事業戦略

産業機器統括本部長 寺町 崇史

事業紹介

産業機器事業の主要製品は、高精度な位置決めを実現するLMガイドやボールねじ、ボールスプライン等の直動製品およびクロスローラーリングという回転部品です。さらに、機械要素部品を複合化したアクチュエータやモジュール製品も手掛けています。これらは半導体関連製造装置や工作機械、産業用ロボット、3Dプリンタ、自動倉庫、手術用ロボット、新幹線、航空機、太陽光発電装置、風力発電装置等、幅広い機械装置に用いられています。また、事業体制として、日本、欧米、韓国、中国、ベトナム、インドに生産拠点を持ち、グローバルで販売サポート体制を整えています。今後も、AI・ロボット等、デジタルテクノロジーの進展や主要国の労働力不足に伴い、あらゆる産業での自動化・省エネ化のニーズが見込まれ、当社主要製品の需要拡大が期待されています。また、OEE(設備総合効率)最大化プラットフォーム「 OMNI edge」の展開や、テープレスAGV 「SIGNAS」等、サービスロボットの販売も開始しています。従来の機械要素部品ビジネスに、FAソリューションビジネスを加えることで、マシンビルダーからマシンユーザーまで幅広いお客様の生産活動に貢献できる体制を目指しています。

2023年度を振り返って

2026年度を最終年度とする経営目標においては、半導体関連の需要の拡大、自動化・ロボット化の進展、EV等の環境関連の投資の拡大を背景に、創業以来培ってきた機械要素部品技術はもとより、AI・IoT、ロボット技術を駆使し、成長分野の下支えを担う役割をより一層固め、売上収益3,650億円、営業利益920億円の達成を目指しています。
2023年度は半導体・ロボット等、全般的に需要が低位に推移するなか、前半は高水準の受注残を売上収益へとつなげましたが、後半に入っても需要は回復せず、売上収益2,175億円(前期比22.9%減)、営業利益222億円(前期比56.6%減)と減収減益になりました。利益面では、継続的な変動費や固定費の原価改善ならびに為替によるプラス影響もありましたが、売上収益の減少に伴う数量効果のマイナス影響が大きく減益となりました。今後も設備投資需要の拡大と減少の波は短期的に繰り返されることに加え、ブロック経済化の進展や労働力不足等、経営環境の不透明さが増していくことを想定していますが、これに対して産業機器事業ではグローカル対応(グローバルとローカルを組み合わせたもの)を合言葉にQCDSの強化に取り組んでいます。
まず、研究開発面では、半導体分野をはじめとした高精度・高剛性・コンパクト化に対応するため、ナノメートルオーダーの運動精度に対応可能な世界標準寸法サイズの8条列構造のLMガイドおよび半導体チップの生産能力向上に貢献するミニチュアLMガイドを公開しました。また搬送や物流工程の自動化に対応するためホイールガイドやユーティリティースライドを市場投入しました。
製造面では、すべての工場で「自働化」「内製化」を推進し、着実な供給量の拡大とコスト競争力の強化を進めました。 販売面では、ASEANで3番目となる販売拠点をベトナムに立ち上げ、今後の同地域の需要増が見込まれるなか、顧客対応力を高めました。また、設計・製造拠点をグローバルで展開するお客様には、よりきめ細やかな対応が出来るように社内体制を見直しました。このように機械要素部品ビジネスでは、成長市場への新製品投入ならびに需要変動への供給対応力を強化し、日本市場のみならず、海外市場のシェアアップを果たせる体制を強化しました。さらに、多様なお客様との接点拡大を目指して、IoTサービスやサービスロボットの展開に力を入れました。「 OMNI edge」においては製造現場の人財スキルデータを一元管理・可視化し、スキルマネジメントを劇的に効率化する「スキル管理AIソリューション」を第4弾として市場投入しました。また、マテハンの自動化に貢献する新製品として「SIGNAS」の牽引重量1トンタイプのラインナップ追加ならびに次世代リニア搬送システムを公開しました。これらはマシンユーザーへの拡販に重点を置いています。お客様の多様化に加えて、顧客層を複層化することで、これまでの機械要素部品ビジネス以上に市場動向の把握ならびに景気変動による収益影響の軽減が期待できるため、長期的な事業基盤の強化につながります。

