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リニアガイド(リニアモーションガイド)について、初めての方から選定・購入をお考えの方に役立つ情報を解説しています。

リニアガイド(リニアモーションガイド)とは?

回転ベアリングとの違いと名称

リニアガイドは回転運動で実現していたベアリングを応用し、重いものを軽く、まっすぐに動かす働きをする機械要素部品です。ISOでは「Recirculating linear ball bearing」 、​JISでは「玉循環リニア軸受」、工作機械工業会では「リニアガイドウェイ」と呼んでいます。THK株式会社ではLMガイド(Linear Motion Guide)と呼んでいます。 その他直動ボールガイドなど複数の呼び名があり、回転運動用のベアリングに対して、直線運動用のベアリングという意味でリニアベアリングと呼ばれることもあります。

リニアガイドの構造

リニアガイドは移動部分である「キャリッジ」とキャリッジの動きを支える「レール」、「ボール」の大きく三つの部分から構成されます。 これらにボールを循環させる機構を取りつけることによって直線運動を行います。

THKのLMガイドではそれぞれLMブロック、LMレールと呼んでいます。

リニアガイドの歴史

リニアガイドの成り立ちは1944年にアメリカで最初に開発された直動転がり案内であるボールブッシュまで遡ります。 ボールブッシュは、円筒状の軸と円管状のナット間に転動体として玉が組み込まれており、ナットの移動にともない玉が循環する構造にすることで、無限直線運動を実現しています。 ボールは軸およびナットと点接触であり接触面積が小さいことから負荷容量が小さいという課題がありました。 また、ナットに軸まわりのモーメント(回転力)が作用すると回転してしまうことから、進行方向以外の拘束が必要であるため2軸以上での使用が前提になり、コンパクトな機械設計の妨げになっていました。

これらの課題を克服するため、軸とナットに円弧状の軌道面が加工されたボールスプラインが開発されました。 これにより玉と軌道面は点接触から面接触になり、ボールブッシュに比べて大きな負荷を受けることができるようになりました。 また、軸とナットの軌道面間に玉が介在することで軸周りのナット回転が拘束され、1軸での直動案内やトルク伝達が可能になりました。

初期のボールスプラインには、ガタが生じてしまうという課題がありましたが、この課題を解決に導いたのが1971年に寺町博(THK株式会社の創業者)が開発したアンギュラ形ボールスプラインです。 アンギュラ形ボールスプラインにはナットと軸の軌道面にそれぞれ突起が設けられ角度を持たせて玉を挟み込む構造になっており、 従来のボールスプラインと比較してガタを解消することができました。

ボールスプラインはボールブッシュと比較して負荷容量が飛躍的に増大しガタなく滑らかな案内を実現しましたが、 軸の両端を固定して使用するため、実用ではボールスプラインの本来の負荷容量まで支持できないケースもあり用途が限定されていました。 そこで寺町博は1972年に、ボールスプラインのナットをカットし、その空いたスペースを利用して軸に台座を取り付けた直動ボールガイドを開発しました。世界初の直動ボールガイド(リニアガイド)であるLSR形は台座を取り付けることで、いままでボールスプラインでは両端固定で宙に浮いていた軸が、レールとして取り付け面と一体になり、たわみによる案内精度の低下が解消されました。 また、ナットにはハウジングが固定され、それらを1つのブロックとすることでレール同様に上方からの取り付けが可能になり組み付け等の取扱いが容易になりました。 この姿が現在のリニアガイドの基本になっています。​

その後、THKでは1973年にスプライン軸と取付台を一体化(LMレール)させたNSR-BC形を開発。引き続き改良を重ね、スプラインナットとハウジングを一体化(LMブロック)させたNSR-BA形を1975年開発しました。

  • 1944年 ボールブッシュ(アメリカ)
  • ​1971年 アンギュラ形ボールスプライン(寺町博(THK株式会社の創業者) 
  • 1972年 LSR形開発(THK株式会社)世界初のLMガイド(リニアガイド)(Linear Motion Guide) 
  • 1973年 NSR-BC形開発(THK株式会社)レール一体
  • 1975年 NSR-BA形開発(THK株式会社)ブロック一体

リニアガイドの用途​

リニアガイドは機械が正確で効率的に稼働するために荷重を受けながらでも直線運動を軽く滑らかに案内する役割を持ち、工作機械、半導体製造装置などあらゆる直線運動部に欠かせない部品となっています。 近年は、鉄道車両やバス、自動ドア、免震装置など身近な分野でも利用されるようになっています。 ​

産業分野での用途​

工作機械

工作機械の加工精度を左右する案内部にTHK直動システムが貢献しています。

半導体・液晶製造装置

パソコン、携帯電話、薄型テレビ、先端技術にもTHK製品はお応えしています。

産業用ロボット

ロボットの関節部において高精度・高剛性・高速性を実現しています。

直線案内機構(直動システム)

