)
Pc 計算ラジアル荷重 (N)

使用条件を考慮した定格寿命の算出

実際の使用では稼動中に振動や衝撃を伴う場合が多いため、LMストロークへの作用荷重の変動が考えられ正確に把握することは容易ではありません。また、転動面の硬さや使用環境温度、LMストロークを密着に近い状態で使用する場合も寿命に大きく影響します。これらの条件を考慮すると、次式(2)により使用条件を考慮した定格寿命(L10m)を算出することができます。

使用条件を考慮した係数α
α 使用条件を考慮した係数
fH 硬さ係数 (下記図2参照)
fT 温度係数 (下記図3参照)
fC 接触係数 (下記表1参照)
fW 荷重係数 (下記表2参照)
使用条件を考慮した定格寿命 L10m
L10m 使用条件を考慮した定格寿命 ( rev.)
C 基本動定格荷重 (N)
PC 計算ラジアル荷重 (N)
外筒1個でモーメント負荷の場合

外筒1個でモーメントを負荷する場合は、モーメントを負荷したときの等価ラジアル荷重を算出します。

Pu 等価ラジアル荷重 (N)
(モーメント負荷による)
K 等価係数 (下記表3~表4参照)
M 負荷モーメント (N・mm)

ただし、Puは基本静定格荷重(C0)内とする。

モーメントとラジアル荷重を同時負荷の場合

モーメントとラジアル荷重を同時負荷の場合は、ラジアル荷重と等価ラジアル荷重の総和より寿命を算出します。

寿命時間の算出

定格寿命(L10)が求められると、毎分回転数、毎分往復回転数およびストローク長さが一定の場合、次式により寿命時間が求められます。

回転または複合運動の場合
往復運動の場合
Lh 寿命時間 (h)
n 毎分回転数 (min‒1
n1 毎分往復回数 (min‒1
s ストローク長さ (mm)
dm ボールのピッチ円径 (mm)
( dm≒1.15×dr)
dr ボール内接円径 (mm)
α ケージの材質による係数
(α=0.7)

回転と往復速度の許容値

ST形の許容限界速度は次式により求められます。

この場合DN値は潤滑状態により下記の値を基準とします。

油潤滑の場合 DN=600000
グリース潤滑の場合 DN=300000

ただし、つぎの点を考慮願います。
n   ≦5000
S・n1≦50000

fH : 硬さ係数

ST形の負荷能力を十分発揮させるためには、転動面の硬さを58~64HRCとする必要があります。
この硬さより低い場合、基本動定格荷重および基本静定格荷重が低下しますので、それぞれに硬さ係数(fH)を乗じます。
通常、ST形は十分な硬さが確保されているのでfH=1.0になります。

fT : 温度係数

ST形を使用する使用環境が100℃をこえるような高温の場合は、高温による悪影響を考慮して図3の温度係数を乗じます。

注) 使用環境温度が80℃をこえる場合はTHKにお問い合わせください。

fc : 接触係数

ST形の外筒を密着状態で使用する場合では、モーメント荷重や取付面精度が影響し、均一な荷重分布を得ることが難しいため、複数の外筒を密着使用する場合は、表1の接触係数を基本定格荷重(C)、(C0)に乗じてください。

注) 大型の装置に不均一な荷重分布が予想される場合は右記の接触係数を考慮してください。

表1   接触係数(fC
密着時の外筒数 接触係数 fc
2 0.81
3 0.72
4 0.66
5 0.61
通常使用 1
fw : 荷重係数

一般的に往復運動をする機械は運転中に振動や衝撃を伴うものが多く、特に高速運転時に発生する振動や、常時繰返される起動停止時の衝撃などのすべてを正確に求めることは困難です。従って、速度・振動の影響が大きい場合は、経験的に得られた表2の荷重係数を基本動定格荷重(C)に除してください。

表2   荷重係数(fw
振動・衝撃 速度(V) fw
微速の場合
V≦0.25m/s
1~1.2
低速の場合
0.25<V≦1m/s
1.2~1.5
中速の場合
1<V≦2m/s
1.5~2
高速の場合
V>2m/s
2 ~3.5