ボールねじの精度

リード精度

ボールねじのリード精度は、JIS規格JIS B 1192(ISO 3408)に準じて精度管理されています。
精度等級C0~C5は直線性と方向性で、C7~C10は300mmに対する移動量誤差で規定されています。

実移動量

実際のボールねじを測定した移動量誤差です。

基準移動量

一般には呼び移動量と同じですが、使用目的に応じて意識的に呼び移動量を補正した値をとることができます。

基準移動量の目標値

ねじ軸の振れ防止にテンションをかけたり、外部荷重や温度による伸縮を考慮し、あらかじめ基準移動量を「マイナス」または「プラス」に製作することができます。このような場合には基準移動量の目標値をご指示ください。

代表移動量

実移動量の傾向を代表する直線で、実移動量を示す曲線から、最小二乗法により求めます。

代表移動量誤差(±表示)

代表移動量と基準移動量の差です。

変動

代表移動量に平行に引いた2本の直線ではさんだ実移動量の最大幅です。

変動/300

任意のねじ部長さ300mmの変動です。

変動/2π(よろめき)

ねじ軸の1回転内の変動です。

表1 リード精度(許容値)
単位:μm
注)ねじ部有効長さの単位:mm
精密ボールねじ
転造ボールねじ
精度等級 C0 C1 C2 C3 C5 C7 C8 C10
ねじ部有効長さ 代表移動量
誤差
変動 代表移動量
誤差
変動 代表移動量
誤差
変動 代表移動量
誤差
変動 代表移動量
誤差
変動 移動量
誤差
移動量
誤差
移動量
誤差
こえる 以下
- 100 3 3 3.5 5 5 7 8 8 18 18 ±50/300mm ±100/300mm ±210/300mm
100 200 3.5 3 4.5 5 7 7 10 8 20 18
200 315 4 3.5 6 5 8 7 12 8 23 18
315 400 5 3.5 7 5 9 7 13 10 25 20
400 500 6 4 8 5 10 7 15 10 27 20
500 630 6 4 9 6 11 8 16 12 30 23
630 800 7 5 10 7 13 9 18 13 35 25
800 1000 8 6 11 8 15 10 21 15 40 27
1000 1250 9 6 13 9 18 11 24 16 46 30
1250 1600 11 7 15 10 21 13 29 18 54 35
1600 2000 - - 18 11 25 15 35 21 65 40
2000 2500 - - 22 13 30 18 41 24 77 46
2500 3150 - - 26 15 36 21 50 29 93 54
3150 4000 - - 30 18 44 25 60 35 115 65
4000 5000 - - - - 52 30 72 41 140 77
5000 6300 - - - - 65 36 90 50 170 93
6300 8000 - - - - - - 110 60 210 115
8000 10000 - - - - - - - - 260 140
表2 ねじ部長さ300mmおよび1回転に対する変動(許容値)
単位:μm
精度等級 C0 C1 C2 C3 C5 C7 C8 C10
変動/300 3.5 5 7 8 18 - - -
変動/2π 3 4 5 6 8 - - -
表3 種類および等級
種類 等級 備考
位置決め用 0、1、3、5 ISOに対応
搬送用 0、1、3、5、7、10

例)基準移動量の目標値‒9μm/500mmとして製作したボールねじのリード測定をしたところ、下記のデータが得られました。

表4 移動量誤差測定データ
単位:mm
指令位置(A) 0 50 100 150
移動距離(B) 0 49.998 100.001 149.996
移動量誤差(A-B) 0 -0.002 +0.001 -0.004
指令位置(A) 200 250 300 350
移動距離(B) 199.995 249.993 299.989 349.985
移動量誤差(A-B) -0.005 -0.007 -0.011 -0.015
指令位置(A) 400 450 500
移動距離(B) 399.983 449.981 499.984
移動量誤差(A-B) -0.017 -0.019 -0.016

測定データをグラフに書くと図2になります。
位置決め誤差(A‒B)が実移動量、(A‒B)のグラフの傾向を代表する直線が代表移動量になります。
基準移動量と代表移動量の差が代表移動量誤差になります。

