特長

直動案内面に要求される機能
許容荷重が大きい すきまがなく軽く動く
あらゆる方向に高い剛性がある 高速性に優れている
位置決め精度が高い メンテナンスを楽にしたい
走り精度が出しやすい 様々な環境下で使用したい
長期間高精度を維持できる
LMガイドの特長
許容荷重が大きく高剛性
取付面の誤差を吸収する精度平均化効果
理想的な4列サーキュラーアーク溝2点接触構造
DF構造を採用した優れた誤差吸収能力
低い摩擦係数
豊富なオプション(潤滑装置QZ・接触式スクレーパLaCSなど)

その結果

メンテナンスが簡単
装置の生産性が向上
大きな省エネルギ効果
トータルコストが安い
機械の高精度化
機械設計の効率化

許容荷重が大きく高剛性

大きな許容荷重

LMガイドは、ボール径に近似したR溝形状のため、リニアブッシュなどと比較すると大きな差があります。図1に示すような基本動定格荷重の値が近似したLMガイドとリニアブッシュを比較すると、大きさに格段の差があるため、LMガイドを使用することにより大幅なコンパクト化が可能になります。
この理由は、表1 に示すようにR溝接触(ボール径の52%のR)の場合と、平面接触の場合では、ボール1個あたりの許容荷重に13倍の差があるからです。ボール1個の許容荷重が13倍になると、寿命はその3乗に比例するので、寿命比では約2200倍となります。

表1  ボール1個の負荷能力(P)、(P1)
許容接触面圧4200MPa

R溝の場合のP

平面の場合のP1

P/P1

φ3.175(1/8")

0.90 kN

0.07 kN

13

φ4.763(3/16")

2.03 kN

0.16 kN

13

φ6.350(1/4")

3.61 kN

0.28 kN

13

φ7.938(5/16")

5.64 kN

0.44 kN

13

φ11.906(15/32")

12.68 kN

0.98 kN

13

高剛性

LMガイドは、上下、左右からの荷重を負荷することができます。また、溝形状はサーキュラーアーク溝のため、必要に応じて予圧をかけることができ剛性を上げることが可能です。
送りねじ軸系やスピンドルと剛性を比較してみると、LMガイドを使用した場合の案内面は高い剛性値を持っていることがわかります。

LMガイド、送りねじ軸系、スピンドルの静剛性比較例

(主軸モータ7.5kWの立形マシニングセンタ)

[構成部品]

LMガイド

:

SVR45LC/C0
(C0すきま:予圧荷重=11.11kN)

ボールねじ

:

BNFN4010-5/G0
(G0すきま:予圧荷重=2.64kN)

スピンドル

:

汎用切削用スピンドル

表2  静剛性比較
単位:N/µm

構成部品

X軸方向

Y軸方向

Z軸方向

LMガイド

2400

9400(ラジアル)

7400(逆ラジアル)

ボールねじ

330

スピンドル

250

250

280

  • 注) 送りねじ軸系の剛性は、軸端末支持軸受等の剛性も含む。

高い運動精度

ロストモーションが小さい

LMガイドは、理想的な転がり案内のため、動摩擦と静摩擦の差が小さく、ロストモーションなどほとんど生じません。

表3  ロストモーション比較
単位:µm

種類

すきま

試験方法

JIS B 6330による

最小設定単位送りによる方法

10mm/min

500mm/min

4000mm/min

LMガイド( HSR45)

C1 すきま 下表)

2.3

5.3

3.9

0

C0 すきま 下表)

3.6

4.4

3.1

1

角スライド

+ターカイト

0.02mm

10.7

15

14.1

14

0.005mm

8.7

13.1

12.1

13

LMガイドのラジアルすきま
単位:µm

記号

C1

C0

ラジアルすきま

-25〜-10

-40〜-25

高い走り精度

LMガイドを使用すると、高い走り精度が得られます。

長期間高精度を維持

LMガイドは、理想的な転がり案内のため摩耗が極めて少なく、長期間使用しても精度変化がおこりません。図6に示すように、予圧をかけ、荷重を負荷させて使用した場合、2000km稼働後も予圧残存率は90%以上になります。

[使用条件]

使用形番

:

HSR65LA3SSC0+2565LP-Ⅱ

ラジアルすきま

:

C0(予圧荷重:15.7 kN)

ストローク

:

1050mm

速度

:

15m/min(両端で5秒間停止)

早送り時定数

:

300ms(加速度:α=0.833m/s2)

質量

:

6000kg

駆動

:

ボールねじ

潤滑

:

リチウム石けん基グリース2号
(100km毎給脂)

