
切削加工におけるチッピングについて
切削加工におけるチッピングは、工具の刃先が微小な破片として欠ける現象を指します。
チッピングは、特に硬い材料を加工する際や高い切削速度での作業中に頻繁に発生します。
チッピングが発生すると加工精度の低下や工具寿命の短縮を引き起こすため、適切な対策が必要です。
この記事では切削加工におけるチッピングの原因と、その対策について解説します。
摩耗とチッピングの違い
摩耗とチッピングは似ているようで異なる現象です。
摩耗は工具が使用される過程で徐々に削れていく現象であり、通常は長期間の使用によって発生します。
一方、チッピングは突然発生する小さな欠けであり、特定の条件下で急速に進行することが特徴です。
チッピングの原因とは?
チッピングの主な原因として、以下が挙げられます。
高速切削
切削速度が速いと、工具の刃先に過剰な熱と力が加わります。
これにより工具の材料が急速に摩耗し、刃先が脆くなります。
特に硬い材料を高速で切削する場合、工具の負荷が急激に増大し、刃先が欠けやすくなります。
適切な切削速度を設定することは工具の寿命を延ばし、チッピングの発生を防ぐために重要です。
不適切な切削条件
切削条件には、切削深さや送り速度などが含まれます。
これらが適切でない場合、工具に過度なストレスがかかります。
例えば、切削深さが深すぎると、工具の刃先に過剰な力が加わり、チッピングが発生しやすくなります。
また、送り速度が速すぎると、工具が材料に対して適切に切り込むことができず、刃先が欠ける原因となります。
適切な切削条件を設定することで、工具の負荷を軽減し、チッピングを防ぐことができます。
工具の材質
工具の材質が加工する材料に適していない場合、チッピングが発生しやすくなります。
例えば、硬度が高い材料を加工する際には耐摩耗性のある工具材質の選定が必要です。
逆に、柔らかい材料を加工する場合には、適度な硬度と靭性を持つ工具が求められます。
工具材質の選定を誤ると、加工中に刃先が脆くなり、チッピングが発生します。
加工する材料に適した工具材質を選ぶことが重要です。
工具の設置不良
工具が正しく設置されていない場合、振動や不安定な動作が発生しやすくなります。
これにより、工具の刃先に不均一な力が加わり、チッピングが発生します。
例えば、工具ホルダーがしっかりと固定されていない場合や、工具が正しい位置にセットされていない場合、
加工中に振動が発生し、工具の刃先が欠ける原因となります。
チッピンングの防止には工具の設置を正確に行い、振動や不安定な動作を防ぐことが重要です。
冷却不足
切削中の冷却が不十分な場合、工具が過熱しやすくなります。
過熱した工具は、材料との接触によってさらに温度が上昇し、刃先が脆くなります。
これによりチッピングが発生しやすくなります。
特に高い切削速度や深い切削条件で作業を行う場合、適切な冷却が不可欠です。
冷却液を適切に供給し、工具の温度を管理することで、チッピングの発生を防ぐことができます。
これらの原因に対する理解を深めることで、適切な対策を講じ、工具のチッピングを効果的に防止することが可能となります。
チッピングにより生じる影響
チッピングにより以下のような影響が生じます。
加工精度の低下
チッピングが発生すると、工具の刃先が欠けるため、加工面が粗くなります。
加えて加工寸法が不正確になり、設計通りの寸法を維持することが難しくなるほか、加工中に材料が不均一に削られて形状が歪む可能性があります。
工具寿命の短縮
チッピングが発生すると、工具の刃先が早期に破損し、工具寿命が大幅に短縮されます。
工具寿命の短縮によって頻繁に工具を交換すると工具の購入コストが増加するほか、
工具の突発破損によって予期せぬダウンタイムが発生して生産計画へも影響を及ぼします。
生産効率の低下
チッピングが発生すると、工具の交換や再設定が必要となり生産ラインの停止時間が増加します。
その他、新しい工具を設置する際に再設定する時間と労力がかかり、生産スケジュールそのものにも影響を及ぼします。
コストの増加
チッピングにより、工具の交換が必要となるため、購入コストが増加します。
その他、加工精度が低下した製品を再加工するためのコスト、生産ラインの停止時間が増加によるダウンタイムコストなどが挙げられます。
これらのコスト増加により、全体の生産コストが上昇し、利益率が低下する可能性があります。
チッピング発生の対策方法
チッピングを防止する際には以下の要素の見直しが重要です。
切削条件
硬度の高い材料には低速で、柔らかい材料には高速で切削するのが一般的です。また、切削深さを適切に設定することで、工具への負荷を均等に分散させることができます。
送り速度が速すぎる場合、工具の刃先に過剰な力が加わり、チッピングを引き起こす可能性があります。
工具材質/コーティング
例えば、硬度の高い材料を扱う際には超硬合金やダイヤモンド工具を選定するなど、加工する材料に適した工具材質を選ぶことが重要です。
耐摩耗性が高い工具は長寿命ですが、靭性が不足するとチッピングが発生しやすくなるため注意が必要です。
また、工具に適切なコーティングを施すことで、耐摩耗性や耐熱性を向上させます。
コーティング例:TiN(チタン窒化物)やTiAlN(チタンアルミ窒化物)など
工具の取り付けと固定方法
工具ホルダーの選定では、工具に適したホルダーを選び、しっかりと固定することが重要です。不適切なホルダーは工具の振動やチッピングの原因となります。正確な位置合わせも重要で、位置が不正確だと不均一な力が加わり、工具が不安定になります。工具をホルダーに取り付ける際には、適切な締め付け力を管理し、弱すぎると工具が動き、強すぎると工具が変形する可能性があります。
工具の冷却方法
加工する材料や工具に適した水溶性や油性クーラントを選ぶことでチッピングを防止できます。冷却液の供給量が不足すると工具が過熱しチッピングの原因となります。冷却液の供給方法も重要で、適切な位置に供給し、スプレーノズルやミスト冷却などを選びます。
工具交換/点検頻度
刃先やホルダーの状態を定期的に確認し、異常があれば早期に交換することはチッピングの予防につながります。また、点検結果を記録して管理することで、異常の早期発見が容易になります。
チッピング発生の原因と対策まとめ
工具のチッピングは、加工精度の低下や工具寿命の短縮など多くの課題を引き起こします。
主な原因には高い切削速度、不適切な切削条件、工具の材質、工具の設置不良、冷却不足などが挙げられます。
これらの原因に対して、適切な切削条件の設定、高品質な工具の選定、正確な工具の設置、十分な冷却、定期的なメンテナンスなどの対策を講じることで、チッピングの発生を抑え、効率的な切削加工を実現することが可能です。