[測定結果]
代表移動量誤差:‒7μm
変動:8.8μm

取付部精度

ボールねじ取付部精度は、JIS規格JIS B 1192(ISO 3408)に基づき製作しています。

取付部精度規格

精密ボールねじの取付部精度規格を表5~表9に示します。

表5 ねじ軸の支持部軸線に対するねじ溝面の半径方向円周振れと、
部品取付部の半径方向円周振れ許容値
単位:μm
注)この項目の測定には、ねじ軸軸径の振れの影響が含まれるので、ねじ軸全長と支点と測定点の距離の比により、ねじ軸軸線の全振れから補正値を求め上表に加える必要があります。
ねじ軸外径(mm) 振れ(最大)
こえる 以下 C0 C1 C2 C3 C5 C7
- 8 3 5 7 8 10 14
8 12 4 5 7 8 11 14
12 20 4 6 8 9 12 14
20 32 5 7 9 10 13 20
32 50 6 8 10 12 15 20
50 80 7 9 11 13 17 20
80 100 - 10 12 15 20 30

例)形番:DIK2005-6RRGO+500LC5

注)ねじ軸支持部軸線に対するねじ部外径の半径方向の全振れの許容値は JIS B 1192(ISO 3408)をご参照ください。

表6 ねじ軸の支持部軸線に対する支持部端面の円周振れ許容値
単位:μm
ねじ軸外径(mm) 円周振れ許容値(最大)
こえる 以下 C0 C1 C2 C3 C5 C7
- 8 2 3 3 4 5 7
8 12 2 3 3 4 5 7
12 20 2 3 3 4 5 7
20 32 2 3 3 4 5 7
32 50 2 3 3 4 5 8
50 80 3 4 4 5 7 10
80 100 - 4 5 6 8 11
表7 ねじ軸の軸線に対するフランジ取付面の円周振れ許容値
単位:μm
ナット外径(mm) 円周振れ許容値(最大)
こえる 以下 C0 C1 C2 C3 C5 C7
- 20 5 6 7 8 10 14
20 32 5 6 7 8 10 14
32 50 6 7 8 8 11 18
50 80 7 8 9 10 13 18
80 125 7 9 10 12 15 20
125 160 8 10 11 13 17 20
160 200 - 11 12 14 18 25
表8 ねじ軸の軸線に対するナット外周面の半径方向円周振れ許容値
単位:μm
ナット外径(mm) 円周振れ許容値
こえる 以下 C0 C1 C2 C3 C5 C7
- 20 5 6 7 9 12 20
20 32 6 7 8 10 12 20
32 50 7 8 10 12 15 30
50 80 8 10 12 15 19 30
80 125 9 12 16 20 27 40
125 160 10 13 17 22 30 40
160 200 - 16 20 25 34 50
表9 ねじ軸の軸線に対するナット外周面(平面形取付面)の平行度許容値
単位:μm
取付基準長さ(mm) 平行度許容値
こえる 以下 C0 C1 C2 C3 C5 C7
- 50 5 6 7 8 10 17
50 100 7 8 9 10 13 17
100 200 - 10 11 13 17 30

取付部精度測定方法

ねじ軸の支持部軸線に対する部品取付部の半径方向円周振れ(上記 表5 参照))

ねじ軸の支持部をVブロックで支持します。部品取付部の外径に測定子をあて、ねじ軸を1回転させたときのダイヤルゲージの読みの最大差を測定値とします。

ねじ軸の支持部軸線に対するねじ溝面の半径方向円周振れ(上記 表5 参照)

ねじ軸の支持部をVブロックで支持します。ナットの外径に測定子をあて、ナットを回転させずにねじ軸を1回転させたときのダイヤルゲージの読みの最大差を測定値とします。

ねじ軸の支持部軸線に対する支持部端面の円周振れ(上記 表6 参照)

ねじ軸の支持部をVブロックで支持します。ねじ軸の支持部端面に測定子をあて、ねじ軸を1回転させたときのダイヤルゲージの読みの最大差を測定値とします。

ねじ軸の軸線に対するフランジ取付面の円周振れ(上記 表7 参照)

ねじ軸のねじ部外径をナットの近くにVブロックで支持します。ナットのフランジ端面に測定子をあて、ねじ軸とナットを同時に1回転させたときのダイヤルゲージの読みの最大差を測定値とします。

