ナットの選定

ナットの種類

ボールねじのナットは、ボールの循環方式によりリターンパイプ式、デフレクタ式、エンドキャップ式に分類されます。各循環方式の特長を下記に示します。
また、ボールねじは、循環方式だけでなく、予圧方式によっても分類されます。

ボールの循環方式による種類

リターンパイプ式
(SBN-V形(中型)、BIF-V形(中型)、BIF形、BNF-V形(中型)、BNF形、BNFN-V形(中型)、BNFN形、BNT形、BTK-V形)
リターンピース式
(SBN-V形(小型)、HBN形、BIF-V形(小型)、BNF-V形(小型)、BNFN-V形(小型)

最も一般的なナットで、ボールの循環にリターンパイプを使用します。リターンパイプによりボールはねじ軸よりすくい上げられ、リターンパイプ、リターンピースの中を通りもとの位置に戻り無限運動します。

デフレクタ式
(DK形、DKN形、DIK形、JPF形、DIR形、MDK形)

最もコンパクトなナットです。デフレクタによりボールは進行方向を変えられ、ねじ軸外周面を乗りこえもとの位置に戻り無限運動します。

エンドキャップ式:大リードナット
(SBK形、SBKH形、WHF形、BLK形、WGF形、BLW形、WTF形、CNF形、BLR形)

最も高速送りに適したナットです。エンドキャップによりボールはねじ軸よりすくい上げられ、ナットの貫通穴を通りもとの位置に戻り無限運動します。

予圧方法による種類

定位置予圧方式
ダブルナット方式(SDAN-V形、BNFN-V形、BNFN形、DKN形、BLW形)

2個のナットの間に入れる間座で予圧を与える方式です。

オフセット予圧方式(SBK形、SBN-V形、BIF-V形、BIF形、DIK形、DIR形)

ダブルナット方式に比べコンパクトで、間座を使わずナットの溝ピッチを変えることにより予圧を与える方式です。

定圧予圧方式(JPF形)

ナットのほぼ中央位置にバネ構造を設け、ナットの中央での溝ピッチを変えることにより予圧を与える方式です。

シンプルナット オフセット予圧タイプの構造と特長

シンプルナットは1個のボールねじナットの中央で左右のねじに位相を与え、軸方向すきまをゼロ以下(予圧状態)にしたオフセット予圧タイプです。
従来のダブルナットタイプ(2個のナット間に間座を入れる方式)に比べコンパクトでスムーズな動作が得られます。

シンプルナットとダブルナットの比較

シンプルナット 従来形ダブルナット
予圧構造
回転性能

シンプルナットの予圧調整は、ボール径で調整するオフセット予圧タイプのため、ボールねじの性能上最も重要な接触角のバラツキがなく、高剛性で円滑な回転性能が得られ、高いよろめき精度が得られます。

ダブルナットは、間座の平面度やボールねじナットの直角度によりボールねじナットが傾き接触角のバラツキが生じるので、回転性能に悪影響を及ぼし、よろめき精度が悪くなります。

寸法

シンプルナットは、間座を必要としない予圧構造なので、ボールねじナット全長が短くでき軽量・コンパクト化が可能となります。

シンプルナット オフセット予圧タイプとオーバーサイズボール予圧タイプとの比較

シンプルナット DIK形 従来形オーバーサイズボール予圧ナット BNF形
予圧構造
精度寿命

シンプルナットDIK形は1個のボールねじナットでダブルナットと同様の予圧構造となっており、差動すべり、スピン現象による回転トルクの増大および発熱も少なく、長期間の精度維持が可能です。

オーバーサイズボール予圧ナットは、ボールを4点接触させて予圧を与えるので差動すべり、スピン現象による回転トルクは増大し、磨耗・発熱の問題が生じ、短期間で精度が低下します。