今後の事業展開

当社が開発したLMガイドの“ころがり”運動は従来の“すべり”運動に比べて摩擦抵抗を大幅に低減させる技術で、創業以来その技術を磨いてきました。今後もお客様が使用される機械設備の省エネ化につながる研究開発を推進し、製品の性能向上を図っていきます。また、生産拠点では製造工程内のエネルギー消費量の削減はもとより、再生可能エネルギーの利活用によるCO2削減に努めます。2023年度においては山形、THK新潟、THK遼寧、THKリズムタイの4生産拠点で太陽光パネルの設置を行いました。
機械要素部品ビジネスにおいては成長市場に求められる製品の投入と供給力の向上、コスト競争力を強化し、収益の拡大を図るとともに、宇宙関連等、新たな領域での用途開発に注力していきます。そして、FAソリューションビジネスにおいては、お客様のDX、GXに貢献しながら事業成長を目指していきます。さらに、機械要素部品ビジネスとFAソリューションビジネスのシナジー効果により当社独自のエコシステムを構築していきます。
産業機器事業では、社員一人ひとりが躍動しながら、グローバル展開、新規分野への展開、ビジネススタイルの変革を深耕し、世界中のマシンビルダーとマシンユーザー双方から信頼される製品とサービスの提供を持続的に行う体制を構築して、ものづくりサービス業への転換を達成していきます。そして、人と地球環境を大切にしながら、豊かな社会作りに貢献していきます。

産業機器事業の進化
産業機器事業の進化
輸送機器統括本部長 槇 信之

事業紹介・戦略

輸送機器統括本部は、大きく分けて以下3つの事業を展開しています。

  • L&S(リンケージアンドサスペンション)部品の開発、製造、販売事業
    車の基本性能「走る、曲がる、止まる」を支える主要製品で、サスペンションリンク、ボールジョイント、タイロッドエンド、スタビリンクと呼ばれる部品の独自設計を行っています。グループ企業のTHKリズムとTRA(THK RHYTHM AUTOMOTIVE)が日本、北米、欧州、中国、その他アジアの自動車メーカーやトラックメーカー等の主要顧客や部品メーカー向けに提案・製造・販売を行っています。なお、サスペンションリンク、ボールジョイント、タイロッドエンドの3製品は、重要保安部品に分類されています。当該部品が使用されている機構は、下図を参照ください。
  • AMC(Automotive Mechanical Components)事業
    自動ブレーキ、電動パーキングブレーキ用ボールねじやアクティブサスペンション等の開発、製造、販売事業で、自動運転技術にはなくてはならない要素部品です。
  • 電動アクチュエータ開発事業
    自動運転の普及に対応し、乗り心地や安全性能向上を目指し、自動車に直接組み込まれるモジュールの開発を行っています。
    全ての事業に共通して、市場の要求に応えるため、製品のバリエーションを揃え技術をさらに磨き上げていく所存です。
機構

2026年度経営目標達成に向けて(2023年度の振り返り、2024年度の取り組み)

輸送機器事業では2026年度を最終年度とする経営目標達成に向けて、既存製品の強化や次世代新製品の拡大等により自動車市場の成長率を上回る成長を成し遂げ、売上収益1,350億円、営業利益80億円の達成を目指しています。
2023年度はコロナ禍の収束と部品供給不足の緩和等により、自動車の生産と販売が回復するなか、価格転嫁活動や生産再編および人員削減等のコスト削減に加え、為替の円安効果等により輸送機器事業全体で売上収益は1,344億円、営業利益は16億円と単年度黒字化を実現しました。2024年度は当社主力顧客が今後増産を予定していることに伴い、当社の販売も増加が見込まれるとともに、利益成長に向けて、生産再編やコスト削減等の収益性改善に向けた取り組みを進めていきます。

今後の取り組み - 持続可能な社会の実現に向けて -

現在、自動車に要求されるのは「環境に優しい安全な乗り物」で、その実現に向けた製品の提案と安定供給が当社の役割と考えます。環境面では環境規制、燃費規制を遵守しつつ、EVシフトが進むなか、軽量化の観点からアルミ製品について北米では地場メーカーのみならず現地調達化ニーズのある日系メーカーにも採用が進んでおり、EVにマッチしたL&S部品の製品開発も進めています。安全面では当社のコア技術を応用した電動アクチュエータ等、付加価値の高い製品を提供することでより高い安全性を確保できると考えています。新製品として開発、生産、販売を始めた自動車用ボールねじは、自動ブレーキ、複合ブレーキ用としてCASEの自動運転技術には欠かせない要素部品となっており、現在では次世代サスペンション向けにも出荷を開始しました。さらに今後は、eアクスル、新たなブレーキシステム向けのボールねじ等、新規分野へ拡販を図っていきます。
また、「Japan Mobility Show 2023」では実走行可能なEVプロトタイプ「LSR-05」を世界で初めて展示しました。自動車業界におけるCASEが進展するなか、これからの自動車技術の在り方について当社の考え方を具現化したもので、当社の直動技術を応用した先進技術を搭載しています。
今後はお客様がまだ気づかれていない5年先、10年先のニーズを見据え、創造開発型企業として創業以来蓄積してきた知見や技術を生かし、将来の自動運転や高齢者による運転事故の減少といった社会ニーズに合致した新製品開発を行うことで、持続可能な社会作りの実現を目指します。

CASE:Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字を取ったもの

LSR-05
LSR-05
輸送機器事業の再編の進捗
輸送機器事業の再編の進捗