ねじ軸の軸線に対するナット外周面の半径方向円周振れ(上記 表8 参照)

ねじ軸のねじ部外径をナットの近くにVブロックで支持します。ナット外径に測定子をあて、ねじ軸を回転させないでナットを1回転させたときのダイヤルゲージの読みの最大差を測定値とします。

ねじ軸の軸線に対するナット外周面(平面形取付面)の平行度(上記 表9 参照)

ねじ軸のねじ部外径をナットの近くにVブロックで支持します。ナットの外周面(平面形取付面)に測定子をあて、ダイヤルゲージをねじ軸と平行に移動させたときのダイヤルゲージの読みの最大差を測定値とします。

ねじ軸支持部軸線に対するねじ部外径の半径方向の全振れ

ねじ軸の支持部をVブロックで支持します。ねじ軸外径に測定子をあて、ねじ軸を1回転させたときのダイヤルゲージの読みの最大差を軸方向数箇所で測定しその最大値を測定値とします。

  • 注) ねじ軸支持部軸線に対するねじ部外径の半径方向の全振れの許容値は JIS B 1192(ISO 3408)をご参照ください。

軸方向すきま

精密ボールねじの軸方向すきま

精密ボールねじの軸方向すきまを表10に示します。製作長さが表11をこえる場合は部分的にマイナスすきま(予圧状態)となる場合がありますのでご了承ください。 詳しくはボールリテーナ入り精密ボールねじをご参照ください。

表10 精密ボールねじの軸方向すきま
単位:mm
すきま記号 G0 GT G1 G2 G3
軸方向すきま 0以下 0〜0.005 0〜0.01 0〜0.02 0〜0.05
表11 精密ボールねじ各軸方向すきまの最大製作長さ/精度等級と最大製作長さ
単位:mm
※精度等級C7でGTすきま、G1すきまを製作する場合は部分的にマイナスすきまとなります。HBN-V/HBN-K(KA)/HBN形、SBKH形でG0すきまは対応不可となります。ミニチュアボールねじ(軸外径φ14mm以下)でG0すきまを製作する場合、精度等級C7は対応不可となります。軸端末完成品精密ボールねじは A15-142 の対応表を参照ください。
ねじ軸外径 GTすきま G1すきま G2すきま
C0 C1 C2・C3 C5 C0 C1 C2・C3 C5 C0 C1 C2 C3 C5 C7
4・6 80 80 80 100 80 80 80 100 80 80 80 80 100 120
8 230 250 250 200 230 250 250 250 230 250 250 250 300 300
10 250 250 250 200 250 250 250 250 250 250 250 250 300 300
12・13 440 500 500 400 440 500 500 500 440 500 630 680 600 500
14 500 500 500 400 500 500 500 500 530 620 700 700 600 500
15 500 500 500 400 500 500 500 500 570 670 700 700 600 500
16 500 500 500 400 500 500 500 500 620 700 700 700 600 500
18 720 800 800 700 720 800 800 700 720 840 1000 1000 1000 1000
20 800 800 800 700 800 800 800 700 820 950 1000 1000 1000 1000
25 800 800 800 700 800 800 800 700 1000 1000 1000 1000 1000 1000
28 900 900 900 800 1100 1100 1100 900 1300 1400 1400 1400 1200 1200
30・32 900 900 900 800 1100 1100 1100 900 1400 1400 1400 1400 1200 1200
36・40・45 1000 1000 1000 800 1300 1300 1300 1000 2000 2000 2000 2000 1500 1500
50・55・63・70 1200 1200 1200 1000 1600 1600 1600 1300 2000 2500 2500 2500 2000 2000
80・100 - - - - 1800 1800 1800 1500 2000 4000 4000 4000 3000 3000

転造ボールねじの軸方向すきま

転造ボールねじの軸方向すきまを表12に示します。

表12 転造ボールねじの軸方向すきま
単位:mm
ねじ軸外径 軸方向すきま(最大)
6~12 0.05
14〜28 0.1
30〜32 0.14
36〜45 0.17
50 0.2

予圧

ボールねじの軸方向すきまをゼロにし、さらに軸方向荷重に対しての変位量を小さくするために予圧を与えます。
高精度位置決めを行う場合には、予圧を与えるのが一般的です。

