チェンジナットの選定
動的許容トルクTと動的許容推力F
動的許容トルク(T)、動的許容推力(F)とは軸受の歯面に作用する接触面圧が9.8N/mm2となるときのトルク、推力を示します。この値はチェンジナットの強度の目安として使用します。
fS: 安全係数
チェンジナットに作用する荷重を計算する場合には物体の重量、運動速度によって変化する慣性力の影響などを正確に求める必要があります。一般的に往復または回転運動する機械では、常時繰返される起動停止時の衝撃などのすべてを正確に求めることは容易ではありません。従って実際の荷重が得られない場合は、経験的に得られた表1の安全係数(fS)を考慮して軸受を選定する必要があります。
荷重の種類 | fSの下限 |
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使用頻度の少ない静荷重のとき | 1~2 |
一般的な一方向荷重のとき | 2~3 |
振動・衝撃を伴う荷重のとき | 4以上 |
fT: 温度係数
チェンジナットの温度が常温の範囲をこえると、耐焼付性および素材の強度が減少してくるので、図2の温度係数を動的許容トルク(T)、動的許容推力(F)に乗ずる必要があります。
注) ミニチュアチェンジナットの場合、60℃以下でご使用ください。
以上より、チェンジナットを選定する場合に、強度上からつぎの式を満足させる必要があります。
動的許容トルク(T)
動的許容推力(F)
fS | 安全係数 (表1参照) |
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fT | 温度係数 (図1参照) |
T | 動的許容トルク (N・m) |
PT | 負荷トルク (N・m) |
F | 動的許容推力 (N) |
PF | 軸方向荷重 (N) |
表面硬さと耐摩耗性
軸の硬さはチェンジナットの耐摩耗性に大きく影響します。図3のように硬さが250HV以下になると摩耗が多くなります。また表面粗さはRa0.8以下が望まれます。
専用転造軸は、転造の加工硬化により表面硬さは250HV以上、表面粗さはRa0.2以下に仕上げられているので耐摩耗性に優れています。
pV値
すべり軸受では接触面圧(p)とすべり速度(V)の積であるpV値を使用できるかどうかの目安とします。チェンジナットの選定の目安として図1のpV値をご参照ください。なおこのpV値は潤滑条件によっても変わります。
接触面圧pの算出
pの値はつぎのように求めます。
軸方向荷重が作用している場合
p | 軸方向荷重(PFN)による歯面の接触面圧 (N/mm2 ) |
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F | 動的許容推力 (N) |
PF | 軸方向荷重 (N) |
トルクが負荷している場合
p | 負荷トルク(PTN・m)が加わった時の歯面の接触面圧 (N/mm2) |
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T | 動的許容トルク (N・m) |
PT | 負荷トルク (N・m) |
歯面すべり速度Vの算出
Vの値はつぎのように求められます。
V | すべり速度 (m/min) |
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Do | 有効径(寸法表参照) (mm) |
n | 毎分回転数 (min-1) |
S | 送り速度 (m/min) |
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R | リード (mm) |