取付面の誤差を吸収する精度平均化効果

LMガイドは、真球度の高いボールが組込まれており、すきまのない拘束構造をとっています。その上、LMレールを多軸で組合わせて並列使用することにより、多軸拘束の案内構造が形成されるので、LMガイドが取付けられるベース加工、組付けから生じる真直度、平坦度、平行度などのミスアライメントを平均化して吸収する特性があります。
平均化効果の量は、ミスアライメントの長さや大きさ、LMガイドの予圧量、多軸拘束の数などにより異なった値を示します。図8に示すようなテーブルでミスアライメントをどちらか一方のLMレールに与えたときの、ミスアライメントの量と実際のテーブルの運動精度(左右方向の真直度)を 図9 に示します。
このような、平均化による特性を応用することにより、容易に高い運動精度を持つ案内構造をとることが可能になります。

ラフなフライス加工の取付面の精度でも、LMガイドを取付けることにより、テーブル上面での走り精度は、大幅に向上します。

取付例

取付面精度(a)とテーブル走り精度(b)を比較すると下記のようになります。

上下方向

92.5µm

15µm

=

1/6

左右方向

28µm

4µm

=

1/7

表4  取付面精度実測値
単位:µm

方向

取付面

真直度

平均(a)

上下

底面

A

80

92.5

B

105

左右

側面

C

40

28

D

16

表5  テーブル走り精度実測値(図10、 図11測定による)
単位:µm

方向

測定点

1

2

3

4

5

6

7

8

真直度(b)

上 下

0

+2

+8

+13

+15

+9

+5

0

15

左 右

0

+1

+2

+3

+2

+2

-1

0

4

メンテナンスが簡単

LMガイドは、すべり案内のように摩耗が生じませんので、偏摩耗による摺動面の再調整作業や、精度の再調整などが不要です。また潤滑も、すべり案内の場合は常に摺動面に油膜を形成させる必要があるため、多量の潤滑油を強制潤滑させる必要がありますが、LMガイドを使用した場合、少量のグリースなどを定期的に給脂するだけですみますので、メンテナンスが簡単であると同時に作業環境の清浄化にも貢献します。

大きな省エネルギー効果

表6 に示すように、LMガイドには大きな省エネルギー効果があります。

表6  すべりと転がり特性比較データ

機 械 仕 様

機種

1軸平面研削盤(すべり案内)

3軸平面研削盤(転がり案内)

全長×全幅

13m×3.2m

12.6m×2.6m

総質量

17000kg

16000kg

テーブル質量

5000kg

5000kg

研削面積

0.7m×5m

0.7m×5m

テーブル案内部

V-V案内によるすべり

LMガイド組付けによる転がり

砥石軸数

1軸(5.5kW)

3軸(5.5kW+3.7kW×2)研削能力3倍

テ ー ブ ル 駆 動 仕 様

比率

使用モータ

38.05kW

3.7kW

10.3

駆動油圧

ボア径Φ160×1.2MPa

ボア径Φ65×0.7MPa

-

推力

23600N

2270N

10.4

消費電力

38kWH

3.7kWH

10.3

駆動油圧油 消費量

400/年

250/年

1.6

潤滑油 消費量

60 /年(油)

3.6 /年(グリース)

16.7

トータルコストが安い

LMガイドは、すべり案内と比べて機械を組立てる際の手間や熟練を要する調整作業などを省くことができるので、組立工数が減少し、機械・装置のローコスト化に貢献します。例として下記に実際にマシニングセンタをLMガイドにした場合とすべり案内にした場合の組立手順の差を示します。本来、研削加工をしなければならない場合の使用でも、フライスやプレーナによる加工で高精度を出すことができるので、加工工数の削減・加工コストの低減が可能です。

マシニングセンタの組立手順

LMガイド使用の場合 角ガイド使用の場合(すべり案内)

また、走り精度など特に高精度を必要としない場合、黒皮の状態でLMガイドを取付けて使用することができます。

理想的な4列サーキュラーアーク溝2点接触構造

LMガイドは他社製品にない自動調整能力があります。
この特性は、理想的な4列サーキュラーアーク溝2点接触構造より生まれます。

LMガイドと類似品の特性比較

LMガイド 4列サーキュラーアーク溝2点接触構造 他製品2列ゴシックアーチ溝4点接触構造

LMガイド HSR形

2列ゴシックアーチ溝形

図12、 図13 に示すように、ボールが1回転すると内側接触径の円周長さ(πd1)、外側接触径の円周長さ(πd2)との差だけすべりを生じます。(このすべりを差動すべりと呼んでいます。)この差が大きいとボールはすべりながら回転することになり、摩擦係数が数十倍と大きくなり、摩擦抵抗が急激に増加します。

4列サーキュラーアーク溝2点接触構造

2列ゴシックアーチ溝4点接触構造

軽快な動き

予圧をかけた場合や、荷重が加わった状態でも、 図12、 図13 のように荷重方向に2点接触するので、d1とd2の差が小さく、差動すべり量が少なく良好な転がり運動が得られます。