直線案内機構(直動システム)とは物をまっすぐ正確に移動させる、または位置決めするための機構です。特に物をまっすぐに正確に移動させるため、ころがり技術を活用した機械要素部品で構成されるシステムを呼びます。主な機能として「案内部」と「駆動部」に分れられます。​ 「案内部」の機械要素部品のひとつとしてリニアガイドがあります。

その他に「ボールスプライン」、「リニアブッシュ」、「スライドレール」、「クロスローラーガイド」など多岐にわたります。

また「駆動部」にはモータなどの回転力を直線推力に変換する機械要素部品「ボールねじ」や「ベルト」、「油圧」、「空圧」、リニアモータなどが用いられ、これらを組み合わせて用途に合わせた精度や速度、荷重を満たす設計を行います。​ 特に工作機械で発達し、その他産業用機械や身の回りの直線に動く部分に応用されています。​ 「直動システム」はTHK株式会社の登録商標です。THK株式会社では直動システムを応用し、直線に限らず円弧や直線と曲線を組み合わせた機械要素部品もラインナップしています。​ ​

直線案内機構(直動システム)

リニアガイドの特長

すきまがなく軽く動く
リニアガイドはころがり案内のため、すべり案内に比べて、すきまがなく軽く動きます。

無限直線運動が可能
ころがり案内の中でもクロスローラーガイド/ボールガイドは有限ストロークですが、リニアガイドはボールが無限循環するため、レールの長さを長くすれば長くするだけストロークを伸ばすことができます。

許容荷重が大きい
リニアガイドは転動面をR溝形状とすることで、ボールと転動面は「面接触」となります。リニアブッシュなどの「点接触」タイプの案内部品に比べ、許容荷重は約13倍になり、リニアガイドはリニアブッシュなどの「点接触」の直線案内部品に比べ、同程度の許容荷重でもよりコンパクトに設計することが可能です。

THKのLMガイドテクノロジー

永く培われ、広く使われる、THKのコアテクノロジー

1972年、「LMガイド」をはじめとする直動システムの開発以来、永年にわたり培われてきたTHKの技術力。そのコアテクノロジーは今も新しいデファクトスタンダードを生み出し、より広いニーズを満たし続けています。これは、回転用ベアリングの中でも最も使いやすく経済性の高い「深溝形ボールベアリング」の回転理論を直線運動部に展開したシステムです。

転動体にボールを用い、転動面にボール径に近似したR形状の溝を設けることで、転動面とボールとの接触を「点接触」から「面接触」に近づけました。その結果、従来のリニアモーション・ベアリングに比べ、ボールの直径が同じであれば許容荷重は約13倍に増加。寿命は2,200倍にも達しています。(図の許容荷重PはP1の13倍)

THKのコアテクノロジー

LMガイドのバリエーション

LMガイドは様々な使用用途に対応するため​、多数のバリエーションをご用意しています。ラジアル荷重形・4方向等荷重形という荷重の受け方による分類や、幅広タイプ・ミニチュアタイプといった形状での分類などがあります。​ また、ボールリテーナというTHK独自のシステムを導入したLMガイドは装置の性能向上に寄与します。​

LMガイドのバリエーション
ボールリテーナ入りLMガイド

また、直動案内機構から発展して、クロスガイド、曲線ガイドなど、直線以外の動きを可能にする製品から、LMガイドが2つ分離したセパレートタイプ、ギアと一体化したタイプの製品もラインナップしています。​

LMガイドのオプション

LMブロックの破損要因の一つに異物の混入があります。THKでは粉塵・切削屑・スパッタなど様々な状況に対応したオプションをご用意しています。ブロック裏面からの異物混入対策もあります。また、もう一つの要因である潤滑不足による破損への対応として、​ 潤滑メンテナンス間隔を延長できる潤滑装置もご用意しています。一部のLMガイドには初めからリニアエンコーダを組み込んだ製品もご用意しています。 ​

LMガイドのオプション
LMガイドのオプション
LMガイドのオプション

THKのLMガイドの生産体制について

国内4工場にてLMガイドを製造しており、 海外においても需要地生産が最適と考え世界各地でも生産を実現しています。

また、THKではカタログラインナップ品の製作だけでなく、特殊仕様の制作も行っています。カタログ製品ではご要求を満たせない場合にはご相談いただければ検討させていただきます。​

THKのLMガイドの生産体制

LMガイドの関連製品​

LMガイドは、単体では動くことができず何かしらの動力が必要になります。手で動かすことも可能ですが、基本的には機械の力を借りることになります。ボールねじなどの駆動部品と組み合わせることにより、対象物を軽く・滑らかに移動させることが可能になります。​ また、THKではLMガイド単体だけでなく、駆動源と組み合わせたアクチュエータの製造も行っています。

