ボールスプラインの予圧は、精度、耐荷重や剛性に大きく影響するため、使用用途に応じた適切なすきまを選定する必要があります。
すきまの値は、それぞれの形式ごとに規格化されているため、使用条件に合わせたすきまの選定が行えます。

回転方向すきま

ボールスプラインでは、円周方向のすきまの総和を回転方向すきまとして規格化しています。特に、回転トルクを伝達することに適したLBS形、LT形は、回転方向すきまで規定しています。

予圧と剛性

予圧(プリロード)とは、アンギュララッシ(回転方向すきま)をなくし、剛性を高めることを目的として、あらかじめボールに与える荷重をいいます。 ボールスプラインは、予圧を与えることにより、その予圧量に応じてアンギュララッシをなくし、剛性を高めることができます。 図6に回転トルクを与えた場合の回転方向の変位量を示します。
このように、予圧の効果は予圧荷重の2.8倍まであり、予圧のない場合と比べて同一回転トルクに対する変位量は1/2以下となり、剛性は2倍以上となります。

使用条件と予圧の選定目安

表18に、ボールスプラインの使用条件による回転方向すきまの選定の目安を示します。
ボールスプラインの回転方向すきまは、スプラインナットの精度や剛性に大きな影響を与えるため、用途に応じて適切なすきまを選定することが重要です。 一般的には予圧を与えたものが使用されており、繰り返し旋回運動や往復直線運動の場合は大きな振動衝撃が作用するため、予圧を与えた方が寿命および精度の向上が著しくなります。

表18 ボールスプラインの回転方向すきまの選定目安
回転方向すきま 使用条件 適用例
普通(無記号)
  • 小さな力でスムーズに駆動させたい箇所
  • トルクが常時一定方向に負荷する箇所
  • 各種計測器
  • 自動製図機
  • 形状測定器
  • 動力計
  • 捲線器
  • 自動溶断機
  • ホーニング盤主軸
  • 自動包装機
軽予圧(CL)
  • オーバーハング荷重や、モーメントのかかる箇所
  • 高い繰り返し精度を必要とする箇所
  • 交番荷重がかかる箇所
  • 工業用ロボットアーム
  • 各種オートローダ
  • 自動塗装機ガイド軸
  • 放電加工機主軸
  • プレスダイセットガイド軸
  • ボール盤主軸
中予圧(CM)
  • 強度の剛性を必要とし、振動衝撃がかかる箇所
  • スプラインナット1個でモーメント荷重を受ける箇所
  • 建設車輌ステアリング軸
  • スポット溶接機軸
  • 自動盤刃物台インデックス軸