図12、 図13 のように接触面のd1とd2の差が大きく、以下のような場合などには、ボールに差動すべりが生じ、すべり抵抗に近い大きな摩擦が発生するため、異常摩耗により寿命が短くなります。
(1) 予圧をかけた場合
(2) 横方向の荷重が加わった場合
(3) 2軸以上の取付時に平行度が悪い場合
(4) スピン現象が発生した場合

取付面の精度

4列のサーキュラーアーク溝に適切な接触角を与えた理想的な2点接触の構造で、ボールの弾性変形と接触点の移動により取付面の狂いが多少あってもLMブロック内部で吸収し、無理のないスムーズな運動が得られます。これにより、搬送装置のような箇所には高い剛性と精度をもった強固な取付ベースを必要としません。

ゴシックアーチ溝では、ボールが4点接触しボールの弾性変形が阻害され、接触点の移動ができないので(自動調整能力がない)取付面の狂いや軌道台の精度誤差を吸収できず、スムーズな運動が得られません。従って、高剛性の取付ベースを高精度に加工し、さらに高精度のレールを取付ける必要があります。

剛性

2点接触のため、十分な予圧をかけても、異常な転がり抵抗の増加を示さず、高剛性が得られます。

4点接触による差動すべりの発生のため、十分な予圧をかけられず高剛性が得られません。

定格荷重

ボール転動面の曲率半径は、ボール径の51%〜52%なので大きな定格荷重が得られます。

ゴシックアーチ溝の曲率半径は、ボール径の55%〜60%と大きくせざるを得ないので、サーキュラーアーク溝に比べ定格荷重は約50%に減少します。

剛性の差

図14 に示すように、曲率半径の違いや予圧の違いにより剛性が大きく変化します。

曲率半径と剛性

寿命の差

ゴシックアーチ溝は、サーキュラーアーク溝のものと比較すると定格荷重が約50%に減少するので、寿命では87.5%も減少してしまいます。

取付面の精度誤差と転がり抵抗テストデータ

接触構造の差は転がり抵抗として現れます。
ゴシックアーチ溝を使用した接触構造は、剛性を上げるために予圧を与えた場合や、取付精度が出ていない場合、ボールが4点接触し、差動すべりやスピン現象が発生します。これにより転がり抵抗が急激に増加、早期異常摩耗を生じます。
4列サーキュラーアーク溝2点接触構造のLMガイドと、2列ゴシックアーチ溝4点接触構造品とを実際に比較した実験データをつぎに示します。

【試料】

(1)

LMガイド

SR30W(自動調整形)

2セット

HSR35A(4方向等荷重形)

2セット

(2)

2列ゴシックアーチ溝品

HSR30類似寸法品

2セット

【条件】

ラジアルすきま:±0µm
シールなし
潤滑なし
負荷:テーブル質量30kg

データ1:予圧量と転がり抵抗

予圧を与えると、ゴシックアーチ溝品は転がり抵抗が急激に増加し、差動すべりが生じていることがわかります。LMガイドは予圧を与えても、異常な転がり抵抗の増加を示しません。

データ2:2軸平行度の誤差と転がり抵抗

図15 のように平行に取付けたレールの一部を平行移動させ、その位置の転がり抵抗を測定します。ゴシックアーチ溝品は平行度が0.03mmの狂いを生じたとき34N、0.04mmで62Nを示し、これはすべりの摩擦係数と同等であり、すべり接触していることがわかります。

データ3:上下レベルの変化と転がり抵抗

片側レールの底面の位置をSだけ移動し、2軸のレベルを変化させ、その時の転がり抵抗を測定します。上下のレベルがでていない場合は、LMブロックにモーメントが作用し、ゴシックアーチ溝の場合はスピン現象が生じます。サーキュラーアーク溝のLMガイドは上下のレベル差が0.3/200mmでも誤差を吸収し、転がり抵抗が大きく上昇しないことが分かります。

DF構造による優れた誤差吸収能力

LMガイドは、アンギュラ玉軸受の正面組合わせと同様な接触構造を持つため、自動調整能力を有します。

平面に取付けられる直動ボールガイドには、平面度の狂いやレベルの誤差、テーブルのたわみなどにより、モーメント(M)が作用するため自動調整能力が不可欠です。

LMガイド HSR形

他社 類似品

軸受の作用点距離が小さいため、取付誤差により生ずる内部荷重は小さく、軽く動きます。

軸受の作用点距離が大きいため、取付誤差により生ずる内部荷重が大きく、自動調整能力が小さくなります。背面組合わせを持つ直動ボールガイドは、平面の狂いやテーブルのたわみがあると、ブロックに作用する内部荷重が正面組合わせ構造にくらべ約6倍となり、寿命が極端に短くなります。また摺動抵抗の変化が大きくなります。