予圧を与えたボールねじの剛性

ボールねじに予圧を与えるとナット部の剛性が増加します。
図4に予圧を与えたボールねじと予圧を与えていないボールねじの弾性変位曲線を示します。

図5に、シングルナットタイプのボールねじを示します。

A、B側は、ナット中央の溝ピッチを変えることにより、位相を作り、予圧荷重(Fa0)を与えています。
予圧荷重によりA、B側はそれぞれδa0の弾性変位をします。この状態で外部から軸方向荷重(Fa)が作用すると、A、B側の変位量は、以下となります。

すなわちA、B側にかかっている荷重は、以下となります。

従って予圧を与えることにより、A側にかかる荷重はFa‒Fa´となり、予圧を与えていない場合にかかる荷重のFa´だけ負荷荷重が減るため、変位量が小さくなります。
この効果は、B側の予圧荷重による変位量(δa0)がゼロになるまであります。
では、どれくらい弾性変位量が小さくなるかといいますと、予圧を与えていないボールねじの軸方向荷重と弾性変位量の関係はδa∝Fa2/3で表されるので、図6より以下となります。

よって、予圧を与えたボールねじは、予圧荷重の約3倍の軸方向荷重(Ft)が外部から作用すると変位量はδa0となるので、予圧なしのボールねじの変位量2δa0に比べ1/2になります。以上のように、予圧の効果は予圧荷重の約3倍までありますので、適正予圧荷重は最大軸方向荷重の1/3となります。
ただし過大な予圧荷重は、寿命、発熱に悪影響を及ぼしますので、最大予圧荷重の目安は軸方向の基本動定格荷重(Ca)の10%としてください。

予圧トルク

ボールねじの予圧トルクはJIS規格JIS B 1192(ISO 3408)に準じて管理されています。

予圧動トルク

所定の予圧を与えたボールねじを外部から荷重の作用しない状態で、ねじ軸を連続して回転させるのに必要なトルクです。

実トルク

実際のボールねじについて測定した予圧動トルクです。

トルク変動値

目標として設定した予圧動トルクの変動値。基準トルクに対して正および負にとります。

トルク変動率

基準トルクに対するトルク変動値の割合です。

基準トルク

目標として設定した予圧動トルクです。

基準トルクの算出

予圧を与えたボールねじの基準トルクは(4)式により求められます。

例)ボールねじBIF4010‒10G0+1500LC3ねじ部長さ1300mm(軸径40mm、ボール中心径41.75mm、リード10mm)で予圧荷重3000Nを与えたときのボールねじの予圧トルクは、以下の手順で算出します。

基準トルクの算出
トルク変動値の算出

よって、表13の基準トルクが600N・mmをこえ1000N・mm、ねじ部有効長さ4000mm以下の≦40、精度C3になりますので、トルク変動率は±30%となります。
以上よりトルク変動値は以下となります。
865×(1±0.3) = 606 N・mm~1125 N・mm

結果
基準トルク 865 N・mm
トルク変動値 606 N・mm~1125 N・mm
表13 トルク変動率の許容域
基準トルク
N・mm
ねじ部有効長さ
4000mm以下 4000mmをこえ
10000mm以下
-
精度等級 精度等級 精度等級
をこえ 以下 C0 C1 C3 C5 C7 C0 C1 C3 C5 C7 C3 C5 C7
200 400 ±30% ±35% ±40% ±50% - ±40% ±40% ±50% ±60% - - - -
400 600 ±25% ±30% ±35% ±40% - ±35% ±35% ±40% ±45% - - - -
600 1000 ±20% ±25% ±30% ±35% ±40% ±30% ±30% ±35% ±40% ±45% ±40% ±45% ±50%
1000 2500 ±15% ±20% ±25% ±30% ±35% ±25% ±25% ±30% ±35% ±40% ±35% ±40% ±45%
2500 6300 ±10% ±15% ±20% ±25% ±30% ±20% ±20% ±25% ±30% ±35% ±30% ±35% ±40%
6300 10000 - ±15% ±15% ±20% ±30% - - ±20% ±25% ±35% ±25% ±30% ±35%