2025年09月24日
製品
「軽量、コンパクト、でも高性能!」ボールスプラインの最新技術
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ボールスプラインについて過去2回にわたりご紹介しました。第一弾では、直動部品の案内方式の基礎知識とボールスプラインの採用による精度維持、耐久性向上、コストダウンというメリットについて、第二弾では、お客様の装置に最適なボールスプラインをカスタマイズすることで装置性能を向上させる方法と採用事例をご紹介しました。第三弾となる今回は、コンパクト化・軽量化を実現した最新のボールスプラインについてご紹介します。
第一弾の記事:「摩耗が早い・精度が出ない」その課題を転がり案内のボールスプラインで解決!第二弾の記事:「標準品だけが正解じゃない!」ボールスプラインのカスタマイズで最大限の性能を引き出す方法
なぜコンパクト化・軽量化が求められるのか?
昨今、人件費や原材料の高騰などにより、製造業では生産性の向上が求められています。しかし、装置の設置スペースに制約がある企業も多く存在し、製造現場のスペースを可能な限り有効活用することが求められています。そのためにはコンパクトな装置設計は不可欠です。また、コンパクトな装置設計は省スペースに寄与するだけではなく、基幹部の軽量化によってモータの負担を軽減し、高速動作が可能になることで生産性の向上につながります。
さらに、面積当たりの生産性が向上するだけでなく、材料費や輸送コストの削減が可能です。
最近ではSDGsの目標を掲げている企業が多く、その目標達成に向けて省エネルギー化や環境問題に配慮した装置設計が求められています。従来装置の見直しによる基幹部の軽量化は、装置の消費電力を削減することに繋がります。そのため、コンパクトな基幹部の設計は生産性向上や環境対応を実現する上で重要な要素となります。

最新のコンパクトボールスプラインとは?
THKはコンパクト化・軽量化のニーズに応えるため、ボールスプラインの最新技術を多数採用したコンパクトボールスプラインLT-X形、LF-X形、LTR-V形をリリースしました。本製品の特長とその最新技術の一部をご紹介します。


1. コンパクト化・軽量化
従来のボールスプラインのボール循環経路を見直したことで、既存形番と比較し外径がコンパクトになりました。既存形番比で最大20%のコンパクト化を実現しています。これにより、装置の基幹部のコンパクト設計を実現できます。

また、サポートベアリングが組み込まれたロータリーボールスプラインLTR-V形はボールスプライン部にLT-X形を採用することで、既存形番と比較し、最大46%の軽量化を実現しました。これにより、慣性モーメントが低減され、素早い起動と鋭い停止が可能となり、高速動作やタクトタイム短縮に貢献します。

2. 高速化・滑らかな動作
新たに設計された循環経路によって最適なボール循環を実現し、高速動作が可能になりました。下記の試験条件で10,000km走行後、異常がないことを確認しています。また、既存形番と比較して摺動抵抗の変動が減少したことで、滑らかな動作を実現しました。
高速耐久試験条件
項目 |
内容 |
---|---|
使用形番 | LT20X |
速度 | 2m/s |
加減速 | 40m/s2 |
潤滑剤 | リチウム石けん基グリース(AFB-LFグリース) |
ストローク | 650mm |
姿勢 | 水平 |
摺動抵抗値測定試験条件
項目 |
内容 |
---|---|
速度 | 10mm/s |
潤滑剤 | リチウム石けん基グリース(AFB-LFグリース) |
姿勢 | 水平 |

3. 豊富なラインナップ
コンパクトボールスプラインシリーズは、前述のLT-X形、LF-X形、ロータリーボールスプラインLTR-V形に加え、お客様のさらなるコンパクト化のニーズにお応えするべくLFK-X形、LFH-X形もラインナップしています。

LFK-X形、LFH-X形はLF-X形と比較し、芯高さが低く設計されており、取付周辺部品のさらなるコンパクト化が可能です。また、丸フランジ形状のLF-X形と比較し、角フランジ形状のLFK-X形と小判形フランジ形状のLFH-X形は質量がさらに軽量化されています。これにより、装置のさらなる軽量化に貢献します。


4. メンテナンス間隔の大幅な延長
オプションとして潤滑装置QZを選択いただけます。潤滑装置QZは、スプラインナットの両端に装着する潤滑部品で、内部に貯油された潤滑油をスプライン軸の転動溝に適切な量だけ供給します。これにより、損失した油分を補充し、ボールと転動溝の間に常に油膜が形成され、潤滑メンテナンス間隔の大幅な延長が可能となります。
さらに、適切な量の潤滑油を転動溝に供給するため、周囲を汚さない環境に配慮した潤滑システムです。

【導入事例】コンパクト化・軽量化による事例
コンパクトボールスプラインの導入事例をご紹介します。
事例①:産業用ロボットの軽量化を検討していたロボットメーカーでは、アームのスライド機構にコンパクトボールスプラインLF-X形を採用し、20%の軽量化を実現しました。軽量設計により慣性を低減し、高速・高加減速を実現することが可能です。また駆動モータの負担が減るため、消費電力の削減にも成功しました。
事例②:半導体製造装置において、微細な位置決めが求められる部分にコンパクトボールスプラインLT-X形を採用したことで、装置の小型化・高速化・集積化が可能になり、実装精度向上に貢献しました。また、オプションの潤滑装置QZを組付けることで潤滑メンテナンス間隔を大幅に延長することが可能になりました。このように、軽量で高精度な位置決めを実現し、装置自体の精度向上に貢献します。
その他にも、搬送装置であれば省スペースでスムーズな直線移動の実現に貢献するなど、さまざまな用途で活用いただけます。
生産性の向上に貢献!
今回は、コンパクト化・軽量化を実現したボールスプラインをご紹介しました。装置のコンパクト化・軽量化においてお困りごとがありましたら、ぜひお問い合わせください。カスタマイズなど、お客様のご要望に合わせてご提案をさせていただきます。
また、2025年10月1日 ~ 2025年10月3日で開催される機械要素技術展 [大阪] にも出品します。ぜひ会場にて実際にご覧いただければ幸いです。
LF-X形 / LF-XL形の詳細はこちら(THKサイト)
LFK-X形の詳細はこちら(THKサイト)
LFH-X形の詳細はこちら(THKサイト)