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PPR「波形モニタ」で分かること

TECHNICAL INFO
  • ピック&プレース
  • システム

はじめに

PPRは専用PCアプリ「T-ACT」(ティーアクトと呼んでいます)を使用して設定や試運転、モニタリングを実施することが出来ます。こちらは無償ツールとなっており、弊社HPからダウンロード出来る物です。
この「T-ACT」で出来る「波形モニタ」の機能で、どんなことが分かるのか?実際に使用する前にはなかなかイメージして頂くことが難しいようです。
そこで今回は、実際にPPRを動作させて取得した波形から分かることの一例として、「位置制御」でのピック動作、「接触停止」を使用したピック動作の内容をご紹介したいと思います。

PPRでの「シーケンス動作」について

波形データの内容をご紹介する前に、PPRの「シーケンス動作」についてご説明する必要があると思います。
PPRには「Z軸」「θ軸」「力センサ」「圧力センサ」「流量センサ」「エア駆動(吸着弁・解放弁操作)」「Z軸エンコーダ(Z軸位置の判定)」といった7つの機能的なモジュールがあります。
「T-ACT」では、これらのモジュールを連携させた動作をプログラムすることが出来ます。例えば「新規シーケンス作成」機能で選択できるテンプレートの「ピック動作」では以下の様な動作を実施しています。
1.Z軸ステップ1:高速でワークの手前まで下降
2.Z軸ステップ2:「接触停止」機能でワークに接触
3.Z軸ステップ3:「押付力制御」機能でワークを押し付け
4.エア駆動ステップ1:「負圧」に切り替えて吸着弁を開ける
5.圧力センサステップ1:目標のしきい値まで圧力が下がったことを判定
6.Z軸ステップ4:待機位置まで上昇
7.Z軸エンコーダステップ1:上昇中に目標のしきい値を通過したことを判定
8.θ軸ステップ1:上昇中に回転動作を実施

以上の動作について、各々詳細なパラメータを設定することが出来ます。

それではここで、位置制御でのピック&プレースと、「接触停止」を使用したピック&プレースの動画をご紹介しておきます。

位置制御でのピック動作波形

それでは位置制御でのピック動作波形を見てみましょう。
今回の動作は以下の様になっています。

1.Z軸ステップ1:高速でワークの位置まで下降
2.エア駆動ステップ1:「負圧」に切り替えて吸着弁を開ける
3.圧力センサステップ1:目標のしきい値まで圧力が下がったことを判定
4.Z軸ステップ4:待機位置まで上昇

こちらの波形では、ピック動作のタクトタイム、Z軸の動作時間、吸着弁を開いてから吸着判定までの時間、下降端での力センサ値(ワークに当たった場合の衝撃力)などが確認できます。
後述の接触停止と比較すると、タクトが短くすることが出来ます。ワークダメージよりもタクトタイムを優先されるお客様には、位置制御を使用される方が良いでしょう。

  • こちらの波形では、力センサで0.4Nの負荷を検出していますが、実際にはワークに接触していない位置であれば0Nにもなりますし、押し込んでしまう量によっては数Nとなる可能性もあります。

「接触停止」を使用したピック動作波形

今度はPPRの「接触停止」機能を使用した時のピック動作波形を見てみましょう。
動作は以下の様になっています。

1.Z軸ステップ1:高速でワークの手前まで下降
2.Z軸ステップ2:「接触停止」機能でワークに接触
3.Z軸ステップ3:「押付力制御」機能でワークを押し付け
4.エア駆動ステップ1:「負圧」に切り替えて吸着弁を開ける
5.圧力センサステップ1:目標のしきい値まで圧力が下がったことを判定
6.Z軸ステップ4:待機位置まで上昇

こちらの波形では、ピック動作のタクトタイム、Z軸の動作時間、吸着弁を開いてから吸着判定までの時間、接触停止時の挙動、押付力制御により維持されている力、などが確認できます。
位置制御時の波形と比較すると、接触停止と押付力制御の動作が追加され、タクトタイムは遅くなるものの、ワークへの衝撃が0.2Nに抑えられていることが分かります。

波形確認出来ると実現出来ること

これらの波形データを確認すると、どんなことが出来るでしょうか。
掲載した二つの波形を見比べると、タクトタイムや衝撃力の比較が出来そうです。
もし、シーケンスが途中で止まってしまった場合には、NG時の波形が取得できますので、「シーケンスはどこまで進んでいたか」「ワークに接触していたのか」「圧力は下がっていたか」等の情報を得ることが出来、工程改善に役立てることが出来ます。
また、シーケンスの中で「どの部分を短縮できるか」というヒントを得て、よりタクトタイムを縮めるために利用することも可能です。

今回の記事では、「T-ACTによる波形解析によって何が分かるか」という視点でご紹介しました。実際にお使い頂くに当たって、あるいは運用中におきましては、「T-ACTの使い方を教えてほしい」「タクトタイム短縮に向けてヒントがほしい」「エラー時の波形を解析して原因追求したい」というリクエストがありましたら、ぜひお気軽にご相談頂ければと考えております。