ユニットソリューション

THKではLMガイドといった機械部品の供給だけでなく、機械部品を組み合わせた装置(ユニット)の設計支援、組み立て、生産を請け負うことができます。 半導体業界、工作機械業界、自動車業界、医療業界、アミューズメント業界などの多岐にわたる業界に対して「物づくり」をしてきた実績で蓄えてきたノウハウで最善の提案をします。お客様にて装置やユニットの仕様や構想がまとまっていない場合でも、共同プランニング・仕様作成の補助もいたします。 ​

ユニットソリューション

IoTによる故障の予兆検知「OEE(設備総合効率)最大化プラットフォームOMNIedge」とは​

OEE(設備総合効率)最大化プラットフォームOMNIedge

THKがご提案する製造業様向けのIoTサービスです。 センサの選定から、アルゴリズムの確立、ネットワーク環境の構築まで、時間と費用が掛かっていたハードルを無くして、 現場ですぐに始めることができます。​ 現在、LMガイドだけでなくボールねじ・アクチュエータまで対応部品拡大しています。​

選定や設計に便利なサービス

THKオンラインサービスのご紹介メインビジュアル THKオンラインサービスのご紹介メインビジュアル

THKオンラインサービスは無料でご利用いただける会員限定のサービスです。

お客様のトータルリードタイムの削減や業務効率化をサポートする豊富なコンテンツをご提供することで、ものづくりに関する課題解決に貢献いたします。
最新情報の配信サービスや製品をブックマークする機能、複数の寸法図・寸法表を比較する機能、簡単な条件入力で最適な製品をご提案するツールでお客様の生産活動をサポートいたします。また、製品の基礎知識から選定方法、メンテナンス方法まで幅広い技術的な情報をご提供しております。さらに、アップグレードサービスとしてお客様に合わせた個別情報等をご提供するサービスもございます。
(2023年11月27日より、「テクニカルサポートサイト」は新Webサイトに機能統合し「THKオンラインサービス」となりました。)

※会員種別(本会員/ゲスト会員)がございます。詳細はこちら

LMガイド(リニアガイド)の製品情報

LMガイド(リニアガイド)をはじめとするTHK製品の寸法図・寸法表や詳細な仕様等を閲覧可能です。「図表の切り替え」から形番の切替ができるため、閲覧したい寸法図・寸法表をすぐに確認できます。
また、寸法表内の特定の行を色づける機能で複数の形番の比較も簡単です。

LMガイド(リニアガイド)の選定や設計に役立つツール

LMガイド(リニアガイド)をはじめ、THK製品の選定や設計に役立つツールをご提供しています。

※会員種別(本会員/ゲスト会員)がございます。詳細はこちら

Designer
(旧最適品選定ツール)

形番選定や寿命計算、CADデータの取得等を効率よく行っていただくためのオンラインツールです。装置設計のトータルリードタイムを削減いたします。

寿命計算

お使いいただく条件に応じた製品の寿命が計算できます。LMガイド、ボールねじ、電動アクチュエータと幅広いラインアップをご用意しています。計算結果の保存(10件)やPDFシートへの書き出し、結果を呼び出しての再計算も簡単です。また、寿命計算の結果からお客様に最適な形番もご提案いたします。

CAD

2D/3DのCADダウンロードがご利用いただけます。
dxf, step, iges, parasolid等多様なCADフォーマットに対応しています。(dxfはバージョン2004から対応)その他、jpeg, pngといった画像ファイルのダウンロードもできますので、資料等にご活用いただけます。

取付け方法とメンテナンス

取付け方法​

LMガイドの取付けは大きく分けて以下のステップで行います。 ​

  • LMレールの取付け
  • LMブロックの取付け​ ​ 

また、一番多く使用される2軸での利用の場合、2軸目(従動側)の設置にはいくつかの方法があります。 ​

  • ストレートエッヂによる方法
  • テーブルの走りによる方法
  • 基準側LMレールにならわす方法
  • 治具による方法 ​ ​ 

メンテナンス​

LMガイドの性能を正しく発揮するには潤滑が非常に重要です。
潤滑剤の特長はこちら

THKオンラインサービスではLMガイドをより長くお使いいただくために以下の技術資料をご準備しています。
技術情報:LMガイドの点検ポイント -長くお使い頂くために-
技術情報:LMガイド こんな時はご注意下さい -交換のサイン-​

グリースについて

LMガイドの潤滑剤を用途や目的に応じて使い分けることでLMガイドの性能を最大限に発揮できます。

大きく分けて潤滑には ​以下の2つがあります。

  • グリース潤滑
  • 油潤滑 ​ ​

それぞれに潤滑剤の特長があります。 ​ ​
直動システム用潤滑関連シリーズはこちら

潤滑関連製品グリースのSDS(Safety Data Sheet)をご希望の方は、THKオンラインサービスよりダウンロードができます。

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